日本の敵 グローバリズムの正体

日本国を愛するお二人、渡部昇一さんと馬渕睦夫さんの対談本です。

日本の敵 グローバリズムの正体

 渡部昇一さんと馬渕睦夫さんの対談本「日本の敵 グローバリズムの正体」です。日本を取り巻く国際情勢について歴史的な出来事も踏まえて解説していて、とても参考になる本だと思いました。

  グローバリズムの正体を論じる以上、ユダヤ人に関する内容も少なくないところですが、新たなことも知ることができました。 私は、ユダヤ人は第二次大戦頃まで主にヨーロッパやロシアを中心に迫害されていた民族だというイメージを持っていました。 一方で当時の日本政府がユダヤ人をどのように捉えていたのかは知りませんでした。

  「杉原千畝の命のビザ」は名前くらいしか知りませんが、その映画などの宣伝に「日本政府の指示に反してビザを発給し、ユダヤ人の命を救った。」という主旨のことがあり、そうなのかなと思っていた程度です。
 しかし、両氏はそうではないことを解説しています。日本政府は多くの国がユダヤ人を迫害する中で「八紘一宇の精神から、特定の民族を差別することはできない。」というスタンスであったし、命のビザのことについては、「日本政府はビザの発給を認めていなかったわけではない」と解説しています。
  杉原さんは良い人だけれど、あの物語全体を通じて「日本政府はドイツと同じくユダヤ人を迫害しようとした悪人」だというイメージを作り上げるための意図が見えるというのです。
参考:あまりに不自然だった「杉原千畝ブーム」

 渡部昇一さん、馬渕睦夫さんの「日本の敵 グローバリズムの正体」を紹介するために、以下に目次や目を留めた項目をコピペさせていただきます。
 興味が湧いて、他も読んでみたいと思ったら、本書を手にしていただければと思います。

日本の敵 グローバリズムの正体 渡部昇一 馬渕睦夫

 


目次


 まえがき 渡部昇一

 第一章 歴史認識問題「安倍首相への提言」9
世界のメディアに向けて、総理記者会見を国難と化した慰安婦・南京問題/河野元官房長官の勲章を剥奪せよ/中曽根内閣の責任を追及する/東京裁判を受け入れなかった日本人

 第二章 アメリカとの言論戦の戦い方 31
靖國問題でも対応を誤った外務省/アメリカ発「民族絶滅」作戦の被害者・日本人/言論戦の本当の恐ろしさ/海外発信メディアを「持たせてもらえない」理由/日本人洗脳工作の実態/言論戦を闘う気がない外交官

 第三章 日本を取り戻す「東條=マッカーサー史観」 57
日本の自衛戦争を認めたマッカーサー証言/アメリカ人の歴史観を問う/真実を発信することは世界のためになる

 第四章 アメリカはなぜ共産中国をつくったか 75
朝鮮戦争に勝とうとしなかった国連軍/一番儲かる戦争のやり方/日中戦争で暗躍したイギリスとアメリカ

 第五章 「ハイ・ファイナンス」が操る戦争と革命 93
ロシア革命は「ザ・ジューイッシュ・レボリューション」/ユダヤ系金融財閥に支配されたイギリス/金融資本はいかにして戦争を利用したか/アメリカと世界を変えた国際金融資本の支配/ロシア革命から日米戦争へ、判断を誤った日本人/なぜアメリカは「親中・反日」のように見えるのか
 第六章 アメリカの「国体」が変わった 119
ピューリタンとアメリカの国体の形成/権力の座から引きずり下ろされたWASP/アメリカの国体はどう変わったか/ホロコースト産業の隆盛/外交政策を決めるのは大統領や国務長官ではない

 第七章 世界はユダヤの望む方向に動く 141
グローバリズム対ナショナリズム/画一化される世界/反ユダヤ主義は絶滅するか/孤立主義と国際主義がせめぎあうアメリカ

 第八章 日本が生き残る道 157
あまりに不自然だった「杉原千畝ブーム」/日本人とユダヤ人のつながり/ナショナリズムのゆくえ/新たな局面を迎えた対ロシア外交

 第九章 エネルギー問題が日本の命運を決める 179
二十世紀日本の運命を決めた石油問題/日本を救う原子力発電/福島の事故処理をどうするか

 第十章 敗戦利得者との死闘 199
安倍総理の資質と説得力/トラスト(信なくば立たず)の国/中国、韓国との関係を再考する時期だ/朝日新聞とNHKが反目報道を繰り返す理由/一日も早く、日本の情報機関を立ち上げよう

