オバマ大統領は黒人か＜変見自在＞

目次

　はじめに ―― 「通」は事実を見誤る ――　3

　第一章　巷にはびこるウソ
人の嫌がることを煽る新聞　21　／　白人が盗った東ティモール　25　／　日本人は共産党が嫌い　29　／　お伝が百人斬りの嘘を暴く　33　／　たかが事務総長の分際で　37　／　朝日新聞の「ＫＹ」　42　／　「官優遇」は自殺にまで　46　／　どこまでも日本を嫌う朝日　50　／　健康回復はＳＥＸで　55

　第二章　歴史はこうしてねじ曲げられる
キリスト教の危険な本質　61　／　勉強しなさい、古舘クン　65　／　人類の進化と白人の関係　69　／　反省と償いは別　73　／　戦場に行かない日本人記者　77　／　「外人」はやはり「害人」　81　／　「異能」と「非道」が同居する国　85　／　豪州人の性悪さ　89　／　日本語の豊かさの秘密　93　／　ＮＨＫは韓国が北を攻めたという　97

　第三章　世界に憚る劣悪国家
ウイルスをまき散らした厚生官僚　103　／　日本軍が圧勝した「特殊情報戦」　107　／　「外人妻」は検死要件　112　／　朝日新聞は読者を殺して喜ぶ　116　／　世界に侵食する漢民族　120　／　だからロシア人は嫌われる　124　／　「立ち入り禁止」の意味　128　／　恥じらいのない豪州女　132　／　自衛隊はいつも悪者　136　／　コソボ独立の茶番　140

　第四章　白人はそんなにエラいのか
プミポン国王の感謝　147　／　ビル・エモットの嘘　151　／　ポインセチアは悪の華　159　／　万里の長城の意味　159　／　「世界一のＯＤＡ」のムダ　163　／　朝日は殺人鬼を野に放った　167　／　毛沢東の系譜　171　／　日本の裁判は女性蔑視175　／　「大脱走」と竹島の日　179　／　日本人と拷問　183

　第五章　善意は何も救わない
支那人の操縦能力　191　／　よど号犯人の遺物　195　／　日航の不運　199　／　居残る朝鮮人殺人犯　203　／　虐殺記念館の偽写真　208　／　戦争を利用する劣悪国家　212　／　サルにも劣る人種　216　／　アフガニスタンが陥ちない理由　220　／　全逓のうぶ毛　225　／　オバマ大統領は白人の子229 　解説　宮崎正弘 　

