教科書に書けないグローバリストの近現代史
私は反グローバリズムの立場なので、その点から理論武装の一助にしたいと思いながら読みました。
勉強になりました。
渡辺惣樹・茂木誠さんの「教科書に書けないグローバリストの近現代史」を紹介するために、以下に目次や目を留めた項目をコピペさせていただきます。
興味が湧いて、他も読んでみたいと思ったら、本書を手にしていただければと思います。
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私は反グローバリズムです。
私は反グローバリズムの立場なので、その点から理論武装の一助にしたいと思いながら読みました。
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目次
はじめに 3
第1章 大英帝国と明治維新 ―― 近代日本の根本構造とは何か
「歴史修正主義」的世界史の見方とは 渡辺/17
ヤルタ体制やポツダム体制に異議を唱えるのが、一般的な歴史修正主義 茂木/18
第一次世界大戦でドイツだけを悪者視する間違い 渡辺/19
第一次世界大戦を起こしたマネーの動き 茂木/22
貨幣を製造することの価値に気づいたイングランド銀行 渡辺/26
紙幣を最初につくったのは宋王朝 茂木/27
保有量の四倍まで発行できた金の引換券 渡辺/30
紙幣の発行と金本位制への移行 茂木/31
貿易赤字解消のためのアヘン戦争 茂木/31
アヘン戦争後の清の支配が、イギリスの自由貿易帝国主義の完成形 渡辺/34
教科書に出てこない通貨発行権 茂木/34
日本に自由貿易の危険性を教えたアメリカ 渡辺/36
アメリカが日本をバックアップした理由 茂木/39
領事裁判権はお雇い外国人を呼ぶには不可欠 渡辺/40
クーリーの斡旋をしていたアメリカ 茂木/41
イギリスも南アフリカにクーリーを斡旋していた 渡辺/42
ペリー来航計画の背後にはロスチャイルド家 茂木/43
太平洋ハイウェイ構想と日本開国 渡辺/44
明治維新の成功は、グラバー商会のおかげか 茂木/45
イギリスが幕府についていた可能性 渡辺/48
ロスチャイルドは幕府と薩長の二股をかけていた 茂木/48
日本のナンバー銀行が西南戦争後に潰れた理由 渡辺/49
シティの危険性を察知していた伊藤博文 茂木/51
日本の近代史を理解するには伊藤への理解が不可欠 渡辺/52
アメリカのおかげで日本は、イギリスのズルさをはねのけた 茂木/53
「自由貿易が正しい」というロジックの危うさ 渡辺/54
アヘン戦争とアメリカ南北戦争はパラレルな関係 茂木/55
南北戦争はアメリカの「保護貿易主義者」と「自由貿易主義者」の戦い 渡辺/56
「マネー」から見直す南北戦争の意味 茂木/56
第2章 パクス・ブリタニカの終焉 ―― 世界の中心はシティからウォール街へ
保護貿易によって台頭するアメリカ 茂木/61
アメリカと日本のマーケットとなった中国 渡辺/62
アメリカに幻想を抱きだした中国 茂木/63
アメリカが持つ「ヨーロッパの覇権国とは違う」という意識 渡辺/65
宣教師が中国のアメリカ利権に与えた影響 茂木/66
宣教師は中国に幻想を抱いていた 渡辺/67
南満洲鉄道の経営に関わりたかったアメリカ 茂木/68
日露戦争で日本を勝利させた国際金融資本 茂木/70
鉄道経営にはアメリカを加えるべきだった 渡辺/74
伊藤博文暗殺の黒幕は誰か? 渡辺/75
ドイツは第一次世界大戦に巻き込まれた 茂木/77
FRBはアメリカの参戦を見越して設立された 渡辺/79
ウィルソン以降、ウォール街の傀儡になったアメリカ大統領 茂木/81
「草の根保守」の抵抗とジキル島の秘密会談 茂木/83
民主党を勝利させたのは保守の分断 渡辺/88
保守の分断にウォール街の関与はあったか 茂木/89
ウォール街の代理人だったチャーチル 渡辺/91
「ロシアに共産党政権をつくったのはロスチャイルド」説をどう見るか? 茂木/92
東部戦線を終結させたいドイツの意志が、ロシア革命を成功させた 渡辺/93
アメリカの参戦によってドイツは負けた 茂木/94
アメリカが参戦できたのはロシア革命のおかげ 渡辺/96
レーニンの革命に幻想を抱いたアメリカ 茂木/98
ロシアが立憲民主的な国になれた可能性 渡辺/98
「アラブの春」の原型がロシア革命 茂木/100
ラスプーチンを暗殺したのはイギリス諜報部 渡辺/101
石井・ランシング協定を再評価する 渡辺/103
石井・ランシング協定で日本はもっと強く出るべきだった 茂木/104
石井・ランシング協定とシベリア出兵の関係 渡辺/106
第一次世界大戦とシベリア出兵で、日本は英仏から信頼を得た 茂木/107
第3章 中国を巡る日米ソの攻防 ―― なぜ中国で共産主義が生まれたのか
ワシントン会議はアメリカが初めて主導権を握った会議 茂木/113
ワシントン会議は日本にとって失敗ではなかった 渡辺/117
日本はケロッグ・ブリアン協定を結ぶべきだったか 茂木/120
ケロッグ・ブリアン協定はアメリカのための方便 渡辺/120