 第十一章 「世界の師表たる」日本人の底力 227 憲法と国体の再生/民族文化の破壊は家族から/政治家の質の向上と参議院改革/日本「無力化」政策に抗して

 あとがきに代えて 馬渕睦
 


まえがき 渡部昇一

 去年、つまり平成25年の間に読んだ書物のなかで、もっとも印象深かったものの一つが馬渕さんの『国難の正体』であった。その本は戦後、通説のように思われていた「資本主義と共産主義は敵対思想だ」という見方を根底から揺るがすものであった。共産主義革命を押し進めようとしていた勢力と、グローバル化という究極の資本主義を推し進めようとしている勢力とが、同根であることは一般には信じ難いこととして受け取られるであろう。しかし根本的な共通点があるのである。
 共産主義者もグローバル推進者も「国境」という存在が嫌いなのだ。
 マルクスとエンゲルスの『共産党宣言』はすでに19世紀の中頃に「国境を越えた」労働者の団結を唱えた。列強各国においてナショナリズムの盛んな頃にであるが。こんな発想は「国境」を持っている人からは生まれにくいであろう。
 そして二十世紀の初め頃、第一次大戦の少し前にイギリスで「マルコーニ疑惑」が問題になった(無線電信網事業を受注したマルコーニ社の株式をロイド・ジョージ蔵相ら自由党政権閣僚がインサイダー取引した疑惑)。これはG・K・チェスタトンによればイギリスのジェントルマンによる最初の汚職事件と言われたものであった。そこから問題として浮上したのは「国境を越えて」活躍するハイ・ファイナンスと称せられる金融活動であった。
 そして第一次大戦中に、「国境を越えて」集った革命家たちによって、ロシア革命が成功した。
 第二次世界大戦は「ファシズムの枢軸国(日独伊)に対する民主主義連合国」の戦いであるとアメリカなどは宣伝した。資本主義国のアメリカ、イギリスと共産主義国のソ連が、共に民主主義国というのはおかしいのではないかと学生時代の私は思っていた。しかしよく考えるようになった近頃では――特に、この対談で言及したベロックの戦間期の本などを読んだ後では――ソ連もアメリカもグローバル化をめざすお国柄であったと知ったのである。
 ソ連は瓦解した。「国境」をなくした国家群がヨーロッパで単一通貨のユーロまで作った。ここはかつて最もナショナリズムが尊ばれた地域である。そして「国境のない人たち」が最もひどく迫害された地域であった。
 アメリカはますますグローバル化を主張している。現在の中国とアメリカは対立しているようであるが、共通の利益を求めている勢力が両国に通底しているのではないか、と思われることがよくある。
 こうした世界では、かつて最も高い価値を与えられていた美徳であるナショナリズムが最悪のものと見倣される場合がある。ナショナリズムは「国境」を前提としているからだ。アメリカが、同盟国日本の首相が国境意識をはっきり持ち、日本固有の神社に参拝することに「失望」したりするのもそれと関係があるであろう。
 振り返ってみると私の人生の最初の20年はナショナリズムが最高の美徳と考えられた時代であった。そして人生の黄昏の頃になったら、最悪のものという風潮になってきた。ナショナリズム(国家愛)は悪だが、ペイトリオティズム(愛国心)ならよいと言う。「国境」を意識しないで「国を愛する」ということは具体的にどういうことなのか。
 そんなことを考えていたら、馬渕さんの本が出版され、飛鳥新社から馬渕さんとの対談本の企画が提案された。もとより喜んでお引き受けした。馬渕さんからはいろいろ参考になる話をおうかがいして感謝しています。また同社の工藤博海氏にはうまくおまとめ下さったことに御礼申し上げます。
     平成26年2月1日
 


世界のメディアに向けて、総理記者会見を P10

 馬渕:最初に議論したいのは、歴史認識問題とアメリカです。慰安婦問題を批判し、靖國神社参拝に「失望している」と表明するアメリカの真意をどう見るかが、今後、安倍政権が生き残るために重要だと思うからです。
 第二次安倍晋三政権は、発足直後から、歴史認識をめぐる米国、韓国、中国からの国際的な批判にさらされてきました。2013年1月2日、ニューヨークタイムズが社説で、安倍首相の「歴史を歪曲する」「修正主義」は、「恥ずべき衝動的行為」で、地域の協力関係を脅かすとしたのを皮切りに、4月には安倍首相が国会答弁で、植民地支配と侵略を認めた1995年の村山富市首相(当時)の談話を「そのまま継承しているわけではない」「侵略の定義は国際的にも定まっていない」と発言すると、米国が非公式に懸念を伝えたとされ、ニューヨークタイムズ、ウォールストリートジャーナル、ワシントンポスト各紙の社説は「不必要な軍国主義」や「恥ずかしい発言」「偏った歴史認識」と叩きました。
 4月21日、靖國神社「春季例大祭」に麻生太郎副総理らが参拝し、4月28日に「主権回復の日」政府式典を行うと、今度は米議会調査局が報告書で、安倍首相は「強固なナショナリスト」であり、「帝国主義日本の侵略やアジアの犠牲を否定する歴史修正主義にくみしている」ために東アジア地域の国際関係を混乱させ、「米国の国益を害する恐れがある」と批判。さらに93年の河野洋平官房長官(当時、以下同)による「河野談話」の見直しを阻止するため、ヒラリー・クリントン前国務長官が「慰安婦」でなく「性奴隷」という用語を使うよう国務省高官に指示したとの報道も引用し、安倍政権が東アジアの不安定化要因であると決めつけました。
 中国と韓国が弄する反日的言辞はほぼ毎日のように報道されますし、特に韓国の日本叩きは、もはや常識では考えられないレベルになっています。渡部先生は、なぜそうなっているとお考えですか。