はじめに ―― 「通」は事実を見誤る ――

　羽田の航空記者クラブに入って間もなくの昭和四十年代、初めての海外旅行に出かけた。目的地は米国。カリフォルニア州パームデールのロッキード社工場の取材で、あのトライスターが作られていた。
　ロッキードの名は日本人には山本五十六元帥を葬った双胴の悪魔P38で知られる。あるいは飛ぶたびに落ちるF104を思い出すか。いずれにせよ軍用機の印象が強い。
　しかし旅客機でも知られた存在で、戦前のそれはロッキード14。日本も購入してパレンバンまで落下傘部隊を運んでいる。
　三枚の垂直尾翼を持つロッキード社製のスーパーコンステレーションはマッカーサーの「バターン号」で知られる。彼がトルーマンにクビにされて日本を去るとき、これで東京上空を一周した。
　当時、麻布小学校の三年生だったが、この男のために今のアメリカ大使館まで見送りに行かされ、さらに機上のマッカーサーを喜ばせるために小学校の屋上で旗を振らされた。
　マッカーサーは部下を見捨ててコレヒドールから逃げた男だ。それだけでも問題なのに米のフィリピン傀儡政権大統領ケソンを脅して謝礼金名目で五十万ドルを自分の口座に入れさせた。日本占領中には後の日航社長松尾静磨に「二人で航空会社を設立してぼろ儲けしよう」と働きかけた。カネに汚い男はまたＡ級戦犯の処刑日を当時の皇太子殿下の誕生日にぶつける性格の悪さももっていた。それを知っていたら屋上で旗は振らなかった。
　ロッキードはそのあとにエレクトラを生産するが、売れない。それで軍用に転用して対潜哨戒機Ｐ３Ｃオライオンになる。一機の値段は五億円。それにブラックボックスを載せて百億円にして百機、日本に買わせた。
　その次の民間機がこのトライスターで、これも日本に騒動を持ち込んだ。最高裁は「聖書に誓う米国人の言葉に嘘はない。彼らの証言は神聖な証拠だ」という世にもアホな宣明書を出して日本の首相を捕らえた。
　米国人は嘘をつくことに何の罪悪感ももたないという意味で、おそらく支那人と肩を並べる存在だろう。現に彼らの中で一番嘘が少ないという理由で大統領に選ばれたクリントンでさえモニカ・ルインスキーとの一件で偽証し、謝罪している。
　日本に災いしかもたらさなかったロッキード社が最初の海外旅行の目的地だったことを除けば旅は実に心ときめくものだった。まず搭乗したノースウェスト航空機のエンジン一基が太平洋上で異常爆発を起こして止まり、ハワイに緊急着陸した。
　飛行機を乗り換えてやっとロサンゼルス空港につくが、ここで預け入れたスーツケースが紛失した。
　サンフランシスコでは黒人になけなしの百ドルを盗られ、読売の記者に会わなければ、所持金八ドルで三日過ごさねばならなかった。
　心ときめくというより、心が早鐘を叩くような毎日だったが、それも旅ならではの面白さかもしれない。
　旅はまた人々のホスピタリティにも触れられる。旧ソ連ではその筋の女性から官憲の目を盗んでキャビアを持ち出す方法を教わった。パキスタンの砂漠できつい頭痛に襲われたときタジクの若者が阿片を耳の後ろに擦り込んでくれた。痛みは嘘のように消えた。
　「ローマの休日」のアン王女のセリフのようにどこの国にも探せばそれぞれの良さはある。ただ例外はある。支那だ。
　この国は人を騙すことに無上の幸せを感じているように見える。たった十円の卵でさえ、化学薬品を駆使して偽物をつくる。昧はグルタミン酸ソーダで整える。
　街には偽物しかない。その中に偽物を売ることを看板にする街があって言い草がいい。「そこらの偽とは違う」。例えばベルサーチのシャツは工場で作られる本物を横流ししたものだから「生地もデザインも縫製も本物」だと。騙されたつもりで買ったら生地も縫製もデザインも紛うことない偽ものだった。
　先日、天津を旅した。戦前の国際都市は往時の佇まいを今も色濃く残す。満州国領事館も昔のままだが、その史跡表記は「偽満州国領事館」。偽が売りの国で偽は笑える。たぶん満州国は日本の傀儡と言いたいらしいが、それを「偽」と書く感覚がいやらしい。
　だいたい満州族・清の漢民族支配は英国のビルマ支配に似る。英国がビルマ文化を破壊したのと同じに清も漢民族の文化、風俗を否定して満州族の辮髪と服装を強いた。チャイナドレスは実は満州族の女性服だ。