ケロッグ・ブリアン協定で日本は保留事項を設けるべきだった 茂木/121
大事なのは「言うべき時は、はっきり言う」こと 渡辺/122
日本の”お花畑外交”は、日本人の国民性に根ざしたもの 茂木/123
裁判も日本では手打ちにした人が評価される 渡辺/124
中華民国とのボタンの掛け違いはいつ起きたか 茂木/124
孫文が目指したのは共産主義革命 渡辺/127
日本が蒋介石とうまくやる道はなかったか 茂木/127
張作霖を使って満洲の安定を考えた日本 渡辺/128
日本もイギリスのような二股外交をするべきだった 茂木/129
アメリカの実業界は中国より日本を重視していた 渡辺/130
三〇年代のアメリカの政権のバックにいたキリスト教団体 茂木/131
キリスト教勢力とつながるために宋美齢と結婚した蒋介石 渡辺/131
リットン報告書は日本に大甘な決定だった 茂木/133
リットン調査団には反日の軍人が入っていた 渡辺/135
リットン調査団に調査員を送り込んだアメリカの意図 茂木/136
アメリカ人には日本人よりはるかに先を読む能力がある 渡辺/137
日独伊三国同盟により日本は日米戦争に引き込まれた 茂木/137
アメリカ国民は再び戦争をしたくなかった 渡辺/138
「日独伊を世界から隔離する」と演説したルーズヴェルト大統領 茂木/139
アメリカが外交を間違えると共産党政権ができる 渡辺/140
なぜスペイン内戦と日中戦争で西側の対応が違ったか 茂木/142
「英米の外交の失敗」が共産国家を生む 渡辺/143
蒋介石政権を支えたアメリカのドル 茂木/144
ケインズ経済学が共産主義体制をつくる 渡辺/145
当時の西側のエリートは共産主義者か容共だった 茂木/147
第4章 誰が第二次世界大戦を始めたのか ―― 日米戦争にうまく誘導された日本
戦争をしたかったのはヒトラーではなく、チャーチル 渡辺/151
ドイツの軍需産業を育てたのはウォール街 茂木/153
アメリカの駐仏大使も心情的な共産主義者 渡辺/155
ヒトラーはなぜ対米開戦を決めたのか 茂木/156
チャーチルはウォール街に踊らされた 渡辺/157
ナチズムの経済政策とはニューディール政策と同じ 茂木/161
ヒトラーがユダヤ人差別をやめさせられた可能性 渡辺/162
ユダヤ人問題をもてあましていたイギリス 茂木/163
ルーズヴェルトとポーランド系移民票 渡辺/163
ナチスとシオニストとの協力関係 茂木/164
日米戦争と1940年のアメリカ大統領選の関係 渡辺/167
1940年のアメリカ国民は参戦を望んでいなかった 茂木/170
ルーズヴェルトは蒋介石のことなど考えていない 渡辺/171
蒋介石も中国のコミュニストに操られていた 茂木/172
近衛文麿と日米戦争は無関係 渡辺/173
日本の対米開戦の動機に「反グローバリズム」はあったか? 茂木/175
当時の日本の経済学者は「マネーとは何か」がわかっていない 渡辺/177
高橋是清かマネーを理解していた可能性 茂木/177
政治家に死の覚悟が必要だった時代 渡辺/179
満洲で計画経済を成功させた岸信介 茂木/180
アメリカも満洲経営を評価していた 渡辺/181
日本が超えたレッドライン 茂木/182
第5章 「保護国」としての日本戦後史 ―― ウォール街は日本をどう処理したか
日本の終戦工作ルートは三つあった 茂木/185
「国体護持」という言葉に含まれたメッセージ 渡辺/187
参謀本部にあった「何が何でも米英に屈するな」という空気 茂木/190
ドイツの子どもたち数百万人を死なせたチャーチルの悪 渡辺/191
理想的な戦争の終わり方とは 茂木/191
戦後5年間で900万人の餓死者が出たドイツ 渡辺/192
モーゲンソー・プランとコミンテルンの関係 茂木/193
戦後のドイツ人はストックホルム症候群にかかっている 渡辺/194
「冷戦はウォール街とコミンテルンのやらせ」という説 茂木/195
朝鮮戦争をめぐる謎 渡辺/196
毛沢東の中国をイギリスが真っ先に承認した 茂木/197
イギリスは簡単に信用できない国 渡辺/198
アメリカのアチソン演説で朝鮮戦争は始まった 茂木/199
共産党の南京進出に反撃しなかったアメリカ 渡辺/200
なぜアメリカは突然やる気を失ったのか 茂木/201
アメリカは自国民に戦争継続の説明がつかなくなった 渡辺/201
ウォール街は中国マーケットをどう見ていたか 茂木/202
革命後、資本主義体制を容認したレーニン 渡辺/202
毛沢東はウォール街を裏切って、反グローバル政策をとった 茂木/203
アメリカの対日政策は政治的・軍事的意味合いが強かった 渡辺/206
安保改定を求めた岸信介の意図 茂木/206
60年代の日本の学生のような学生が、アメリカで増えている 渡辺/207
巣鴨拘置所でCIAと取引した岸 茂木/208
アメリカはつねに「通貨の支配」を考えている 渡辺/209
日本の首相は”アメリカ帝国・日本支店長” 茂木/210
日本は自主憲法をつくらないほうがいいかもしれない 渡辺/211
軍隊を持ってこそ日本は本当の独立国になれる 茂木/213