 渡部:安倍さんの歴史認識について、直接ご本人にお聞きしたことはありません。しかし、第一次安倍内閣終盤、2007年8月のインド訪問で、はっきり示されていると思います。日本軍とともにインド独立のためイギリスと戦ったチャンドラ・ボースの遺族や、東京裁判で被告人全員の無罪論を主張したパール判事の遺族をお訪ねになった。これで十分ではないでしょうか。
 アメリカの攻撃もあり、安倍さんはだいぶ譲歩しました。韓国や中国に対する態度も、柔軟になったようです。
 いわゆる慰安婦問題をここまで大きくしたのは、2007年4月、第一次安倍政権で訪米した時の外務省のミスです。渡米前日、我々数人が総理に呼ばれて食事をしました。その数力月前、米下院議員のマイク・ホンダらが、慰安婦問題で日本政府の謝罪要求決議案を下院に提出していたので、安倍さんに「アメリカ議会で慰安婦問題が持ち出されたらどうしますか」と心配して聞いたら、同席した外務官僚が「その話はブッシュ大統領が出さないと約束しています」と言う。そして「もしジャーナリストから質問が出たら、『二十世紀の前半には、諸外国でもいろいろな人権問題がありました』と受け流す予定です」と。  外務省の人がどこまで三権分立を意識しているかはわかりません。日本では事実上、行政と立法府は同じですから二権分立です。しかしアメリカは画然たる三権分立で、ブッシュ政権が言わなくても、議会は勝手に話を出します。ジャーナリズムも呼応して動く。
 記者からの質問に対し、ブッシュ大統領が「安倍首相も謝っていることだし、もういいじゃないか」という主旨の助け舟を出しました。好意でマスコミを抑えようとしてくれたのですが、安倍さんは「遺憾だ」と言っただけなのに、アメリカで謝ったことになってしまい、たいへんな傷を負ってしまった。韓国は事大主義の国ですから、もう錦の御旗をもらったかのように騒ぎました。思い上がったのです。ですからこの問題は、安倍さんがご自身で払拭するしかないと私は思っています。具体的には、一度ワシントンに行って会見を開く。アメリカや世界中の報道機関、テレビや新聞記者を集めて、30分でいいけれども、できれば2時間ほど余裕をとって、「首相自ら、あらゆる質問に答えます」と言えば、現職の総理大臣ですから、世界中が報道します。
 記者会見の準備には数力月、長くて半年もあれば十分です。あらゆる想定問答集をつくって、効果的な答え方を研究する。総理官邸に一部屋用意して、慰安婦問題を研究している学者を集め、徹底的に資料も揃えて、いざとなればアメリカや諸外国の戦時中の女性への性暴力問題も出せるぐらいに腹を括り、安倍さんが断固として発言する。そうしなければ日本の名誉は永久に回復されないでしょう。
 私のこのアイデアは、現実の言論戦の経験に基づくものです。戦後のジャーナリズムの中で剣が峰となった事件がありました。昭和48年(1973年)12月のサンケイ新聞事件です。自民党が日経新聞とサンケイ新聞に「はっきりさせてください。」という意見広告を出した。日本共産党が翌年の参議院選挙に向けて掲げた「民主連合政府綱領案」と党綱領との矛盾を、ゆがんだ福笑いのマンガとともに指摘した内容です。共産党は猛烈に反発し、名誉毀損と反論の無料掲載を求める仮処分を東京地裁に申請しましたが、却下されました。全国紙に全7段抜きの謝罪広告を出せ、仮処分が出ても謝罪しないなら、一日につき30万円の罰金を取るという内容です。日経新聞はすぐ謝罪しました。ところがサンケイ新聞は、当時、鹿内信隆さんが社長(後に会長)だったから、紙面に「正論」欄をつくり、徹底的に戦った。最高裁まで行き、ついに勝つと、それ以降、言論人が共産党から邪魔されることがなくなりました。ソ連も毛沢東もピンシャンしている時代ですから、共産党も羽振りが良くて、ちょっと脅すと言論界は皆、沈黙したのですが、これ以降は口を出さなくなりました。大した効果です。産経の人に聞くと、社内に法廷闘争対策室を特別に設けたという。それに習って、官邸内に慰安婦対策室と南京対策室を作り、日本を救えるかどうかの瀬戸際だという信念を持ってやればいい。首相である安倍さんには簡単なことでしょう。  


国難と化した慰安婦・南京問題 P14

 馬渕:重要なご提案だと思います。例えば昨年9月7日、ブエノスアイレスのIOC総会で安倍総理が、福島原発の事故処理について具体的な数字を出して説明した。あれでIOC委員のみならず、世界中の人々が安心しました。日本の放射能の基準が世界よりも厳しく、しかも「福島近海でのモニタリング数値は、最大でもWHO(世界保健機関)の飲料水の水質ガイドラインの500分の1だ」と具体的に反論したから、後は誰も、それ以上質問できなかった。

 渡部:一国の首相が、あれだけ堂々と、「アンダー・コントロール」の状態であり、7年 後の2020年もそうだと言明した。他の招致スピーチとは重みが全然違います。

 馬渕:私には、歴史認識をめぐる中国・韓国の反日政策や安倍攻撃にも、アメリカが糸を引いているように見えます。

 渡部:朴槿恵さんの動きを見れば、そうとしか思えないところがあります。アメリカの対日姿勢が変化した。中韓がアメリカを味方につけたことが大きい。

 馬渕:2013年5月8日、訪米中の韓国の朴大統領が米議会の上下両院合同会議で演説し「歴史問題に端を発した対立が一層深刻になっている」と日本を非難したことですね。近年の韓国や中国の日本への態度には、どう考えても問題があります。2011年12月、当時の李明博大統領と野田佳彦総理との首脳会談は、ほぼ慰安婦の話に終始しました。李大統領は突然、慰安婦こそ日韓関係悪化の元凶と言い出した。韓国の最高裁が8月30日、慰安婦が賠償請求を得られるよう韓国政府が行動しないのは憲法違反との判決を出したことに焦った面もあるでしょうが、それにしても竹島に上陸して、「韓国に来たいのであれば、独立運動家を回って跪いて謝るべきだ」と、天皇陛下を誹謗する発言までしたのは、幼稚なやり方と言わざるを得ません。
 竹島上陸当時、李大統領は任期の終わりを迎えていましたから、大統領辞任後、司直の手が伸びるのを避けようと、愛国の情を示したという報道もありました。しかし私は、いやしくも韓国のような中堅国の大統領が、突然あのように変化するのが、どうも考えにくい気がしてならないのです。

 渡部:私は、韓国政府のやり方は一丁前ではないと、初めから軽蔑しています。国際条約は、民間で言えば示談に相当する。示談で手をうったら、日本ではヤクザでもひっくり返しません。韓国は、日韓基本条約を覆すことをしょっちゅう言う。日本のヤクザ以下です。中国も韓国も、国家としてはその程度のモラルしかないので、相手にしてもしょうがない。
 慰安婦問題はわが国にとって“国難”なのです。20万人の朝鮮人の若い女子を、日本がセックス・スレイブにしたなどと言われるのを放っておけば、我々の子供や孫、さらにその孫の代まで歴史に残りますよ。
 韓国の言い分か完全におかしくなったのは、ハングルしか読めない世代が社会の中心になったからです。良識がなく、歴史の知識もない。

 馬渕:ですから度を越してしまう。過去にも反日運動は間歇的に起きていましたが、ダメージコントロール可能な範囲でした。

 渡部:「日本統治時代はそんなに悪くなかったよ」と当事者たちが言えば、大事にはならなかった。しかし、実体験としてそれを知る世代が死に絶えた。従軍慰安婦問題も女衒がいなくなったから出てきたのです。女衒がまだ生きていたら、問題にできません。

 馬渕:アメリカの国際人権報告書で、人身売買が横行する最悪の国の一つに挙げられ、いまだにセックスワーカーを世界中に輸出している韓国が、こともあろうに、その点で清潔な日本を攻撃している。それにアメリカが便乗しているのです。  


