日弁連という病

日弁連はなぜあんな左翼的な政治活動をするのだろうと、訝しく思っていました・・・

日弁連という病

「日弁連が〇〇という声明を出した」というようなニュースを聞くことがあり、ほとんどその度に「何故あのように左翼的なことを宣言するのだろう」と感じていました。
 正にケント・ギルバートさんが「はじめに」で例示しているような内容です。

 本書を手にして、「何故」なのかが分かりました。そしてそれが大多数の弁護士の意見ではないことも・・・。
 そうである以上そうしたことは解消されるべきだと思いますが、そのための方策もお二人が示してくれています。
 

 ケント・ギルバートさんと北村晴男さんの「日弁連という病」 を紹介するために、以下に目次や目を留めた項目をコピペさせていただきます。
 興味が湧いて、他も読んでみたいと思ったら、本書を手にしていただければと思います。

日弁連という病 ケント・ギルバート 北村晴男

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日弁連という病 [ ケント・ギルバート ]
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目次

 はじめに ―― ケント・ギルバート 3

 第1章 日弁連の「死刑制度廃止論」のウソ 13
日弁連の声明は日本の弁護士の総意ではない/日弁連の会長声明はおとなしくなったか/死刑制度存続を支持している弁護士はかなリ多い/人権擁護大会で「死刑制度の廃止」を宣言/「死刑を執行しているのは日本だけ」論のトリック/死刑制度に反対する弁護士が訪ねてきた/人権擁護大会で集票マシンを築く/瀬戸内寂聴氏の「殺したがるばかども」発言/冤罪問題は死刑制度の是非とは分けて考えるべき/声明は「弁護士有志」で出すべき

 第2章 問題だらけ!日弁連の実態 49
多くの弁護士は社会正義の実現に向けて格闘している/高過ぎる日弁連会費に困窮する若手弁護士たち/繰越金42億円! 日弁連の変な予算/弁護士のスキルは経験を積み重ねることで得られる/ロースクール世代VSベテラン世代の世代間対立/日弁連会長はどのようにして決まるのか/熾烈な会長選挙/日弁遠の会務活動/「青法協の人間ってみんな共産党員?」/保守派の任意団体はつくれるか

 第3章 非現実的な日弁連の「恒久平和主義」 89
「俺は政党に入ったんじや無い!」/なぜ日弁連は集団的自衛権行使容認に反対するのか/「非武装中立」は非現実的な妄想/NATO加盟国でないウクライナの悲劇/「立憲主義に反する」はおかしい/日弁連内派閥で集団的自衛権について議論/イラクのクウェート侵攻で日本の「平和ボケ」に気づいた/憲法9条改正にも反対/「憲法9条があったから日本は平和だった」は愚か/憲法改正に向けて考えるべきこと

 第4章 韓国籍副会長誕生で日弁連はどうなる 121
日弁連副会長に異例の外国籍弁護士/日本国籍でなくても弁護士になれる/徴用工問題に関する白承豪副会長の発言/LAZAKが主張する外国人参政権のウソ/同化するかどうかは本人次第/在日の来歴のウソ/なぜ朝鮮学校を無償化しなければならないのか/アメリカは外国籍でも軍隊に入れる/「ヘイトスピーチ」の名の下の言論封殺/反日教育の誤りを正すことも必要

 第5章 日韓関係を悪化させた日弁連の罪 155
慰安婦問題で日本を貶めた朝日新聞と日弁連/慰安婦を「性奴隷」と世界に広めたのは日弁連/慰安婦問題を仕掛けた弁護士たち/慰安婦映画『主戦場』の偏向ぶり/徴用工訴訟問題/弁護士有志の徴用工問題への声明/韓国併合再検討国際会議/「ジャパンタイムズ」も徴用工の英訳を改めた/「ウソも100回言えば本当になる」詐欺師の手口/「ホワイト国」から韓国を除外/日韓関係の根本的な解決は「歴史戦」で勝利するしかない

 終章 日弁連を改革せよ 191
日弁連は日教組と似ている?/弁護士の管理は単位弁護士会で十分できる/カリフォルニア州弁護士会はこうして政治活動をしなくなった/日弁連は完全なる独立機関でいいのか?/左翼世代がリタイアすれば日弁連は浄化されるか/日弁連改革は外圧によってしか達成されない事情/弁護士法を改正し政治活動を禁止せよ