アメリカのネオコンに対抗できる日本の政治家はいるか 渡辺/214
今の憲法では、手足を縛られてボクシングするのと同じ 茂木/215
自衛隊が軍になっても、捕虜としての待遇を受ける保障はない 渡辺/217
中国が国際法を理解しているかは疑問 茂木/217
第6章 「独りで立つ」日本ヘ ―― 巨大金融資本と共産主義に支配される世界で
大きな組織は必ず左翼に乗っ取られる 渡辺/221
太平洋問題調査会(IPR)も左翼に乗っ取られていたのか 茂木/223
太平洋問題調査会は途中から左傾化していった 渡辺/224
国際連合に疑問を持つ人がいない日本 茂木/224
トランプ大統領がパリ協定から離脱した理由 渡辺/226
皇室典範の改正にまで口出ししてきた国連 茂木/227
日本は国連改革の先頭に立て 渡辺/228
日本が抜けて国連がますます中国に乗っ取られる危険 茂木/229
国際機関を自国のために利用するのがうまい中国 渡辺/230
クリントン政権から始まった巨大金融資本の政治支配 茂木/231
トランプ大統領の登場はアメリカにとって幸運だった 渡辺/234
トランプ氏は9.11やイラク戦争をどう見ているか 茂木/236
「9.11は裏がある」に顔がこわばったブッシュの次男 渡辺/237
「習近平を潰す」方針にチェンジしたウォール街 茂木/238
アメリカはいつまでインフレを制御できるか 渡辺/240
脱炭素運動がアメリカのペトロダラーシステムを壊す可能性 茂木/241
「脱炭素」を言い出したのはカナダの共産主義者 渡辺/242
脱炭素と原発利権はつながっているか 茂木/245
ロシアの資源戦略を利用しているクリントン夫妻 渡辺/246
米中対立時代における日本の立ち位置とは 茂木/247
バイデン政権でアメリカの民主主義は崩壊の危機にある 渡辺/248
日本の若い世代に期待 茂木/251
自分自身で善悪を判断する目を養うことが重要 渡辺/252
終わりに 254
第1章
*イギリスが幕府についていた可能性 渡辺
確かにジャーディン・マセソン商会やグラバー商会は、薩長に肩入れした商売をしていました。ただ幕府がしっかりしていれば、イギリスも幕府側についていた可能性はあります。
必ずしもイギリスが、明治維新を応援していたとは言えません。イギリスはもっと狡猾な国です。
*ロスチャイルドは幕府と薩長の二股をかけていた 茂木
幕府側をバックアップしていたのはフランスで、当時はナポレオン三世の時代です。そのナポレオン三世の資金源は、フランスのロスチャイルド家だったように思います。
フランスのロスチャイルドが幕府に協力する一方、イギリスのロスチャイルドはジャーディン・マセソン商会への投資を通じて、薩長の資金源になっていた。ロスチャイルド家は、薩長と幕府で二股をかけていたということになりますね。
第2章
*FRBはアメリカの参戦を見越して設立された 渡辺
先に話題にしたように第一次世界大戦が始まる前年、1913年にアメリカでは中央銀行にあたるFRB(連邦準備理事会)が設立されています。当時のアメリカ大統領は、政治学者出身のトマス・ウッドロー・ウィルソンです。経済に疎い彼を引っ張りあげたのは、ニュージャージー州知事時代のウィルソンの顧問だったエドワード・マンデル・ハウスです。1912年の民主党全国大会で、ウィルソンを大統領候補にするために尽力しました。
ハウスはロスチャイルド家の代理人だったモルガン財閥に近い人物で鉄道事業で財をなしています。ハウスとJPモルガンが第一次世界大戦の前に、経済学をまったく知らない男を大統領にする。ここに思惑があったことは、間違いありません。
ウィルソンは1913年に大統領に就任し、その年の12月23日に、FRB設立の法案を議会に通過させます。第一次世界大戦を前にして中央銀行を設立することで、アメリカの軍需産業に対する、与信のメカニズムをつくりあげていたと言えないでしょうか。
1914年に第一次世界大戦が始まり、1917年にアメリカが参戦します。アメリカが大きな戦いに入り込むための準備が、1913年にできていた。今で言えば新型コロナウイルスが発生する前に、ワクチンができていたような話です。
陰謀論を言うつもりはありませんが、少なくとも近未来にアメリカが巻き込まれる大きな戦争があることを、JPモルガンは察知していた。そして1912年の大統領選を前に、それに向けた仕掛けを予め打っていた。
JPモルガンは、アメリカで定期的に恐慌が起こるたびに、尻拭いをさせられていました。彼らの力によってアメリカは大恐慌になるのを免れ、恐慌で収めることができた。そうした経緯があるので、中央銀行をつくるメリットを彼らは理解していました。
中央銀行をつくったほうが、戦争しやすい国にできます。そして第一次世界大戦の際にJPモルガンは、イギリスからの受注の一括引受窓口になります。こうした中でアメリカに大量の金が集まり、覇権もアメリカに移っていくのです。
そう考えた時、第一次世界大戦をきっかけとするアメリカヘの覇権の移動は、何者かによる、入念な仕掛けがあった可能性は捨てきれません。
第3章
*日本はケロッグ・ブリアン協定を結ぶべきだったか 茂木