ロシア革命から日米戦争へ、判断を誤った日本人 P107

  馬渕:では、アメリカとイギリスの金融資本家は、何を狙っていたのでしょうか。 例えば日露戦争では、アメリカの国際銀行クーンー・ローブ商会の共同経営者であったヤコブ・シフというユダヤ人銀行家が、日本の戦時国債を買い上げてくれたおかけで戦費が調達できたことはよく知られています。戦争後、日本政府から勲章が贈られたほどでした。 しかし、負ける可能性が高かった日本の国債をなぜ購入してくれたのでしょう。シフたち国際銀行家には、ユダヤ人迫害を続ける帝政ロシアで革命を起こし、ロマノフ王朝を打倒するという目的があったと考えます。日本はその駒として選ばれた。実際、日露戦争後、ロシアの国内情勢は混乱の度を増し、革命へと突き進んでいく。

 渡部:日露戦争の時、高橋是清がロンドンヘ資金調達に行ったけれども、半分しかカネが集まらない。ところがある銀行家のパーティで、隣にヤコブ・シフが座っていて、事情を話したら「ロシアでは同胞かやられている、お前の国が戦っているなら、俺がその半分を引き受けよう」と。それでアメリカのユダヤ人社会が、カネを出すことにした。これは日本にとって幸運でした。良好な関係を、穏やかに続けるべきだったと思います。
 ところが、二・二六事件で是清が暗殺され、日本でユダヤ財閥と一番太いパイプを持っていた人物が殺されてしまう。これで、アメリカ政府に働きかけて日本への石油禁輸措置を止められるつてを失ってしまったことは痛かった。シフにとって、日本はユダヤ人を迫害したことがない国だと認識していたのは重要です。シナ進出のために、日本を多少邪魔だと思うことはあるけれども、敵視することはなかった。日本も、その点をもっと主張できたはずです。
 私が一家でイギリス・エディンバラに住んだ時、ユダヤ人の家主とお茶を飲んでいたら、「この前の戦争中に、日本人はユダヤ人の財産に指一本も触れなかったそうだな]と言う。これがユダヤ人の共通認識ですから、大いに利用しない手はないでしょう。 今では、そんなことを知らないユダヤ人も大勢いる。だから、今日の日本と安倍内閣に対する悪意を待った攻撃を止めるためにも、国際世論に対して正しい事実を発信しなければいけない。 特に不思議なのは。東京裁判で、日本がユダヤ人を守った事実を誰も主張しなかったことです。
 「オトポール事件」で満洲に二万人のユダヤ人を受け入れた時の関東軍参謀長が東條英機ですよ。1938年3月、ナチスの迫害を逃れてシベリア鉄道経由で満洲国境まで来た二万人のユダヤ難民は、ソ連が入国を認めないので、零下数十度の厳寒の中、ソ満国境のオトポール駅で野宿生活、今で言う難民キャンプのような厳しい状況に置かれていた。東條参謀総長の許可で満洲国通過ビザを発給し、ハルビンや上海へ移動する特別救援列車を、当時の満鉄総裁の松岡洋右が手配して、辛くも生き延びることができたのです。
 それなのに、彼の弁護にひとこともユダヤ人のことが出なかった。 オトポールでのユダヤ難民救済に対し、ドイツ政府は日本政府に抗議してきました。そこで1938年12月、近衛内閣の五相会議(内閲総理大臣・陸軍大臣・海軍大臣・大蔵大臣・外務大臣による国策決定会議)で、板垣征四郎陸相は、日本、満洲、中国大陸におけるユダヤ人政策(猶太人対策要綱)を決定しました。三国同盟を結んでいたドイツからの要請を断って、わが国は八紘一宇の精神だから、特定の民族を差別することはできないと、満洲や上海に逃げ込んだユダヤ人、敦賀湾に上陸したユダヤ人を助けたのです。当時、政府決定でユダヤ人を差別しないと定めた国はなかった。なぜこのことを日本は宣伝しなかったのか。弁護人も言わなかったため、板垣征四郎は東京裁判で絞首刑になります。

 馬渕:それを主張すれば、東京裁判は成り立たなかったでしょう。

 渡部:東京裁判をぶっ壊す度胸が必要でした。東京裁判はニュルンベルク裁判のコピーです。ニュルンベルク裁判は、ユダヤ人虐殺を裁くための裁判。それなのに、東京裁判はユダヤ人を助けた連中を裁いたわけですから、とんでもない。この問題は、全然古くなっていません。世界に発信し続けなければいけないと思っています。

 馬渕:重要なご指摘です。今、八紘一宇のお話がありました。例えば日清・日露戦争の結果、日本は韓国や台湾を植民地支配したと言われますが、事実は違います。日本は持ち出しまでして資本を投下し、収支は赤字でした。日本はなぜ、搾取が当たり前だった帝国主義と植民地の時代に、あのように両国を育て上げたのか。 関心を持って日本精神の源流を調べると、古事記の昔にまで遡ることができます。戦前によく知られた天壌無窮の神勅で、「豊葦原の瑞穂の國に、就きてしらせ」とある。先生もご承知の通り「しらせる」の意味は、単に鎮圧して支配するのではなく、その国に産業を興し、栄えさせ、国全体をまとめていくこと。その精神がずっと生きていたから、台湾を割譲され、韓国をやむを得ず併合した際に、「しらせ」よう、繁栄させなければならないと日本人は考えた。ですから欧米の植民地主義者のように、原住民をただ使役して搾取するようなことにしなかったのでしょう。

 渡部:植民地という言葉を使ってはいけません。植民地化を英語でコロナイゼーション(colonization)と言い、文明の劣ったところに行き収奪・搾取するという意味です。日韓併合はあくまでもアネクセーション(annexation 合邦)でした。合併先の生活レベルを上げようとした。例えばイングランドとスコットランドが合併した時に、当時のイギリス人がスコットランドを搾取しようとは思わなかったのと同じです。併合の翌年、1911年に出たブリタニカ百科事典第11版では、日韓併合にアネクセーションという言葉を使っています。当時のイギリスでは、日韓併合はアネクセーションであり、コロナイゼーションではなかったのです。