　清は満州人が支那人と結婚することを禁じた。米国が白人と黒人の結婚を罪としたのと同じだ。もちろん紫禁城の後宮に漢民族の女は入れなかった。
　対照的に清は同じく支配したチベットやウイグルに辮髪も満州服も強制しなかった。後宮にはモンゴル女性を入れ、ウイグルからも香妃（シャンヒー）が乾隆帝の側室に上がっている。
　こう見れば漢民族は紛れもない清王朝の植民地の民だった。だから清か倒れたからと言って、植民地の民が宗主国の故郷の地、満州に何の権利を持つわけもない。英国の植民地インドが宗主国・英国の国土に何らの権利も持たないのと同じだ。
　つまり満州国が成立したことに漢民族が「偽」のどうのと嘴を挟んでくる理由も権利もない。
　しかしここで会った漢民族の男は「漢民族は関わった国々を包み込み、同化してきた」「満州もモンゴルもウイグルもチベットもみな支那に包み込まれ同化した。だからチベット問題は優れて国内問題だ」と強弁する。どこまで本気か知らないが、「日本もチベットも同じ。そのうち日本も包み込む」とも。
　彼はシノ・スイスホテルとかがあるように「シナ」が国名として定着していることを認めたうえで「ただ日本人には支那といわれたくない。見下された気分になるからだ」と。見下されるようなことばかりしているからとは考えない。
　こんな国と日本人はどう付き合ってきたか。荻生徂徠は大川端から品川に引っ越して「徳の国に近づけた」と感激した。宮崎滔天も支那に初めていって感極まって泣いたと『三十三年之夢』にある。彼も徂徠と同じに支那を立派な国と思い込み、それでペテン師とも気づかずに孫文を支援した。
　日本をソ連に売った朝日新聞の尾崎秀実も船旅で見た中国大陸の大きさに圧倒され「あの感動は一生のうち最大のものだった」と死刑囚の監房から家族に書き送っている。
　吉川幸次郎は北京では長袍（チャンパオ）を着て支那人になり切っていたという。ただ長袍は満州服で、彼がなりたかった漢民族はその満州服が大嫌いだった。それで孫文は日本の鉄道員の制服に倣った人民服を漢民族の服装にしようとしたわけで、吉川はその辺の民族の機微がまったく分からなかった。
　これが桑原武夫の「北京に蝿一匹いない」発言や大江健三郎の「中国に住みたい」発言につながる。学者文化人の底の浅さゆえの思い込みの深さといえる。
　ただ、思い込みの輪は学者だけでなくもっとひろい。例えば松下幸之助は鄧小平との約束で支那に四十もの工場をつくり、技術移転をしたうえで家電生産ラインをノウハウつきで支那政府に寄贈している。日本が過去、支那から多く薫陶を受けたお礼だという。
　ヤオハンの和田一夫もまた支那に入れ込んで売り場面積最大級の店を上海の浦東に出した。得意の絶頂期には李鵬と感激の対面もしたが、その李鵬は和田に会った後、オーストラリアに行って「日本は二〇一五年までに溶けてなくなる」と公式発言している。和田のヤオハンはその前に溶けてなくなり、支那に開いた店のすべてはいま支那人に乗っ取られた。
　そして朝日新聞の秋岡家栄の名を出すまでもなく北京の特派員の多くもまた吉川幸次郎と同じようにのめり込んだ視線で今も「支那は素敵」と報道を続けている。
　日本人がなかなか支那の本質を読み切れないのはこういう手合いがそこら中で幅を利かしているから、ということになるか。
　では米国報道はまともかというと、これも危うい。歴史に出てくる米国通の、例えば内村鑑三はほとんど米国版の吉川幸次郎でしかない。「米国は民主主義の聖地で人々は正義に生きる」と崇め、ではそんな立派な国がなぜ奴隷を使い、苦力を輸入し、フィリピンでは虐殺をほしいままにしたのかは触れない。米国通を自称する外交官上がりの評論家も特派員も米国版の秋岡家栄と変わるところがない。
　そんな輩に書かせるから米国の実像はみえてこない。同じようにロシア通を任ずるものもせいぜいロシア版吉川幸次郎かロシア版桑原武夫しかいない。
　それでどこにも通でない日本人が支那や米国を書いて見るとどうなるかがこのシリーズになる。日ごろのイメージと少しでも違って見えれば幸せというものだ。
　　　　　二〇〇九年夏
　　　　　　　　　　　　　　　高山正之