その延長線上にあるのがケロッグ・ブリアン協定です(1928)。「国際紛争を武力で解決しません」と記した初めての国際協定で、パリ不戦条約とも呼ばれます。
もともとアメリカとフランスの二国間協定だったものに、各国がどんどん加わっていった。日本も加わりますが、これを初めて破ったのが満洲事変を起こした日本であったと東京裁判でキーナン主席検事に叩かれ、いまだに主流派の歴史学会では叩かれていますが、そもそも日本は、こんな協定を結ぶべきだったのでしょうか。
*ケロッグ・ブリアン協定はアメリカのための方便 渡辺
ケロッグ・ブリアン協定は、アメリカの国務長官フランク・ケロッグと、フランスの外務大臣アリスティード・ブリアンの間で交わされたものです。ところがブリアン白身には、やる気がそれほどありませんでした。
そもそも、国際連盟憲章に紛争を武力で解決しないと書いてあります。それなのに屋上屋を重ねる協定を結んだのはヽアメリカが国際連盟のメンバーではなかったからです。
アメリカは議会で共和党がヨーロッパ問題非干渉の原則(モンロードクトリン)を主張したため、連盟に参加できなかった。そのためオブザーバーとしての参加しかできないことになりました。国際連盟の本部があるジュネーブに大使を送り、現実にはアメリカの意向が働く形にはしていましたが、国際紛争が起きた時に、連盟のメンバーとしては公式参加できない。
その一方で、連盟メンバーのように機能させることができると、英仏は気づくのです。要するにたんなる方便の協定でした。日本の釈明史観の歴史学者はケロッグ・ブリアン協定をしきりに持ち上げますが、その裏にある英仏米の思惑を語りません。
のちに国際連盟からリットン調査団が満洲に派遣されますが、アメリカの参加はケロッグ・ブリアン協定が根拠です。本来なら連盟のメンバーでないアメリカには参加資格はありません。
*ケロッグ・ブリアン協定で日本は保留事項を設けるべきだった 茂木
ケロッグ・ブリアン協定は、すべての戦争を禁じているわけではなく、自衛戦争は認めています。それに、違反した場合の罰則規定はなく、ただの紳士協定です。こんなもので戦争を防止できると考えるのが、お花畑なのです。この時代、侵略戦争に対する罰則規定は、経済制裁を定めた国際連盟規約だけでした。
さらに各国は、いろいろな保留事項を付け加えました。アメリカについては「アメリカの利害関係のある地域には適用しない」となっています。つまり中南米には適用しないというわけです。イギリスにいたっては「大英帝国には適用しない」と、はっきり書いています。そんないいかげんなものなのです。
だから日本も結ぶのであれば、「満洲には適用しません」「日本の利害関係のある地域には適用しません」と保留事項をつけておけばよかったのです。「皆さんと同じです」と。それをせずにきれいごとで終わらせるから、満洲事変で国際的に孤立することになり、いまだに叩かれているのです。
*大事なのは「言うべき時は、はっきり言う」こと 渡辺
茂木先生の指摘で満洲問題は外交交渉で回避できる可能性は充分にあったことがわかります。先に話題にした石井・ランシング協定しかり、ケロッグ・ブリアン協定しかりです。
ジャーナリストの高山正之氏も言うように、「世界は腹黒い」のです。それなのに日本人は「交渉相手は紳士である」という前提で見てしまう。ここが問題です。
自分は、腹黒くなくていいのです。でも腹黒さに抵抗できる交渉力を持たなければならない。「言うべき時は、言わなければいけない」と、将来を担う若い世代には伝えておきたいです。
2015年に採択されたパリ協定(気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定)にしても、後(6章)で述べるように実態は、中国を利するためにつくられたプログラムです。このことを政治家が、論理立ててはっきり言えなければならない。
八方丸く収めることしか考えない政治家ばかりだと、日本の将来世代が苦しむことになります。
第5章
*日本の首相は”アメリカ帝国・日本支店長” 茂木
戦後の日米関係は、ウォール街がアメリカの政治に影響を与え、そのアメリカの政治が日本の政治に影響を与えるという構図です。アメリカはトランプ大統領が出るまで、民主党も共和党も基本的に、ウォール街の政権です。ウォール街の意向を受けて、グローバリズムを世界に広げていった。
日本の首相は、言わば”アメリカ帝国・日本支店長”です。基本的にそのご意向に従うだけですが、問題なのは社長の方針が時々変わることです。「中国を叩く」と言ってみたり、「中国と手を結ぶ」と言ってみたり。それも支店長に相談せずやるので、日本はいつも右往左往するのです。
1972年のニクソン訪中もそうでした。前の年に、「来年、訪中して対立関係にあった中国と和解する」と、アメリカ大統領のリチャード・ニクソンが言い出します。この時の日本は、発表の3分前まで知らされていませんでした。当時の佐藤栄作首相は大きな衝撃を受け、これが長期政権だった佐藤内閣を終わらせる要因になりました。
これと同じことを、バイデン政権以後のアメリカもやりかねない。