 馬渕:日本の左翼やほとんどの歴史教科書は、いまだに植民地化だと言っている。

 渡部:戦前はすべて、日韓「併合」、アネクセーションです。

 馬渕:悪名高い村山談話が、「過去の一時期、国策を誤り植民地支配した」と言ってしまいましたが、まったく誤った歴史認識です。

 渡部:西洋のことだけ勉強した連中が、そういう発想になるわけです。今おっしゃった「しらす」を、我々はもっとわかりやすく「八紘一宇」と言うことができる。あれは神武天皇即位の言葉で、「八紘(全世界)をおいて宇(家)となす またよろしからずや」。当時の日本列島には、いろいろな民族がいました。それを、皇室を中心にしたいわゆる大和民族が 征服していく。同じ屋根の下にいる、まつろわぬ者はこらしめるが、一緒に祀るならば共存できる。田舎の神社に行くと、古事記に出ていない名前の神々が並んでいます。大和民族が祀る神を祀りさえすれば、お前たちの神も祀っていいということなのです。

 馬渕:神々の共存が行われてきたわけですね。

 渡部:だから八百万の神々になる。その精神が脈々と生きていたからこそ、ユダヤ人を追害してくれというナチスドイツの要請を拒否する際に、板垣征四郎が八紘一宇という言葉を使った。この精神は今でも日本人に生きているはずです。

 馬渕:おっしゃる通り、私も今なお健在だと思いますので、それを今日の言葉に変えて、発信する。最初に議論した日本の従軍慰安婦とか南京大虐殺は、マイナスの評価をゼロにする話でしたが、それをプラスに転じるような発信も行う必要があるでしょう。

 渡部:ですから、日本のユダヤ人政策の理念と実績を、徹底的に宣伝しなければいけない。

 馬渕:ところが、日本人の多くにはそういう発想がない。ユダヤと実際は関わりがあったのに、関わりがないと思ってきた、世界でも稀な民族です。 反ユダヤ主義は八紘一宇の日本には存在しません。現代のユダヤ人はそのことを知りませんから、日本にも当然反ユダヤ主義があるはずだと誤解している。日本の反ユダヤ勢力を潰すには、ナショナリズム、民族主義を潰さなければならないと考えているのです。 戦前の歴史に関心を持って当時の文献を読んでも、ユダヤ人への言及はありません。当時、ユダヤ人の持つ力に注目した日本人が、ほとんどいなかったということです。特に政治家の問で関心が薄かったのは、致命的でした。 人種平等の精神でユダヤ人を受け入れた時、ユダヤ系金融が世界に隠然たる力を持っていることを、日本人はどれだけ国際政治の問題として認識していたでしょうか。恐らくここがポイントで、気づかなかったのです。先に述べた、蒋介石と宋一族のバックにサッスーン財閥や欧米金融資本がいたのを日本側が見抜いていれば、支那事変の対策も少しは違ったはずです。国民政府の反日工作に対して、もっと洗練された対応ができたでしょう。渡部先生がおっしゃる通り、ヤコブ・シフが助けてくれた本当の意味がわからなかった。高橋是清はわかっていたけれども、他にわかる人がいなかったから暗殺されてしまった。

 渡部:実感としてわからなかったんですね。

 馬渕:それが桂・ハリマン協定の破棄にもつながる。1905年、アメリカの鉄道王エドワードーハリマンが来日し、満洲における鉄道事業の共同経営を提案した。10月に桂太郎内閣は仮条約に調印しましたが、ポーツマス条約調印から帰ってきた小村寿太郎外相が強く反対し、仮条約を破棄させました。ハリマンはユダヤ系ではないとされますが、彼の背後にはアメリカのユダヤ系財閥が控えているわけですから、同類です。ハリマンは世界一周鉄道をつくる事業計画を持っていました。ユーラシア大陸を横断し、船を使ってアメリカまで帰ることができる構想に、満鉄は欠かせなかった。ユダヤ世界は同時に、ロシアで虐げられている同胞を救うため、シベリア鉄道から満鉄を通って逃がすという発想も秘めていたはずです。 しかし、そういう発想でビジネスとユダヤ世界を結びつけることができない日本政府と小村寿太郎は、拒否してしまいました。その理由はいろいろ言われています。せっかく日露戦争で苦労して得た戦利品ですから、ハリマンと分けるのは国民に申し訳ないということ。もう一つは、当時、小村寿太郎とモルガン財閥との問で話がついていて、鉄道の車両や線路の資材をモルガン商会から買うことになっていたという話がある。それが事実だとすると、小村の動機は複雑になってくるのですが。 いずれにしても、ハリマンが本当に何をしたかったのか、十分に理解できていなかったと言えます。

 渡部:ところが、明治維新の元勲たちは直感的に、ハリマンの提案をいい考えだと言いました。井上馨や伊藤博文、渋沢栄一らは、ハリマンと組んでもいいと判断した。だから仮条約まで進んだのです。日露戦争でカネを使い果たし、日本が軍事的に支配できているのは南満洲だけ。北にはロシアの大軍がいる。これらの条件を勘案すれば、満洲の鉄道経営を日本だけでやろうとするのは無理があり、アメリカを入れておいたほうがいいと考えた。 元勲たちは、まだ日本が弱体で国の体をなしていない頃に外国を見ていますから、日本帝国が成立して以降のことしか知らない人とは違う率直な見方ができた。あの時、仮条約を取り消したことが、決定的でした。アメリカを敵に回す羽目になったからです。

 馬渕:ハリマンを袖にしたことが、アメリカとの戦争につながるわけですね。1905年にポーツマス条約で日露戦争の和平仲介をしたアメリカは、わずか2年後の1907年には対日戦争計画「オレンジ・プラン」の策定を開始します。次の戦争相手を日本に定め、準備にとりかかった。