 おわりに ―― 北村晴男 214

 資料 229
 


はじめに 米カリフォルニア州弁護士 ケント・ギルバート

 もし、次のような意見表明をしている団体があったら、みなさんはどのような組織を思い浮かべるでしょうか。
  ・死刑制度に反対
 ・憲法9条の改正に反対
 ・安全保障関連法に反対
 ・特定秘密保護法に反対
 ・テロ等準備罪に反対
 ・朝鮮学校に対する補助金停止に反対
 ・特定複合観光施設区域整備法案に反対
  ・内閣総理大臣の靖国神社参拝に反対
  いかがでしょうか。まるで日本共産党や左翼団体の主張のようです。もちろん共産党も左翼団体もこれらの主張をしていますが、それ以外にもう一つ、意外な団体があるのです。
 実は、これらの意見はすべて、日本の弁護士の団体、日本弁護士連合会(日弁連)が表明していることなのです。
 日弁連とは、日本全国すべての弁護士約4万人が所属する組織です。そのような団体が、なぜ共産党や左翼団体と同じような意見を頻繁に表明しているのでしょうか。
 私の血圧は、日弁連が声明を出すたびに跳ね上がります。健康に悪いので、できれば読みたくありません。しかし、そうやって誰もが「見て見ぬふり」をしてきたことによって、日弁連は政治的活動をエスカレートさせてきたのです。
 日弁連のこのような活動について正面から論じられることは、今までほとんどありませんでした。日弁連の活動について論じるには専門知識が必要ですし、何より相手は「裁判のプロ」です、下手に批判すると名誉棄損などで訴訟を起こされかねません。日本のジャーナリストや評論家は、それを恐れて批判を控えてきたのかもしれません。
 だから私は、勇気を出して暗黙のタブーを破り、2018年に『米国人弁護士だから見抜けた日弁連の正体』(育鵬社)という本を出版しました。
 この本では、「カリフォルニア州弁護士」の立場から、アメリカの司法制度とも比較しつつ、長期間日本に住むアメリカ人の視点で、日本の弁護士会を考察し、問題点を、何の“忖度”もなく率直に指摘しました。
 ただし、私は日弁連の会員ではありません。そのため、日弁連の内情などについては、なかなか分からないところがありました。
 例えば、日弁連は冒頭のような意見を、会長声明や意見書という形で表明しているのですが、では、その内容はどのようにして決められるのか、そもそも日弁連の会長はどのようにして選出されるのか、日弁連内の会長の権限は強いのか、それとも実は会長はお飾りで、内部に会長を操る勢力がいるのか、約4万人の弁護士はそのような意見表明についてどのように思っているのか、などです。
 今でこそ、テレビでしょっちゅう弁護士を見るようになりましたが、弁護士の世界はまだまだ閉じられた世界ですし、そういったことは、外部の人間にはなかなか分かりません。
 しかし、日本の弁護士のみなさんも、なかなか日弁連の批判はしづらいでしょう。日弁連は、法律で日本のすべての弁護士に加入が義務づけられている「強制加入団体」だからです。
 その中で、TVや雑誌でおなじみの北村晴男弁護士(東京弁護士会)は、以前、弁護士会についてツイッターで次のようにつぶやいたのです。
 「弁護士になりたくて頑張った。弁護士会に入らないとなれないので、入会した。多額の会費も払い続けている。すると、会や会長の名前で意見書や声明が出される。中には、共産党や社民党等の主張にそっくりで、自分の主張と真反対なものがよくある。『俺は政党に入ったんじや無い!』と叫びたくなる。」(北村晴男ツイッター@kitamuraharuo 2017年4月9日)
 このツイートは大きな話題を呼び、2万回以上もリツイートされました。
 私は、なんて勇気ある弁護士なんだと、諸手を挙げて北村氏のこのツイートを支持しました。このように北村弁護士も以前から、日弁連の活動に疑問を持っており、最近は、DHCテレビ『真相深入り!虎ノ門ニュース』で、私との「日米弁護士コンビ」で出演し、日弁連の活動についても、批判的に検証したりしています。
 今回、日本の弁護士ではないと分からない日弁連の内情について、北村晴男弁護士と対談する機会を得ました。
 非常に残念なことに、弁護士の中には、「日本弁護士連合会」という組織の存在を悪用して、特定の主義主張・イデオロギーを広めようと活動している人たちがいるのです。そのような日弁連の活動に対して、北村氏のようにウンザリしている弁護士も少なくありません。
 本書をお読みいただくことによって、日本の国民にとって日弁連とはどうあるべきなのか、今のままで本当にいいのか、一人でも多くの日本人に考えてほしいのです。そのきっかけに本書がなれば、幸いです。