*日本は自主憲法をつくらないほうがいいかもしれない 渡辺
そうした中で、日本として考えるべき問題に、日本国憲法があります。要は、軍隊を持つか持たないかです。私は自主憲法制定派です。アメリカに押しつけられた現在の憲法を改正し、戦争放棄や戦力の不保持を記した第9条も、なくすべきだと考えていました。
ところがイラク戦争の裏の動きに気づいてから、少しずつ考えが変わってきました。保守派に怒られるかもしれませんが、「アメリカがつくった憲法」という形で残しておく。そうすることで、参戦すべきでない戦争には「行かない」口実にできると思ったのです。
アメリカを信用できないのは、2001年の9.11テロからも明らかです。わずか2機の飛行機で、超高層ビル2棟を崩壊させる芸当が、アルカイダのビン・ラディンにできるはずがありません。実はもう1棟No.7ビルディングも火事だけで崩壊しています。9.11公式報告書は当初No.7ビルディングに言及していなかった。ところが、これを指摘されると「崩壊理由は不明」にしてけりをつけた。9.11事件には他にもロジックで説明できない事象が多すぎます。
いずれにせよ、イラク戦争で自衛隊が戦闘に参加しなかったのは、正解です。当時は行くべきだと私は思っていて、9.11テロにやらせの可能性があるなどとは思ってもみませんでした。でも歴史家になってアメリカの狡猾さを知ってからは、アメリカに「NO」といい易い米国製憲法の逆利用もあり得ると思うようになりました。
だからわざと自主憲法をつくらずにいて、「お前たちがこんな憲法をつくったのだから、その範囲でできることだけ協力します」と言えばいい。つねにアメリカにお順いされる形で軍隊を出すというやり方も、あり得るのではないでしょうか。
自主憲法をつくったとして、それを使いこなし、アメリカに「ノー」と言える胆力を待った政治家が、日本に現れるか否かが判断のわかれ目です。どんなにひ弱な政治家が出ても大丈夫なようにする。今の憲法を利用して、出たい時だけ出ればいい。自衛隊が動き易くする修正は必要ですが「メイドインアメリカ」の性格を残しておいた方が良いのではないかと思うようになりました。
イラク戦争の承認を国連安保理で求めて成功したコリン・パウエル元国務長官が亡くなりました(2021年10月18日)。彼は安保理でフセインが核兵器・生物化学兵器を所有していることを示す絶対的な証拠があると言い切った。しかしそれは嘘でした。パウエルは最後までそのことを悔やんでいた。彼のスピーチの原稿を準備したのはネオコンの巨頭チェイニー副大統領のスタッフでした。パウエルは後にだまされたことに気づいた。アメリカ政治は、国務長官をだますほどに腹黒いのです。
*軍隊を持ってこそ日本は本当の独立国になれる 茂木
同じことを考えた政治家が、吉田茂です。アメリカに押しつけられた日本国憲法を使うことで、日本は軍隊を持たず、朝鮮戦争にも巻き込まれずにすむと。
そうした考えは、吉田の時代ならわかります。すでに朝鮮戦争が始まっていて、日本は米軍に占領されている。日本が巻き込まれないためには、この憲法を利用するしかありませんでした。
しかし今は違います。今の戦争ができない憲法は、在日米軍とセットです。
「日本は戦争ができないから、アメリカが守ってやる」ということで、在日米軍がいる。この在日米軍がいる限り、日本はいつまでたっても保護国です。
だから日本は少なくとも自分の領土、領海、国民を守れる軍隊を持つ。自衛権をちゃんと発動できるように憲法を改正したうえで、20~30年かけて自衛隊が在日米軍の肩代わりをしていく。必要ならフィリピンやグアムに自衛隊を配備してもいいでしょう。そうしてはじめて、本当の独立国になれるし、対等な日米関係になれると思うのです。
*アメリカのネオコンに対抗できる日本の政治家はいるか 渡辺
理想としては、私もそうなればいいと思います。でも今の政治家を見ていると、現実論として不安です。たとえばバイデン政権では、ネオコン(新保守主義)の人たちが返り咲いています。
自らの思想や理想実現のためには武力行使も辞さない人たちで、彼らが力をつけてきた時、またイラク戦争のようなことをやるでしょう。イギリスやフランスも一緒になって、民族主義の国家をどんどん潰していく。米国や西欧諸国のそのような行動に自主憲法を作った時にはっきりと「NO」と言えるかどうか。そうした動きに対抗する政治家が、日本に生まれると確信できるのならいいのですが、そんな政治家がいるのか心配です。
*今の憲法では、手足を縛られてボクシングするのと同じ 茂木
問題は吉田のあとを継いだ人たち、いわゆる宏池会の人たちでしょう。
池田勇人に始まり、大平正芳や宮沢喜一、加藤紘一、そして岸田文雄へとつながります。ひたすら「日米関係は大事です」「平和憲法を守りましょう」としか言わない。こういう情けない政治家ばかりでは、日本の未来はまったく切り開けません。
とくに今は、習近平国家主席が率いる中国が非常に挑発的になっています。近い将来、台湾で何か起こる可能性は高く、その時は当然、日本の尖閣諸島も巻き込まれます。