お伝が百人斬りの嘘を暴く

 上野国利根郡下牧村というと今の群馬県みなかみ町になる。
　高橋お伝はここの生まれだ。後年、毒婦の異名を取る彼女だが、それは戯作者仮名垣魯文の脚色で、実際は色白の美人で士族の子女を思わせる品も備えていたという。
　お伝は慶応二年、相愛の波之助と夫婦になるが、幸せは長続きしなかった。
　波之助がハンセン氏病を発病し、村にいるもならず、上京して彼女は夫の薬代を稼ぐために身を粉にして働いた。
　横浜に名医ヘボンがいると聞けば横浜に移り住みもした。そのころの彼女は家に帰ると夫の包帯を換え、膿をもった患部を口で吸って看病した。
　そんなお伝の一途さと美貌に男たちが群がってくる。後に彼女に殺されることになる後藤吉蔵もその一人で、彼は邪魔な亭主を消すべく人を介して“妙薬”を彼女に売りつける。
　波之助はその薬を飲んで狂い死にする。明治五年お伝二十二歳の夏だった。
　その後のお伝は言い寄る男に弄ばれながらも相場を張るなど必死に自立を試みた。
　その生き様を示す一つが全身、それこそ局所に至るまでの入れ墨で、今も標本にされ東大に保存されている。
　必死の人生も最後は夫の仇の吉蔵を殺し、判決は死罪。明治十二年一月、打ち首にされた。
　首切り役は八代目山田浅右衛門。彼の家系は江戸時代以来の介錯人で明治になってからは「打ち首一回につき二円」の出来高制になったと記録にある。
　お伝の最期の様子をとどめた記録も残っている。処刑場は市ヶ谷監獄の裏手杉林の中。「黒塀に囲まれた五十坪ほどの空き地」の中央に筵が敷かれる。
　後ろ手に縛られたお伝は「三人の押さえ役」に付き添われて筵に座る。
　押さえ役二人が左右からお伝の肩口に手を置き上体を前に押し出す。
　後ろに控えた三人目がお伝の両足の親指を握り、浅右衛門が刀を上段に構えるとタイミングを見計らって親指を強く引く。
　打ち首になる罪人はだいたい亀の子のように首がすくんでいる。しかし前屈みにされた上で足の親指を引っ張られると倒れまいと首が前に伸びる。
　その瞬間に浅右衛門の刀が振り下ろされるわけだ。
　落ちた首は筵敷きの前に掘られた穴に落ち、押さえ役が押していた上体も前に倒れる。
　「心臓の鼓動に合わせて頚動脈からぴゅーと三十センチほど噴き出す。しかし四、五回目で血は飛ばなくなる」と八代目は書いている。
　この打ち首の場を土壇場ともいうが、お伝は文字通り土壇場で暴れ出し、八代目はやむを得ず刀を首に当てて押し切っている。
　ところでなぜ「押さえ役」が二人もいるのか。彼らが押さえていないと打ち首した後、重い頭がなくなった反動で、体が後ろにひっくり返るからだ。
　首からは血が勢いよく噴き出すから前も後も一面血の海になってしまう。
　赤穂四十七士は討ち入り後、お預けの上、切腹申しつけられるが、切腹のしきたりにはお尻の下に三方をあてがい、あらかじめ前傾の姿勢をとることになっている。
　これも介錯の後、上体が後ろにひっくり返らないための作法だったわけだ。
　毎日新聞の浅海一男が戦時中に書いた与太記事「百人斬り」はその後、朝日新聞の本多勝一が検証もしないでもっと憎々しげに脚色して紙面に載せた。
　両少尉の遺族がこの二つの新聞のいい加減さを訴えたが、最高裁は朝日が提出した望月五三郎の『私の支那事変』にぞっこん惚れ込んで「百人斬り」はあったと判示してしまった。
　野田少尉の下にいたという望月某は、実は本多勝一並みにいい加減で、飛んで胴体ががっくり前に倒れる。首から噴き出した血の勢いで小石がころころと動いている。目をそむけたい気持ちも少尉の手前じっとこらえる」と。
　ところがちょっと調べると望月某はその当時、野田少尉の部隊にはいなかった。
　 何より打ち首で「胴体ががっくり前に倒れ」ないことは前述した通り。小石ころころは創作が過ぎる。
　 朝日新聞はこんな見え透いた嘘でも今の最高裁の無能な判事なら騙せると読み、そして読み通りになった。。
　最高裁の上に再考裁が要る。
　　　　　 （二〇〇七年八月三十日号）