声明は「弁護士有志」で出すべき

  北村 誤解のないように申し上げますが、私の主張は、「弁護士会や会長の声明は政治的に偏向しているから出してはいけない」ということではありません。すべての弁護士に思想・良心の自由はあります。ですから、それぞれの弁護士が自分の立場、自分の思想に従ってそれを表明することは100%自由です。
 ですが、日弁連や弁護士会の名前を使うのはトンデモナイ間違いだということです。死刑制度のような会の内部でも意見の割れている問題に対して、会や会長といった公式の名前で意見書や声明を出すのは、世間からは、「弁護士の総意」、または「多くの弁護士の見解」と見られ、誤解されます。そんな声明を世の中に出すことは、世間を欺き、惑わす行為です。それは「弁護士有志」という形で出すべきなのです。
 「弁護士有志200名」の場合もあれば、「弁護士有志1000名」の場合もあるでしょう。正確に人数を表示するなら、どんな見解を表明しても自由です。しかし全国4万人の弁護士の大部分の見解だと誤解させるようなことは厳に慎まなければいけません。「日弁連の執行部はこんな当たり前のことが分からないのか」と悲しくなります。
 日弁連も単位弁護士会も高度の自治が任されています。先ほど述べた日弁連の政治的な活動に対する最高裁判決は残念な結果ではあるのですが、恐らく裁判所から見れば、弁護士会の一部会員が訴訟という形で裁判所に救済を求めるのは、自治を許された組織として「お門違い」と感じるのでしょう。
 裁判所は「こちらで違法とは判断しませんが、弁護士会は自治を任されている、だから自分たちで議論して解決するべきです」と言いたいのではないかと思います。


「青法協の人間ってみんな共産党員?」

 北村 私が修習生時代に、弁護士会の構図とよく似たことがありました。修習生になってから裁判修習や検察修習をすると、裁判所や検察庁について、いろいろと司法の問題点を感じることがあり、純粋に「こんなことでいいのか」と思っていました。修習生仲間でもそういう話をよくしていましたが、その仲間の中に青年法律家協会のメンバーが多く含まれていました。

 ギルバート 青年法律家協会は、若手の弁護士や裁判官や法律研究者などの任意団体ですが、左派系の活動をしていることで知られていますね。

 北村 私が実務修習を終えて研修所に戻ってきた時に、その仲間から「司法を考える会」という団体を立ち上げるので、お前に会長になってほしいと言うわけです。
 もう友達になっていますから、「お前がそう言うならいいよ。じやあなるよ」と引き受けました。
 けれども、その会を立ち上げている人たちの中には青法協のメンバーが圧倒的に多かった。私は、「あれ、青法協ばかりだな」と思いました。ただその時の私は、青法協がどのような団体なのかまではよく知りませんでした。
 そんなある飲み会の場で、他の人から聞いた青法協についての気になる疑問を聞いてみたのです。
 「あのさ、青法協のメンバーってみんな共産党員だって言うヤツがいるけど、そんなことないよね?
 しかし、その青法協の皆は誰一人何も答えませんでした。
 それで私は初めて、「えっ、みんな共産党員なの?」と思ったのです。

 ギルバート 誰も答えなかった。

 北村 答えなかったんです。バカな私は、それで初めて、そこにいるみんな共産党員であることを知ったんです。
 私はその時、「なるほどね」と思いました。彼らは青法協の人間だけで会を立ち上げて、青法協の人間をトップに据えると、周りの修習生から「青法協のヤツらがまたなんかやっている」と思われてしまう。だから、この何も知らないバカな私をトップにして、政治色を抜こうとしたのでしょう。

 ギルバート そして実際の会の運営は彼らが牛耳るわけですね。

 北村 そうなります。もちろん、私は何も強制されませんでした。ただ、弁護士になってから、選挙のたびに彼らの一人から「共産党に入れてくれ」と頼まれました。もちろん私が共産党に投票することは絶対にありません。

 ギルバート 普通の人は、あまり気づかないのではないでしょうか。それにしても、よくそういうことを言う勇気がありましたね。

 北村 知っている人は知っている。だけど私は全然知らなかった。青年法律家協会というのは「真面目に司法のあり方を考える若い法律家の集まり」といったアバウトなイメージしか持っていませんでしたから。でも、これが彼らのやり方なんだなと、その時思いました。多分、弁護士会執行部の牛耳り方も同じだろうと思います。
 日々飲み会や会議などを重ねつつ、友達になって人間関係を作り、洗脳していくわけです。会長声明に書かれているようなことを聞かされ続けていれば、自分の確固たる考え方を持っていない限り、「そうなのかな」と思い、それが常識になってしまう人はたくさんいますから。