 渡部:ペリー艦隊を派遣して日本を開国させた頃から、アメリカの真の狙いはシナ進出にありました。独立以前から、アメリカはシナと密接な交流・交易を行っていた。東海岸から南大西洋、喜望峰を回ってインド洋、南ジナ海に進むルートでしたが、この要衝はすべてオランダやイギリスに押さえられています。しかしカリフォルニアとシナを結ぶ海域では、日本や太平洋島嶼の要路はまだ手つかずでした。そこでハワイや日本、小笠原や沖縄に進出しようとしたわけです。 東から西へ国土を拡張し、太平洋に到達したアメリカにとって、次に向かうべき目標はシナ大陸であり、日本はその中継地に過ぎません。西へ向かう白分たちの運命(マニフェスト・デスティニー)の次の目的地と感じていた中国に、日露戦争の結果、中継地のはずの日本が立ちはだかった。当時、アメリカは太平洋に艦隊を置いていませんから、強力な日本海軍かある限り、シナ大陸にはたどり着けず、マニフェスト・デスティニーも終了です。 だから、仮想敵国とされた。入りたいのに入れない鬱積した思いがあって、さらに日本がアメリカ中西部の大沃野にも比すべき満洲の大地を手に入れたとなれば、嫉妬で反日感情が燃え上がっても不思議ではありません。日本への憎悪と恐怖に基づいた排日運動が頻発、最終的には1924年に日本移民を禁止する連邦法「絶対的排日移民法」が成立し、日米 の対立は決定的になります。
  


あまりに不自然だった「杉原千畝ブーム」 P158

 馬渕:私かユダヤ問題に興味を待ったきっかけの一つは、イスラエル在勤中に「杉原千畝の命のビザ」旋風が突然、日本とイスラエルに吹き荒れたことでした。1940年の第二次大戦中に、リトアニアのカウナス日本領事代理だった杉原氏が、①日本政府の命令に背いて日本通過ビザを発給したおかけで、六千人のユダヤ人が生き延びることができたが、②杉原氏は訓令違反によって終戦直後、外務省を解雇されたという物語です。しかし調べてみると、二点とも、事実に反していることがわかりました。
 
当時の日本外務省の杉原宛訓令電報では、日本通過ビザ発給には最終目的地の入国ビザを持っていること、および最終地までの旅行中の生活を支え得る資金を保持していることの二点が条件でした。これらは通過ビザの性格上よくある条件で、日本政府がビザ発給を拒否したわけではありません。また、杉原氏は戦後占領下で外交事務が激減したのに伴う人員整理の一環で1947年に退職し、退職金もその後の年金も支払われていますからビザ発給を理由にした解雇ではなかったのです。杉原氏はカウナス領事館閉鎖の後も順調に昇進し、1944年には日本政府から勲章(勲五等瑞宝章)まで授与されています。
 ウソに基づく美談が作られ、マスコミがこぞって取り上げ、ドラマ化されたり、教科書の副読本になったりと、大フィーバーが起きました。杉原氏が、与えられた困難な状況の中で、日本政府の訓令に反しない範囲で人道的配慮を尽くしたことは賞賛されるべきですが、なぜ、日本政府がユダヤ人へのビザ発給を拒否したとの虚構が捏造されたのでしょうか。日本政府をどうしても反ユダヤの悪者に仕立て上げる筋書があったと勘繰られても仕方がありません。

 渡部:杉原千畝がサインしても、日本政府が許可しなければ外国人は入国できませんから、政府の基本政策に反していなかったのは明らかでしょう。

 馬渕:実務の観点からすれば、本国政府の訓令に反してビザを発給することは無意味です。なぜなら、本国の命令に反して不正に発給されたビザを持っていても、政府は必ず入国を拒否するからです。外国人の入国を認めるか否かは国家の独占的権限であり、領事館など出先機関の裁量に任されているのではありません。杉原氏もこれを当然知っており、ビザを発給できたのは、日本政府がOKしたからです。 しかし、真実を明らかにすると、杉原氏に与えられた「諸国民の中の正義の人」の顕彰に該当しなくなってしまう。この「正義の人」とは、自らの生命の危険を冒してユダヤ人の命を救った人に与えられる賞であり、イスラエルのホロコースナ記念館(ヤドバッシェム)から、杉原旋風の前の1985年にすでに贈られていたものです。

 渡部:美談の形成に杉原一族は関わったのでしょう。

 馬渕:結局、大きな流れに乗ってしまったのではないでしょうか。杉原夫人は、『六千人の命のビザ』(大正出版)という本を書いて、日本政府の命令に背いてビザを出したという虚構に便乗しました。

 渡部:けしからんですね。クビになったのを恨んだのでしょうか。

 馬渕:そのように言われますが、実際は、占領下で外交官が必要なくなってしまったために、大勢が人員整理されただけのことです。

 渡部:外交権がなくなり、大使館も閉鎖されたわけですから。

 馬渕:日本政府の命令に反して解雇されたのなら、勲章をもらうことなどあり得ません。 私か心配なのは、杉原氏をダシにして、日本政府は反ユダヤだったというウソが、今後も世界のメディアと日本のメディアに、繰り返し流される危険かあることです。 2013年9月、ミュージカル「SEMPO 日本のシンドラー杉原千畝物語」が新国立劇揚で再演されましたが、なぜこの特期なのか、気になります。TPPとのからみで、安倍政権にはやはり、陰に陽に大きな圧力がかかっているのではないか。杉原旋風は、日本がプラザ合意で円高を呑まされ、アメリカ資本の要求で日本市場を開放する日米構造協議が始まった時期と重なっていました。日本政府は悪者だというキャンペーンが、いつまた蒸し返されるかわからないのです。

 渡部:外務省は杉原問題でも及び腰でした。これから、かつての日本政府の立場を正しく説明する役割を誰が担うのか、はっきりさせないといけません。
 先の大戦中に政府の正式な決議でユダヤ人を入国させた唯一の国であることとあわせて、もっと世界に宣伝すべきでしょう。

 馬渕:おっしゃる通りで、耳が痛いですが、外務省がこのような発信をする気があるかどうか不明です。

 渡部:バカじゃなかろうかと思います。一番重要なことじゃないですか。

 馬渕:外務省の主流派は親米ですから、アメリカを気にして、越えてはいけない一つの枠があるのだと思います。それは不文律で、空気に支配されている。私も、歴史の真実を最大限利用すべきだと思っています。そのためには、ユダヤ人と日本人の関係をもっと強くしなければならないでしょう。
 