そのとき今の憲法は自衛隊の足かせになり、日本は何もできません。手足を縛られて、ボクシングをするようなものです。早急に日本の交戦権を認めておく必要があります。
今認められているのは専守防衛で、向こうが撃ってきて初めて反撃できるというものです。岸田内閣の高市早苗政調会長のように、「ミサイルヘの燃料注入が始まるなど、相手の発射意志が確認できれば、敵基地を無力化できる」と解釈する人もいますが、最大の問題は、時の総理に決断できるかどうか、ということです。総理大臣が攻撃を決断できなければ、いくら敵基地能力を持っていても自衛隊は何もできません。
さらに心配なのが、実際に戦闘が始まった場合です。日本の自衛隊が、軍隊として規定されていないのは大問題です。
「特別公務員」である自衛官の行動は警察官に準じます。たとえば発砲する場合にも、こればダメ、あれはダメ、と制約があります。六法全書を見ながら撃つかどうかを判断するという笑い話もあります。これでは戦場で臨機応変に行動することができません。
また国際法上、軍人としての待遇が受けられない可能性がある。戦時国際法上の軍人なら、捕虜になったら保護されるといった規定がありますが、自衛隊員にはその保障がありません。「陸海空その他の戦力は保持しない」(憲法9条)という国に、軍人は存在しないはずですから。
*自衛隊が軍になっても、捕虜としての待遇を受ける保障はない 渡辺
第二次世界大戦後のイギリスとアメリカは、ドイツの捕虜に対して国際法で決められた保護をしていません。この時彼らは「捕虜」(POW)という言葉を使わず、「武装解除された軍人(勝手に武装解除した軍人の意味)」と定義を変えました。そして捕虜としての扱いをしなかった。
そう考えると「国際法上の軍人にあたるかどうか」という議論に、あまり意味はありません。彼らは都合よく、定義を変えてきます。そこは相手しだいということです。私の意識には米国は「ずるい国」という強い思いがある。戦いで最も怖いのは後から「飛んでくる矢」です。中国も怖いがアメリカも怖い。この感覚が憲法改正問題を考える際には重要だと思うのです。
*中国が国際法を理解しているかは疑問 茂木
ビスマルクはベルリンを訪問した伊藤博文ら明治政府の一行にこう言いました。
「大国は、自国に都合のいい時だけ国際法を遵守するが、都合が悪くなるとこれを無視する。だから国際法に頼ってもダメだ。日本は軍事力を整え、実力で国を守れ」と。
伊藤らはこの国際政治の現実を理解し、富国強兵に努めた結果、日清・日露戦争に勝利し、日本は独立を維持しました。
2016年、フィリピンが南シナ海の領有権をめぐって対立する中国を、国際海洋法条約に基づき仲裁手続きを申請しました。中国の戴秉国・元国務委員はアメリカでの講演で、「仲裁裁判所の判断など紙クズだ。誰も中国に結果を押し付けることはできない」
と発言し、記者たちを唖然とさせました。
北朝鮮ならともかく、国運の常任理事国の一つである大国の責任ある指導者が、国際法に基づく仲裁裁判に対して「紙クズ。従わない」と発言する。
このように平然と国際法を無視する国の軍隊が、どれだけ国際法を理解しているかは、極めて疑問です。仮に尖閣で日中の軍事衝突が起こった場合、彼らがどんな暴挙に出るか予想もつきません。その際、彼らはこう言い訳するでしょう。
「自衛隊は軍隊ではないから、戦時国際法は適用されない。国内法で処断する」
こういう言い訳をさせないためにも、自衛隊と自衛官の法的位置付けをきちんとしておくべきだ、というのが私の考えです。
第6章
*大きな組織は必ず左翼に乗っ取られる 渡辺
3章でも述べたように共産主義者たちの目的は、大きな組織をつくることです。第二次世界大戦後の国際連合の立ち上げも、ソヴィエトのスパイだったルーズヴェルトの側近、アルジャー・ヒスを中心に行われました。
今も国際連合は、文化マルクス主義をリードしています。WHO(世界保健機関)のテドロス・アダノム事務局長も、共産主義者です。だから政治家で「国際連合に身をゆだねるべきだ」などと言う人は、考察が甘い。
もう一つ注意すべきなのが、BIS(国際決済銀行)です。前にも述べたようにBISは、第一次世界大戦におけるドイツの戦時賠償金を、各国に分配するためにつくられた組織です。
現実には、世界恐慌で台頭してきたナチスが賠償金の支払いを拒否し、BISは賠償金の分配という役割を果たせなくなりました。本来なら役割が終わった時点で、解散するべきです。
ところが役割が終わっても潰そうとしなかったのが、国際金融資本の人たちです。「中央銀行の中央銀行」的な存在として継続させたのです。今のBISがどんな組織なのか外部からは誰もわからない。秘密主義で取材もほとんどさせず、非常に謎の多い組織なのです。
国際金融資本の頭脳として機能していると考えられ、2カ月に1回、世界の中央銀行の頭取を集めた秘密会議を開いています。ただし議事録を我々が読むことはできず、いまだ治外法権的な組織として存在しています。
国際金融資本の動きを知るうえで、彼らの動向を見ておくことは重要です。おそらくIMF(国際通貨基金)をコントロールしているのも、彼らです。組織は違いますが、IMFのトップは、世界の中央銀行の総裁たちから出ています。BISのほうが、彼らより力が強いはずです。