日弁連副会長に異例の外国籍弁護士

 ギルバート 日弁連について大きな話題の一つに、2019年度の副会長の一人に韓国籍の白承豪氏(神戸セジョン外国法共同事業法律事務所代表)が選出されたことがあります。外国籍弁護士が副会長に就任するのは、日弁連が設立されて以来、初めてのようです。
 白弁護士がどういう人かというと、1962(昭和37)年、韓国ソウル生まれ。5歳の頃に交通事故でトラックに引きずられて右腕を失い、何度も手術を受けたそうです。
 その後、父親の仕事の都合で1974(昭和49)年に来日しています。そして、1985(昭和60)年に琉球大学を卒業、1990(平成2)年に8回目の挑戦で司法試験に合格し、1993(平成5)年に弁護士登録しています。苦労人と言えるでしょう。
 現在は兵庫県弁護士会所属で、2017年度には兵庫県弁護士会の会長を務めています。外国籍で県弁護士会会長就任も初めてのことだったようです。
 北村さんにお伺いしたいのですが、日弁連の副会長はどうやって選ばれるのでしょうか。

 北村 日弁連の副会長というのは15人いて、代議員会で選出されるのですが、弁護士資格には国籍要件がありませんし、副会長の資格に関する日弁連の会則にも国籍の規定はありません。副会長の任期は4月から1年間になります。神戸新聞によれば、白弁護士は兵庫県弁護士会や近畿弁護士会連合会の推薦を受けたとのことです。
 私が3年間、イソベンをやった時のボス弁が東弁の元会長だったというお話をしましたが、東弁の会長はほぼ自動的に日弁連の副会長になるようなルート(慣例)がありました。ただ、どうしてそのようになっているのかは分かりません。

 ギルバート 副会長はみんな弁護士なんですか。

 北村 全員弁護士です。主な単位会の会長経験者が副会長になるというような慣例で選ばれるのではないでしょうか。
 ところが、会長は必ずしも副会長からなるとは限りません。ただし、会長職には大きな単位会の元会長経験者でないとなりにくい。東京や大阪の単位会の元会長が日弁連の会長になりやすいですね。
 だから私の元ボスも、東弁会長経験者でしたから、次に日弁連会長を狙っていました。ほぼ自動的に副会長にはなりましたが、ただとても個性的な方だったこともあり、日弁連会長にはなれませんでした。

 ギルバート カリフォルニア州弁護士会の場合は、会長は弁護士出身者でも、理事には一般人が多いんです。
 それはなぜかといいますと、弁護士たちだけで固めてしまうと、変な方向に暴走し始める可能性があるからでしょう。例えば日弁連のように。
 理事になる人は特に弁護士会に利害関係がある人たちではなく、例えば消費者団体などの人たちです。企業で言うところの外部取締役をイメージしてもらえばいいでしょう。
 日弁連に外部取締役の理事のようなポストがないのは、問題ではないかと思います。

 北村 面白い視点ですね。日弁連はさまざまな企業や団体に社外取締役や理事として弁護士を送り込んでいる割には、自分たちの組織には外部の人材を受け入れていないのです。

 ギルバート 外部の人材を受け入れなければどうなるかというと、日弁連以外の例を挙げますと、数々の不祥事を繰り返した相撲協会のような、悪い意味で日本のムラ社会的な組織になります。
 相撲協会は時津風部屋の力士暴行死事件で、元時津風親方らが逮捕され、監督官庁の文部科学省からの指導を受けました。それによって、2008年に戦後初めて親方以外から理事2名および監事1名を選任するようになりました。
 そういう意味では、日弁連は大変遅れていると言わざるを得ません。現在のように執行部を弁護士だけで固めているのは少し問題がありそうです。


慰安婦問題で日本を貶めた朝日新聞と日弁連

 ギルバート 日弁連の最大の罪は、現在の日韓関係の悪化に、朝日新聞と共に決定的な役割を果たしたことだと思います。特に慰安婦問題について、日弁連はこれまで吉田証言、クマラスワミ報告、朝日新聞の報道などの誤った情報に基づいた会長声明やコメントを出し続けてきました(図10)。
 日弁連は、1995(平成7)年11月16日「従軍慰安婦問題への政府の対応に関する声明」をはじめ、1995年から1997年にかけて、積極的に会長声明を出していました(巻末資料3~6)。
 しかしある時から風向きが変わり、朝日新聞も少しずつ論調を変え、「日本軍による強制連行」がいつの間にか「広義の強制性」があったという話にすり替えていった。また、一時期はすべての中学校歴史教科書に載っていた従軍慰安婦の記述も、次第に消えていきました。その後は、日弁連もほぼ沈黙していました。
 日弁連の声明は主に国連のクマラスワミ報告に基づいて出されています。クマラスワミ報告書とは、国連人権委員会(現・人権理事会)の決議に基づいて、「女性に対する暴力」特別報告官であったスリランカの法律家ラディカ・クマラスワミ氏が1996年に提出したものです。
 この中に慰安婦問題も取り上げられているのですが、韓国の済州島で慰安婦を強制連行したとする吉田清治氏の証言などを引用して、報告されていました。しかし、吉田証言は朝日新聞が「虚偽だった」と認めて、取り下げています。
 ただし日弁連が、これらの声明などについて、撤回や謝罪したという話は聞いたことがありません。