中国、韓国との関係を再考する時期だ P209

 馬渕:韓国や中国は、日本の援助を内心評価していますが、言葉にはしません。付き合いのあった韓国の外交官は、内々の会話では、韓国の発展は日本をコピーしたおかげだと言ってくれるのですが、公には決して言いません。中国人も心ある人は、発展の基礎が日本の援助にあることを知っているのですが、やはり公言はしないのです。とはいえ、彼らが感謝しないからといっていきり立つ必要はありません。両国ともに、今日の発展があるのは日本の経済支援のおかげなのだと、私たちが毅然としていればよいのです。

 渡部:ODAがなければ、自立的な経済成長への離陸ができなかった。

 馬渕:問題は日本の一部政治家が、表には出ない関わり方をして、ODA利権と結びついたケースが見られたことです。お金に目がくらんでしまう政治家が少なからずいる。安倍政権をどう支えるかという本題に戻れば、自民党の中にも親中国、親韓国議員がいて、まさに獅子身中の虫となっています。

 渡部:要するにハニートラップ、マネートラップ、あるいは・・・・・。

 馬渕:両方ですね。彼らがいつでも安倍さんの足を引っ張る準備をしている。特に韓国は経済的に完全に行き詰まっているからこそ、反日になっています。わざと敷居を高くしておき、ちょっと強硬姿勢を緩めたら、日本の親韓議員が、それ援助だと、安倍さんに圧力をかけるはずです。どのタイミングでそれが始まるか、注視しています。

 渡部:それは止めなければいけません。断固として援助しなければいい。私か実に情けないと思ったのは、民主党政権が李明博にひどい目に遭わされていたのに、王室儀軌(おうしつぎき)を返却したでしょう。

 馬渕:菅直人さんの時に返すと言って、実際には野田佳彦さんが返却しました。

 渡部:約束したとしても、あれだけ無礼な相手には持って行くべきではなかった。

 馬渕:おっしゃる通りで、野田氏が2011年10月の訪韓で、引き渡し義務のない朝鮮半島由来の古文書「朝鮮王室儀軌」を持っていったのに、お礼の一つもありませんでした。
 李明博大統領との会談では「歴代の韓国大統領は任期後半になると、『反日』を使いながら支持率を上げようとする繰り返しだった。私はそういうことはしたくない」と言われたのを真に受け、約5兆円の金融支援枠拡大を約束しましたが、直後の12月の会談では慰安婦問題で長時間難詰され、翌年8月には竹島に上陸、天皇陛下へ謝罪要求までされた。
 これが韓国のやり方です。それがわからない野田さんにも、かなり問題がありました。 民主党議員や左翼の多くは、韓国の言うことを聞き、持ち上げれば、関係がよくなると勘違いしている。日韓併合に良心的呵責を抱くのは勝手ですが、韓国のご機嫌をうかがうような言動は、敬意を払っているとはみなされず、かえって韓国人を軽視することになると思います。

 渡部:彼らは日本人の弱さの現れだと見ていますよ。

 馬渕:逆差別では決していい関係は築けないことに、多くの人が気づいていません。 堂々と、日韓併合のどこが悪かったのかと言うべきです。当時の国際情勢の中で、欧米諸国は皆、併合を支持しました。大韓帝国が、国が傾いた清国と南下政策のロシアの間をフラフラし、東アジアの不安定要因になっていたからです。韓国の中にも、日本と合併することで、何とか活路を見いだそうとする愛国者がいましたが、法律を作って(「親日反民族行為者財産の国家帰属に関する特別法」2005年)、彼らの財産を末代まで召し上げると言う。 それは自国を貶めることにほかなりません。これも一種の自虐史観です。当時の政治家を現在の基準で責めることは、自らのふがいなさに対する恨みの感情にも通じるのでしょう。
 本当に日韓併合が極悪で、韓国にマイナスしかもたらさないものだったら、なぜ韓国民衆は併合を拒否して日本に戦いを挑まなかったのか。答えはないのです。私は、韓国人は当時の状況の下でこれしかないという選択をしたのだと思います。日本も与えられた環境の中でそれなりに努力をして、ああいう形になった。それはそれで歴史の事実として、お互いに認め合うべきでしょう。その時初めて日韓は互いに対等の立場に立てると思います。つまり、併合した日本が上で、併合された韓国が下という差別的見方を克服することができるからです。

 渡部:日本が併合で何か得をしたでしょうか、持ち出しをしただけです。当時のシナ大陸に行けば、日本人であることがいかに有利だったか。だから朝鮮人は創氏改名を求めたのです。白人と対等に扱われる有色人種が日本人しかいない世界で、日本人になることを、彼ら自身が選んだ。今となっては都合よく忘れている。日本人は恩を着せていいのです。中国も同じです。最近の中国の反日無法行為や非常識な軍備増強を見て、戦前の日本の対支政策のことがわかるようになってきた人たちが日本人の間に増えたのはよい傾向です。
 韓国、中国はまともな国だと思って付き合ってはいけない
。価値観がまるで違うから。福沢諭吉の有名な「脱亜論」には、次のような文章があります。「わが国にとっての不幸は、隣に支那、朝鮮という国があることだ。この両国には道徳心がなく、破廉恥をきわめているが、一向に反省しようとしない。隣国はお互いに助け合うべきだが、支那、朝鮮はわが国にとってまったく何の役にも立たない。悪友と付き合っていると悪い人間になってしまう。従って日本は悪友との交友を願い下げにすべきである。」 道徳がない国とはできるだけ交流しないことが、日本の国益なのです。