IMFをつくったハリー・デクスター・ホワイトも、ソヴィエトのスパイです。5章で述べたようにホワイトは、ハル・ノート原案を書いた人でもあり、彼がスパイだったことはすでに証明されています。
共産主義者には、「アメリカをコントロールするには、国家を超えた国際組織をつくればいい」という思想があります。ホワイトがIMFをつくった背景にも、やはりスターリンの思想があったと思います。
大きな組織をつくれば、必ず左翼が乗っ取る。ここは保守として、しっかり押さえておく必要があります。
*太平洋問題調査会(IPR)も左翼に乗っ取られていたのか 茂木
この種の話題で必ず出てくるのが、太平洋問題調査会(IPR)です。ワシントン体制下の1925年にハワイのYMCAがホノルルで設立した、アジア・太平洋内における諸問題を研究する国際的な学術研究団体ということになっています。アメリカの外交戦略全般を研究するシンクタンクが、マンデル・ハウス大佐が創設した外交問題評議会(CFR)であるのに対し、東アジア・太平洋問題に特化したのがこの太平洋問題調査会です。
第二次世界大戦前はこの地域における唯一の国際研究機関でしたが、1930年代からソヴィエトのスパイである共産主義者が活動していたことで知られています。
冷戦期には容共派の巣窟として激しい批判にさらされ、1960年に解散しています。この太平洋問題調査会も、第一次世界大戦後の国際連盟や国際決済銀行(BIS)、あるいは第二次世界大戦後の国際連合と同じようなグローバリストの機関としてはじまり、ある段階でコミュニストに浸透されたのでしょうか。
*太平洋問題調査会は途中から左傾化していった 渡辺
1929年には新渡戸稲造が理事長を務めていますから、最初はまともな組織だった。それが途中から、共産主義者のプロパガンダ組織に変わったのは、NKVD(後のKGB)の指示によるものです。米国人スパイ網のまとめ役の一人、ヤコブ・ゴロスは、太平洋問題調査会に余りに目立つ共産主義者を入れることに反対していました。当時のNKVDは対米世論工作にいささか自信過剰になっていたのです。
*国際連合に疑問を持つ人がいない日本 茂木
国際連合については、アメリカ国内でも「これを利用して世界を支配しよう」というグループと、「もう反米勢力に乗っ取られているから信用できない」というグループに分かれています。トランプ氏は、後者の代表です。
ところが日本では国際連合について、みんな神のごとく崇め奉っています。国際連合に疑問を持つ人は、ほとんどいないという気持ち悪い状況が続いています。
そもそも国連は、日本を守ってくれる組織ではありません。
国連(the United Nation)は、その名の通り「ユナイトした国々」、第二次世界大戦の連合国(the United Nation)によってつくられた組織です。国際連盟との違いは、侵略国に対する武力制裁権を持つことで、制裁をするかどうかを決める組織を安保理事会と言います。
戦勝国5大国のアメリカ、イギリス、フランス、中国、ソヴィエト(ロシア)だけが、この安保理事会の常任理事国(選挙で選べない永久メンバー)として、拒否権を握っています。うち一国でも拒否権を発動すれば、安保理は動けません。
第二次世界大戦後、世界ではさまざまな戦争や紛争が起こっています。ソ連はハンガリーやチェコ、中国、アフガニスタンに侵攻しています。イギリスやフランスもエジプトに、アメリカはベトナムに、中国はインドやベトナムに侵攻しています。
いずれも5大国のいずれかが拒否権を発動したことで、安保理は機能を停止しました。拒否権の発動は、ソヴィエトは120回、アメリカも80回以上にのぼります。
国連が武力制裁を行った事例は、過去2回しかありません。
朝鮮戦争(1950~53)と湾岸戦争(1991)だけです。
朝鮮戦争の時にはソ連が欠席し、湾岸戦争の時には崩壊寸前のソ連が、アメリカに歩調を合わせて拒否権を発動しなかったため、武力制裁ができたのです。
そう考えた時、仮に常任理事国のいずれかが日本に侵攻してきた場合、日本が安保理に訴えても、その当事国が拒否権を発動すれば、安保理は動きません。
さらには第二次世界大戦の敗戦国である日本、ドイツ、イタリアには、国連の承認なしに軍事的制裁力を発動できるという「旧敵国条項」もあります。95年の国連総会決議で死文化されたとはいえ、条文には残っている。日本を侵略しようという国は、必ずこの規定を悪用するでしょう。それでも国連は、日本にとって信頼できる組織なのか。
*トランプ大統領がパリ協定から離脱した理由 渡辺
本当に困ったものです。2020年にトランプ政権がパリ協定から離脱しましたが、これも国連に対する不信感があります。
パリ協定は、2015年に採択された気候変動抑制に関する国際協定です。1994年に発動された、国連気候変動枠組み条約の目的を達成するための具体策として定めたもので、国連と深く関わっています。
トランプ氏には「国連は中国に乗っ取られている」という思いがあり、離脱を決めたのです。アメリカのパリ協定からの離脱について議論するなら、離脱した理由も含めて議論すべきです。ところが日本では、そうした議論は行われません。