 
北村 そんな重大なことを撤回も謝罪もしない。朝日新聞は記事を重大な誤りだったと認めているのですから、その吉田証言を情報源として書かれたクマラスワミ報告に基づいて出された声明について、いまだ謝罪せず、撤回もしないという日弁連の行動は恥ずべきことです(クマラスワミ氏は、朝日新聞の記事のみに基づいたのではないと説明していますが、説得力がありません)。社会はこんな団体をまともな団体と考えてくれるのでしょうか。朝日新聞でさえ謝罪したんだから。30年以上かかりましたけども。

 ギルバート 日弁連は、2008年からまた慰安婦問題について言い始めるようになりました。今度は、日弁連が国連NGOとして国連の人権委員会などで発言し、そこで勧告を出させて、それを引用する形で会長声明を出すという手法を使っています。
 実は国連の人権関連の委員会などは、国連本体とは違って法的拘束力はありません。それでも一応は国連となっていますから、多くの日本人をだますにあたって非常に都合が良いのです。日弁連と弁護士らはここに日をつけて、国連の人権関連の委員会を舞台に、そこから発せられる勧告や意見書の「正義のイメージ」をフルに活用しているわけです。彼らは白分たちにだまされる日本人の無知さと、幼稚な正義感をあざ笑っていることでしょう。
 
その国連の勧告などには、クマラスワミ報告がまだ生きていて、それに基づいた内容になっています。

 北村 慰安婦の問題というのは、実は、朝日新聞が1982(昭和57)年9月2日(大阪版)22面において「朝鮮の女性 私も連行 元動員指揮者が証言 暴行加え無理やり 37年ぶり危機感で沈黙破る」と題する虚偽報道を行うまで、韓国側は一つも問題にしていませんでした。
 韓国は戦後37年間、一度も問題視しなかったにもかかわらず、朝日新聞が報道したら突然、「従軍慰安婦」を問題にし、「強制連行されました」「非人道的なことをされました」などと言い始めたわけです。
 
もし法廷だったら、弁護士なら必ず韓国に対して、「あなたは今まで37年間、いっさい日本に抗議しなかったのは何か理由があるのですか?」と尋問するでしょう。それに対して合理的な説明ができないのであれば、結局、韓国は朝日新聞の誤報に乗って、ただ日本を攻撃するために、あるいはお金を取るために、あるいは自分たちのプライドを取り戻すために政治利用しているだけなのではないかと判断するでしょう。
 でも、そこの肝心なことがあまり言われていない。もっぱら、「強制連行」があったか、なかったかというところだけが議論になってきました。

 ギルバート 2014(平成26)年8月5日、朝日新聞は紙面で1982年から報道し続けた慰安婦問題に関する一連の記事について、記事の根拠としていた故吉田清治氏の証言が虚偽であったことを認めて、1980年から1990年代に書かれた慰安婦問題に関する記事18本を取り消しました。
 しかし、謝罪しなかったことに対する批判が殺到し、やっと9月の記者会見で、自社の慰安婦報道について初めて謝罪しました。最初の報道がされてから実に30年以上放置されたうえでの記事取り消しと謝罪は、遅きに失したどころの話ではありません。なお、朝日新聞の謝罪は読者向けだけで、本件で日本と日本人の名誉が貶められたことに対する反省や悔悟は、今でもまったくありません。

 北村 もっとも、朝日新聞が謝罪したのは、本紙にコラムを書いているジャーナリストの池上彰さんが怒ったからでしょう。
 8月5日付の紙面で、これまで報じてきた慰安婦問題に関する一連の記事を撤回しましたが、謝罪はしなかった。池上さんは朝日新聞に「新聞ななめ読み」というコラムを月一で連載していましたが、その中でこの朝日新聞の従軍慰安婦を検証する報道を批判的に論じ、「謝罪すべきだ」とする原稿を書いた。ところが8月29日掲載予定の原稿の掲載を朝日新聞から拒否された。そこで同コラムの中止を申し入れたんです。この問題が報じられると、朝日の記者からも、ツイッターで自社の対応を批判する実名投稿が相次いだんですよね。
 そういうことがあって、朝日新聞は9月11日にあらためて謝罪会見を行ったわけです。

 ギルバート 新聞がニュースを報じる際には、事実関係のウラを取ることは当然の義務です。しかし朝日新聞は、慰安婦がかつての日本軍または日本の官憲に拉致・監禁され、日本軍の将兵に強姦されたとする虚偽の報道を行い続けました。そのデタラメな報道が今や「日本の国家犯罪」として世界中に拡散しているのです。
 