キリスト教の危険な本質

　二昔ほど前に箕面忠魂碑裁判というのがあった。
　「市が忠魂碑の慰霊祭を行ったのは憲法の禁ずる宗教活動になる」と「その筋の市民」が訴え出て、大阪地裁の古崎判事がそうだ忠魂碑は神社と同じだ、だから違憲だと判決した。
　この慰霊祭は仏式でやったり神式でやったり、適当だった。判決通りだったら神社でお坊さんが経を読んだことになる。
　噴飯ものの判決なのだが、そのころから日本嫌いの朝日新聞は「名判決」と大喜びした。敬虔なクリスチャンという古崎判事を持ち上げて神道を目一杯腐したうえにこのクリスチャン判事に「日本人は宗教にだらしない」と批判させた。
　キリスト教はいいが、神道はそれだけでダメみたいな言い方だった。
　実際、そういうヘンな考え方が蔓延していて、例えば切支丹の「二十六聖人」はいま長崎市の公園に祀られて市と耶蘇教の団体が共同で管理しているが、別に公費だの宗教施設だので問題になったことはない。
　神道はオウム並の邪教というわけだが、秀吉や家康の時代にはキリスト教こそ邪教と思われていた。
　それで秀吉は天正十五年（一五八七年）、ポルトガル人宣教師コエリヨらに「日本は神の国だから布教を禁止する。寺院の破壊も禁止する。宣教師は二十日以内に国外退去せよ」という伴天連追放令を出した。
　日本の教科書ではこれから信徒への弾圧が始められ、踏み絵が登場し、転ばなければみな傑にされた風に書いている。
　実際はこの追放令が出た後も宣教師どもは居座ってむしろ派手に布教活動をした。前述の二十六聖人が処刑されたのは追放令から十年も先のことになる。
　宣教師だけでなく信徒も傍若無人で、例えば高山右近は明石に封じられると城下の神社仏閣を片端から壊して教会にした。
　秀吉のいう「寺院打ち壊しの禁止」はそういう偏狭なキリスト教徒の横暴を禁じたものだ。日本では弁天様も仏様も天満宮もみんな仲良くやっていると。
　ちなみに右近はその後も偏狭なキリスト教徒として生き続け、家康の切支丹禁令（一六一四年）のあとやっと日本を出てマニラを終の棲家にしている。
　秀吉らがキリスト教をそこまで嫌ったのは、彼らの狭量さの延長にある非人道性だった。同じ神を信じていない者は「人に非ず」で、だから奴隷にしても構わない、と主張する。
　追放令の発端は有馬晴信などキリシタン大名が火薬の素の硝石を得るために、捕えた敵軍の将兵や領地の女を海外に売っていた、一説には女五十人で硝石一樽だったというが、それを秀吉が知ったことからだった。
　怒った彼はコエリヨを呼び、海外に売った日本人を連れ戻せと命じたが、コエリヨは応じない。
　それで伴天連追放令を出したという順になる。
　この顛末は徳富蘇峰の『近世日本国民史』に詳しいが、追放令が出る五年前に日本を出た天正遣欧少年使節の一行も欧州の地で「み目よき日本の娘たちが秘所丸出しでつながれ、弄ばれ、売られていく」のを目撃している。
　徳川時代、日本に出入りしたオランダ人を「日本人は憎悪した」とスウェーデン人植物学者ツュンベリは報告している。なぜなら「彼らが奴隷売買をし、同じ人間を不当に扱っているからだ」と。
　ツュンベリはまた日本の家族にも着目し、「朝鮮では夫人は家に閉じ込められ奴隷状態にあるが、日本の夫人は夫と同席したり、自由に外出したりしていた」とも書いている。女は原罪を背負うというキリスト教国家とも違う。
　いま日本のキリスト教信者の数は人口の一パーセントにも満たない。邪教性が一向に改まっていないためだろう。
　ヒンズーが天下のインドでは、それでもキリスト教徒はニパーセント強の二千万人ほどいる。ヒンズー教の中では夢も希望もない不可触カーストからの改宗組が大半を占める。
　韓国では布教二百年で国民の三十八パーセントがキリスト教徒になった。
　「攻撃的性格が合っている」と産経新聞の黒田勝弘記者は分析するが、ここも儒教の身分差別が厳しく、人間以下の常人（小作人）と奴婢が三十パーセントもいた。
　インドと同じに現実からの逃避のための改宗と見ると数字はぴったり合う。
　邪教でも救われる国もある。
　　　　　 （二〇〇七年十月十八日号）