そもそも「気候変動」という言葉自体、地球温暖化が論理的に怪しくなったから使い始めたものです。中国にCO2削減義務が発生するのは2030年からですが、その時には中国がパリ協定から脱退するという喜劇もあります。COP26(英・グラスゴー:21年10月31日―11月12日)に中国とロシアが不参加でした。その意味をしっかりと考えなくてはなりません。
第6章
*トランプ大統領の登場はアメリカにとって幸運だった 渡辺
トランプ政権の誕生は、まさに神がいたのでしょう。トランプ氏はビジネスマン時代に、民主党支持と共和党支持を行ったり来たりしていました。そうした中で、いつの時点かは不明ですが、「このままだとアメリカという国はなくなる」と気づいたのです。
おそらく2000年代初頭から始まった、一連のカラー革命がきっかけでしょう。父ブッシュ政権がイラク戦争を始めた時は、まだ疑いの段階だった。それがカラー革命が始まって、ネオコンのやっていることはメチャクチャだと、トランプ氏ははっきり気づいたはずです。
彼は今のような立場をとることが、自分のビジネスに不利であることはわかっています。私利私欲でやっていないことは、間違いありません。大統領時代は、年俸の約4500万円を受け取らず、自分が正しいと思う組織に寄附していました。こんなことをした大統領は、ほかにフーバーとケネディぐらいです。
彼が大統領になったのは、アメリカ国民にとって極めて幸運だったと思います。アメリカという国が、本当に焼け野原になる一歩手前で押さえ込んだのですから。
今の共和党からは、ネオコンが排除されています。共和党の代表的ネオコンでイラク戦争を主導したディック・チェイニー元副大統領の娘リズ・チェイニー氏も、2021年5月に共和党ナンバー3の同党会議議長から解任されました。そんなトランプ氏を私は早い段階から「素晴らしい」と言っていますが、日本の保守言論界にも彼が出てきた時、口を極めて罵った人も大勢いました。
日本の保守でさえ本当に歴史を理解し、ネオコンの動きをきちんと認識して語っている人は少なかったのです。
第6章
*「脱炭素」を言い出したのはカナダの共産主義者 渡辺
脱炭素は「本当はできない」と、みんな知っているのではないでしょうか。EV(電気自動車)にしてもトータルで計算した時とはガソリン車よりエネルギー効率が悪いことは、わかりきった話です。そして日本の場合、EVに完全にシフトすれば、ガソリン車の製造に関わる多くの製品、部品が必要なくなります。その結果、倒産や社員のリストラをする企業が相次ぎ、大量の失業者が出るようになるでしょう。国が混乱することは、間違いありません。
ただ本当にそうした状況が起こるまで、EVへの流れは止まらない気がします。脱炭素はもともと「地球温暖化をいかに防ぐか」という話から出たものです。地球温暖化に最も影響を与えている二酸化炭素の排出を削減しようというわけです。「地球は本当に温暖化しているのか」「温暖化して何か困るのか」という議論はまともになされていません。
この問題を仕掛けたのは、モーリス・ストロングというカナダ人です。彼は1972年に、国連環境計画という小さな組織をケニアにつくりました。そしていつの間にか「脱炭素」を世界の潮流にしたのです。
目的の一つは、中国に金儲けさせることです。ストロングの親戚(アンナ・ストロング)が毛沢東と昵懇の共産主義者で、ストロングも共産主義者でした。ストロングは国連のお金を盗んでアメリカ司法から追われた時に、中国に逃げています。
つまり共産主義者が、二酸化炭素悪者説を仕掛けたわけで、排出権取引のシステムをつくったのもストロングです。中国に儲けさせるためです。
さらに言えば、ガソリン車の市場を握っているドイツと日本を潰したいという、アメリカの思惑も考えられます。すでに自動車産業はアメリカからかなり消えていますが、それを取り戻すことをアメリカが考えている可能性があります。脱炭素はこの二点が重要で、あとはグレタの幼稚な言説にだまされる程度の人が騒いでいるだけです。
そもそも今言われている脱炭素に関する議論は、肝心な点が抜け落ちています。我々の食べ物は、空気中の二酸化炭素を植物がとり入れてくれることでできています。おいしいお米の原料は空気中のCO2です。現在の、空気中の二酸化炭素濃度はおよそ400ppmですが、かつて180ppmまで落ちたことがあります。これが150ppmになると、植物は餓死しだします。
そう考えた時、二酸化炭素削減論者は「どれだけ削減するか」まで考えなければなりません。「二酸化炭素がなくなれば、我々の食料はどうなるのか」という問題をセットで考える必要があります。
また二酸化炭素は産業革命以降、増えています。その結果、穀物の生産が増えている。
ドイツから「二酸化炭素の増加により、食料生産地帯が増えている」という報告も最近出ています。二酸化炭素は森林が成長するため、あるいは我々が生存するために不可欠という議論が、なぜ出ないのか不思議です。
またEVにシフトしても火力発電に必要な石油、天然ガスヘの需要が減るかどうかは未知数です。