2015年の「慰安婦問題日韓合意」によって、最終的かつ不可逆的な解決が確認されましたが、文在寅大統領が「日韓合意で慰安婦問題は解決しない」とちゃぶ台返しをしたり、韓国国内の慰安婦像の数も、合意前は20体でしたが、もう50体をゆうに超えて、倍以上に増えるなど、韓国は日韓合意を踏みにじっているんですね。
 さらに韓国の外相が2019年2月25日、国連人権理事会の演説で、慰安婦問題の日韓合意は不十分だとの立場を示しました。
 挙句の果てには、日韓政府間合意に基づいて元慰安婦らの支援事業を行っていた「和解・癒やし財団」を7月3日に解散させてしまいました。
 この財団に10億円を拠出して、合意の着実な履行を求めていた日本政府は、「解散は受け入れられない」と韓国政府に抗議しましたが、当然です。
 朝日新聞も日弁連も、自分たちが蒔いた種によって、このような事態を引き起こしたのですから、責任を取って、こういった国家間の合意を破る連中に対してルールを守らせるような活動をしてもらいたいものです。


弁護士法を改正し政治活動を禁止せよ

 ギルバート では、日弁連のこのような活動に、どのようにしたら歯止めをかけることができるのでしょうか。

 北村 今回の対談ではっきり分かりましたが、やはり法律を変えるしかないですね。
 日弁連はさまざまな問題を抱えています。しかし、完全自治ですから、弁護士法を改正しない限り、外から監督も指導もできません。また、残念ながら自浄作用もまったく期待できません。
 私は、弁護士法を変えて、禁止規定を設ける他ないと思っています。「弁護士会が政治活動、とりわけ会員の中で意見が大きく割れるような問題について会や会長の名前を使って活動をしてはいけないし、それに会費も使ってはいけませんよ」と、当たり前の法改正をするしかないと思っています。
 そうすれば、もし日弁連が政治活動を行った時には、我々は「それは違法だ」と訴訟を起こせるようになります。

 
ギルバート 弁護士法が改正され、政治活動を禁止すると明記されれば、政治活動をしている弁護士たちは、しなくなりますかね。

 北村 法に明記されれば、さすがに守ると思いますよ。活動したら違法になってしまいますから。

 ギルバート それならば、弁護士法を改正するのが一番の解決策ですね。

 北村 おっしやるとおり、それが一番早いです。

 ギルバート 私は以前、日弁連に電話して尋ねたことがあります。「会長の声明や意見書はどうしてそんなに偏っているのですか」と。
 そうしたら、「総会で決めました」とか、「幹部で決めました」と回答がありました。
 そうすると、会長声明は多分そこまではやらないでしょうから、意見書は、一応は総会を通しているのでしょうか。

 北村 そうだと思います。意見書はその会の手続きを経ていますよ。

 ギルバート 総会の意見書も、偏ったものばかり出ていますが、一応は総会を通している。けれども、弁護士全員の総意を得てはいないわけですよね。結局、人権擁護委員会のデタラメな採決と同じ程度なわけですよね。

 北村 それは一緒です。だから、法律を変えるしか方法はないですね。

 ギルバート 法律を変えましょう。もう自治では変わらないわけですからね。

 北村 自治で変わらない理由というのは、客観的には我々会員の怠慢です。しかし、本当にそんな暇はないんですよ。

 
ギルバート 本来ならば、マトモな弁護士がやることではないんです。弁護士法には、法律についての意見を述べるというのも一つの活動になっていて、日弁連の政治的な活動は、この法律を悪用しているのですが、それも削除しましょう。

 北村 これは、弁護士法第1条2項が「弁護士は、その使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない」と定めていることを指しています。ただ、これはあくまでも「弁護士」の努力義務であって、「弁護士会」の義務ではありません。
 これに対して、弁護士法第31条1項、第45条2項は、(単位)弁護士会と日弁連について、「弁護士(など)の使命及び職務にかんがみ、その品位を保持し、弁護士(など)の事務の改善進歩を図るため、弁護士(など)の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とする」と(明確に)定めています。
 つまり、日弁連および(単位)弁護士会の目的は、弁護士の指導、連絡、監督に限定されているのです。何が「法律制度の改善」か、という判断は個々の弁護士によって異なりますから、これを「弁護士」の努力義務として、「弁護士会」の義務や目的としなかったのは当たり前です。
 にもかかわらず、日弁連は「弁護士」について定めた努力義務を勝手に拡張して、「法律制度の改善」も日弁連の義務・目的であると主張するのです。トンデモナイ間違いです。
 
日弁連のこの誤った解釈を裁判所が追認しているのですが、自治を許された日弁連に、法解釈の(広過ぎる)裁量までも認めてしまい、その結果、我々弁護士に重大な苦痛を与えており、正義に反すると私は考えています。