一日も早く、日本の情報機関を立ち上げよう P220

 馬渕:日本の自衛隊はいまだに憲法上に、軍隊として位置づけられていませんが、それ以外 にも日本には、どうしても持たせてもらえないものが2つあります。1つは先に述べた情報発信のための海外放送もう1つは情報機関です。私は国の安全保障のために、情報機関を持つ必要があると考えます。アメリカのCIA、イスラエルのモサドのような組織です。
 情報機関の活動は、一般国民の生活とは関係ないので世論の関心を引かないし、暗い面ばかり強調されるように、実際に影の仕事です。
 戦前は日本にも情報機関がありました。例えば日露戦争は、明石元二郎大佐(後に陸軍大将)の諜報活動とロシア革命支援工作のおかげで勝てた側面もある。戦後の日本には情報機関が存在せず、設立に向けた政治的な動きもありましたが、いつも途中で頓挫しています。私もかつて自民党有志議員の勉強会に個人的に参加しましたが、外部有識者の意見を聞いただけで終わりました。優先すべき課題なのに、今日まで実現に至らないのは、日本に情報機関を持たせてはならないという、誰かの意思が働いていると考えるべきでしょう。
 情報の世界は複雑で、例えばイスラエルは、パレスチナゲリラ組織やイランと裏で手を結んでいる。有名なイラン・コントラ事件で、CIAはモサドやイスラエル国防軍情報部の仲介で、イランにアメリカ製の武器を流しました。武器援助のおかげでイランはイラクと8年間も戦うことができた。そういう工作は裏でやるしかありません。情報機関は、一歩間違えば危ないですが、効用もあるのです。なぜかというと、北朝鮮による拉致問題があるからです。拉致問題は表のチャンネルだけでは解決しません。被害者の方には冷たく聞こえるかもしれませんが、北朝鮮の現政権が続く限り情報機関同士で手を握らないと交渉が進まない面がある。
 金正恩第一書記の北朝鮮に対し、日本が拉致問題解決のためにお金を渡したり、食料その他の援助を表立って実行することは不可能です。裏で交渉し、複雑な過程をたどりながら被害者を帰してもらう。そういう筋書きは情報機関を使わなければ実現しません。
 例えば外務省の田中均・元アジア大洋州局長が、「ミスターX」相手にいくら秘密交渉を重ねても解決しないのです。外務省は、あくまで表の世界で動くわけですから、情報機関の人間を相手にしてはいけない。日本に情報機関がないために、田中氏は手を出したのでしょうが、表の人が裏の世界に取り込まれてしまった危険性がある。日本に情報機関を作れと言うと、各方面から抵抗がありますが、拉致問題解決のためにも必要なのです。

 渡部:それは内閣情報局などと言わずとも、まずは安倍首相が命じて、無名の存在としてスタートさせればいい。例えば情報機関で、公人の三代前までの家系を調べる。情報は表には出さずに持っておけば、何かの時に抑えとして使えます。今回の特定秘密保護法も、機密に関係する官僚の思想関係や交友関係などを、よく洗い出すことがポイントですから、画期的な出来事だったと言えます。歴史的に見れば安倍総理の大功績となることでしょう。個人情報を守れと言うけれど、暗証番号やクレジットカード番号の秘密ならわかりますが、公人が出自を隠して「プライバシーだ」と言うのはおかしい。

 馬渕:政治家が立候補する時、出自を三代ぐらい遡って自主的に書くべきですが、情報機関がきちんと調べて押さえておけば、いざという時の保険になる。日本国籍が必要な国会議員でも、現に在日韓国・朝鮮、中国、台湾などの出自で帰化していながら、公表していない議員も多いのです。

 渡部:民主党は、韓国の手先でしたよ。

 馬渕:たくさんいるでしょう。帰化して立候補するのはかまいません。しかし公職につこうとする以上、選挙広報に「私は何年何月にどこそこから日本に帰化しました」と書くべきで、出自を隠すのはおかしい。
 新聞、テレビなどメディアで仕事をする人が、本名を隠すのは、実際にそうかは別として、スパイをしているのではとの疑問を生じさせるから、絶対にいけない。通名で仕事をしたほうが便利なだけですから、プライバシー保護とは関係ありません。
 通名制度はやめるべきだと思います。会社に就職する時も、プライドを持って本名を名乗って欲しい。彼らを差別する意図はなく、むしろ通名使用を認めたほうが、結局は差別を温存することになると思います。もし現実に差別が存在するのだとしても、堂々と本名で仕事をすることが、本当の意味で差別をなくしていく道でしょう。
 彼らは問題を逆手に取ってうまく使い、「自分たちは差別されている」と言う。それは多くの場合、ためにする議論です。弱者であると強調することで、多数派を抑え、黙らせる人たちは、もう弱者ではなく強者に転じている。こういう状況を一般の人が変えていくのは難しいので、政治の力、あるいはメディアの力で少しずつ正しい方向へ向けていくしかないのですが、肝心のメディアがそういう人たちに浸透されています。

 渡部:公人の範疇をはっきり決めればいいんです。政治家、高級官僚、一定の役職以上の公務員、それからメディア関係で、ある役職以上の人は、公人でないと困る。
 一般の人が記事を投稿したり論文を書く分には、ペンネームでも通名でもかまいません。しかし朝日新聞の社説をほおかぶりして書くとなれば、見過ごすことはできない。ある程度のパブリック・インフルエンスがある人、公人として活動する人のプライバシーは、一定の制限を受ける必要があります。

 馬渕:ノリミツ・オオニシというニューヨークタイムズの元東京支局長が、後から実は在日だったと言われたことがあります。通名で反日的な記事を書けば、アメリカ人も、日本人が言うのだから本当だろうと思ってしまう。欺瞞であり、相手を騙すやり方です。身分を明らかにして仕事をするのは、差別でも何でもなく、マナーの問題でしょう。
 日本の大学教授は、外国人でも自由になれますね。

 渡部:大学の先生なんて大した影響力はありません。個人で研究する分には、通名で論文を書いてもかまわない。しかし公共放送であるNHKの講座で自説を主張するなら、プライバシーは制限される。日本のテレビ局も、公共の電波を使っていますから、課長級以上は本名を名乗るとか、どこから線を引くかは議論の余地がありますが、明確にしないといけません。ニューヨークタイムズの記者のような輩は、調べるしかない。
 マイク・ホンダだって、調べてみれば怪しいと思う。彼の祖先の、当時アメリカに渡っていった日系人たちは、コリア系を区別しませんから。

 馬渕:それはあるかもしれませんね。

 渡部:よく調べてみないと、わからないのです。  

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