 ギルバート あと、これだけ弊害が出ている、内部からも不満がある、それにもかかわらず国会が動いていないということに、私は文句を言いたいですね。弁護士法を変えるには、それこそ政治家に動いてもらうしかない。三権分立の原則の下で、法律を作ってるのは立法府ですから。日弁連という存在によって、日本国の尊厳が貶められてきた事実を国会がしっかり認識して、議論して、ちゃんと法改正をすべきです。
 弁護士法の第6~9章は日本弁護士連合会についての条項ですが、弁護士の管理、懲戒、資格審査会などの事務的な決まり以外を削除してしまってはどうでしょうか。そうしたら日弁連という存在を食い物にしてきた連中は、きっとパニックになるでしょう。それくらいキツイお灸を据えてあげないと分からないのではないでしょうか。
 どうしても日弁連を全国組織として残すのであれば、各地の弁護士会の連絡係とかデータを集めて集計するとか、事務作業だけにすべきです。そして、完全自治をやめさせて、少なくとも、どこかの管理下に置いておくべきでしょう。
 弁理士や司法書士などはみんな行政のどこかの管轄に入っているのに、日弁連だけは完全に独立しています。透明性を義務づけ、最高裁か法務省が、日弁連の活動をもっとしっかり監督すればいい。予算は国会の承認が必要なようにすれば、なおよいでしょう。
 
カリフォルニア州弁護士会もそうなって、結局、本来の活動費と、いわゆる部会の活動費を別々に分けて請求するということで落着して、自治を守ることができたわけです。
 そもそも国民から選ばれた国家権力によるシビリアン・コントロールが効かない、日弁連のような独立した権力が存在することは、民主主義に反しているのです。立憲主義の精神にも反しています。
 要は、日弁連を民主化しなければならないんです。だから決議案はすべて委任状や不在者投票によって参加できるようにしないとダメです。先述の人権擁護大会も、委任状や不在者投票による議決への参加を認めるべきです。
 今の日弁連はごく一部の人間でいろいろなことを決め、決議や声明や意見を発信している。もし株式会社がそんなことをやったら大変なことになりますよ。それぞれの弁護士の権利を守るためには、委任状による意見表明や不在者投票が必要です。私の所属するカリフォルニア州弁護士会も、当然そうしています。
 特定の政治問題について、会としての活動は禁止して、会費を使って政治活動をすることは禁止です、そういうことは任意団体でやりなさいとしましょう。
 日本だと日本弁護士政治連盟(弁政連)という組織があって、一応「日弁連と一体で動く」というのが、組織の運営の基本原則です。「クリーンで透明な運営をする」「政治におもねらない」ということだそうですけど、この組織はあまり機能していないんですかね。

 北村 私のところにも、各党の議員と懇談してきましたといった報告の書かれた冊子が来ます。この弁政連は任意団体です。

 ギルバート 弁護士法を改正して、日弁連と単位弁護士会は政治活動を禁止し、政治的な活動をしたい人は、任意団体を立ち上げて、そちらでしてもらうようにしましょう。

 
北村 ぜひ、そうしてもらいたいですね。


おわりに   弁護士 北村晴男

 日弁連についてケント・ギルバートさんとの対談本を出したら、というお話をいただき、私は「即」OKしました。というのも、ケントさんが2018年11月、『米国人弁護士だから見抜けた日弁連の正体』を上梓され、日弁連による政治活動の許し難い誤りを指摘していただき、それ以降、私はケントさんに深く感謝するとともに、ある種の後ろめたさも感じていたからです。
 日弁連による政治活動の問題点については、1989年4月に私が東京弁護士会と日弁連に入会して以降、否応なく感じさせられており、それは私だけでなく大変多くの(恐らく3万5000人以上の)いわばサイレントマジョリティの弁護士たちの共通認識であったは ずですから、我々弁護士が真っ先に声を上げなければいけないのに、ケントさん一人におんぶにだっこの状態だったのです。
 この後ろめたさは、大学時代の4年間、「革マル派による早稲田祭パンフレットを利用した資金調達」に間接的とはいえ協力してしまったという、私の苦い記憶に通じるものです。
 当時、早稲田大学学生自治会は革マル派に事実上牛耳られており、そのため毎年開かれる早稲田祭では、高いパンフレットを買わないと入場できないしくみとなっていて、「何万人もの来場者によるパンフレット代金とそこに掲載される広告収入が組織の活動資金に流れている」というかなり信ぴょう性の高い噂がありました。
 当時の革マル派はもの凄く暴力的で、中核派と血で血を洗う抗争を繰り広げており、我々は暴力団より遥かにヤバイ組織と思っていたのです。これに対し、我々ノンポリ学生は、「革マル派の資金源という疑惑は追及すべきだけど、さりとてヤバイ奴らに目を付けられて殺されたら元も子もない。そんなところで自分の人生を終わらせるのは馬鹿だ。それより、他大学の女子学生もたくさん来るし、やっぱりパンフを買って早稲田祭に行こう」と思っていました。
 実際、私が所属するソフトボール愛好会というサークルは、早稲田祭に参加して喫茶店を開き、私もそこに参加して思う存分楽しみました。サークルはたぶん、上納金を実行委員会に支払い、彼らに資金協力する結果になったのではないかと思います。
 この革マル派によるパンフレット利権は、その19年後にこれを問題視した大学当局によって早稲田祭自体が中止され、さらにその5年後に新生早稲田祭が開催されるに及んで、ようやく消滅しました。
 解決までに私の卒業から数えても4半世紀を要したのですが(たぶん、問題発生からは約半世紀を要したと思います)、残念ながら内部の学生による改革ではなく、大学当局という「外部からの実力」によるものでした。
 ついでに言うと、私の学生当時、早稲田の法学部学生自治会は、日本共産党の下部組織である民青に事実上牛耳られていましたが、我々はこれにも文句ひとつ言うこともなく、学生生活を満喫していました。これも今は正常化したようです。
 どんな組織でも異常が常態化した場合、自浄作用が働くのは極めて稀で、外部の大きな力が働いて初めて、正常化のうねりが生じるように思います。
 ところで、本書の出版にあたり、あるゴルフコンペでの友人の一言が大きな後押しになりました。
 その友人は、東京に三つある単位弁護士会の一つに所属し、日頃から日弁連も含めた弁護士会の会務活動を精力的にこなしている立派な女性弁護士です。会務活動といっても政治活動とは無縁の公益的な、弁護士にとっても市民にとっても意味のある活動に熱心に取り組んでいます。
 その人が、ハーフタイムで昼食を取っているときに、「弁護士会の会長に立候補してほしい、と最近よく言われるんですけどお断りしています。だって、あんな声明を自分の名前で出すなんて絶対に嫌じゃないですか」
 と言うのです。
 「そうですよね」
 と答えた私は、「会長になれば執行部の声の大きい人たちに押され、意に反する政治的意見を事実上出さざるを得なくなる。弁護士会・日弁連のこんな状況を放置してはいけない。せめて自分のできることをしなければ」と思い、意を強くして本書の出版に向かわせてもらったのです。
 他方、世間の方から見たらいつも喧嘩ばかりしているように見える私でも、自分の所属する組織に対する批判本を出版するには、正直、さまざまな心の葛藤がありました。
 まして、現日弁連会長の菊地裕太郎弁護士は、私が所属する東京ローヤーズという野球チームの先輩であり、彼がキャプテンの時に私が一選手として、彼が監督の時に私がキャプテンとして、一緒に全国のチームと戦い、何度も日弁連野球大会の優勝を勝ち取った仲間でもあります。彼は私などより遥かに人望もあり、個人的には大好きな先輩でもありますから、その分私の葛藤も大きいのです。
 それ以外の葛藤としては、例えば、「日弁連が声明を出したところで、実際にはほんのわずかな影響力しかないのだから、批判することにどれほどの意味があるの?」というのがあります。
 これに対しては、「いやいや、従軍慰安婦の強制連行のウソや性奴隷のウソについては、国連を利用したマッチポンプのような日弁連の活動が世界に重大な悪影響を与えているし、この問題を放置したら、彼らは将来またどんな間違いをしでかすか分からないよ」と心の声がします。
 他にも、「わざわざ弁護士会の中で軋轢を生むような出版をするのはどうなの? また人から変わり者と言われるよ」という迷いもあります。
 これに対しては、「自分が弁護士になろうとした思いを忘れたの? 世の中の理不尽と戦いたいからでしょ。日弁連が政治活動の道具として使われている現状は理不尽極まりないと思っているなら、せめて本の出版という手段で戦うことは自分にとっての正義でしょ」と心の声が聞こえてきます。
 いずれにしても、本書を手に取ってお読みいただいた皆様に、私やケントさんの言うことが正しいのか、それとも日弁連の名前を使って政治活動をする人々が正しいのか、判断していただければ幸いです。
 その結果として、日弁連が政治活動の道具として使われているという現状が変化するきっかけになってくれれば、と願わずにはいられません。
 
最後に、対談相手のケント・ギルバートさんには、私にない豊富な知識と強い正義感で多くの教えをいただきました。育鵬社の山下徹さんには、ケントさんとの対談と本書の出版を奨めていただくとともに、なかなか仕事をしない私を粘り強く後押しし、励ましていただき、出版まで漕ぎ着けていただきました。皆様に感謝申し上げるとともに、何よりも本書を手に取っていただいた読者の皆様に感謝します。
 

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