世界に侵食する漢民族

　漢民族、つまり支那人の王朝の最後は朱元璋こと洪武帝の建てた明になる。
　彼は貧農の出で猜疑心が強くやたら残忍で、ライバルをでっち上げの罪で殺したり、闇討ちしたり。
　天下を掌握したあとも殺戮を止めなかった。
　まるで毛沢東みたいといわれる所以だ。とくに知識人を毛嫌いして「文字の獄」をやったが、これも毛沢東の「延安整風」とそっくり同じだ。
　初代がこんな調子だから、明王朝は恐怖と残酷刑で織り上げられ、民は首をすくめてその日を生きた。
　あるいは毛沢東の文革が三百年続いたと言った方が分かりやすいか。
　その終末は案外あっさりしたものだった。
　国は乱れ、気づいたときは北から満州族の清か流れ込んできて、支那はその植民地にされた。
　清はみっともない辮髪を植民地の民に強いたほかは残忍さもほどほどで文化も栄えた。
　それでも支那人は異民族支配に生きる今より、残虐だが同じ民族が支配した明の時代を懐かしく思った。
　ロシア人が残忍なスターリンと雰囲気が似たプーチンを支持する、あるいは「殴られる妻」がそれでも暴力亭主の許に戻っていくのと似た心境なのだろう。
　彼らはその心情を「反清復明」とか「滅満興漢」とか言った。いずれも満州人の清を倒し、漢民族の明を再興するという意味だ。
　機会は間もなくやってきた。英国が阿片禁輸を恨んで清と戦争になった。
　清が倒されれば明を再興できる。支那人は英国に擦り寄り、協力した。
　結果は英国が勝ち、香港を取り、阿片貿易は再開された。ただ、それだけのことだった。英国は清を倒す意図はなく、戦争が終ると逆に清との友好を謳って英国に協力した漢民族を清の官憲に引き渡し始めた。
　清は彼らを反逆罪の廉で残忍に処刑した。罪の軽い者も顔に売国を意味する熔印を押された。
　彼らは恐れをなして国外に逃げ出した。いわゆる華僑は宋の時代から記録にあるが、阿片戦争後の流出が最も大きなものだった。
　流出先は東南アジアが主で一部は米国に渡った。彼らはそれでも反清復明の大義は忘れなかった。
　いつの日か明の再興を誓って彼らは洪門と称した。洪は洪武帝に因んだ。ただ生きるために犯罪にも手を出す。それで「洪」では畏れ多い、代わりに同じ音の「紅」を使った。犯罪組織「紅幇（ホンパン）」の名の起こりだ。
　彼らは大義のため仕事も犯罪も懸命にやった。
　シンガポールには「リー王朝」が建てられたが、開祖のリー・クアンユーはベトナムから流れてきた客家で本名を李光耀という。
　タイの悪徳政治家タクシンも客家の邱春盛の曾孫になる。華人に詳しい樋泉克夫の『華僑烈々』によればそのタクシンの右腕ソムキット副首相は潮州系で支那名は曾漢光という。タイ最大の企業「ＣＰ」代表も謝国民という。
　インドネシアでスハルトを支えた大物スドノ・サリムは福建出身の林紹良。名前はイスラムっぽい有力政治家ボブ・ハサンも同じ出身で支那名は鄭建盛。
　フィリピンの政財界を仕切るコファンコ家も元は福建出身の華僑だ。一族からアキノ大統領が出ている。
　東南アジア各国のほとんどを握ったころ、彼らは大義の「漢民族国家再興」を祖国に訴えかけた。
　しかし蒋介石もその後を継いだ毛沢東も滅満興漢の言葉を嫌った。なぜなら満州王朝は消滅し、今はチベットもウイグルも含めた満州王朝の版図を漢民族が接収している。今さら「興漢」を言い出したら漢民族は昔の万里の長城の中に戻ることになる。二度と興漢と言うな。お前らはカネ稼ぎに没頭していろと北京は叱った。
　かくて大義を失った彼らは世界で荒稼ぎと悪事に専念し始めた。
　日本は東南アジアの国々と違って過去、華僑の跳梁を許さなかった。せいぜい中華料理屋を開くぐらいだったが、彼らは思わぬ分野から上陸してきた。
　大学などの教職で、法務省統計ではいま二千五百七人の支那人が教鞭を執る。
　中には「ガス田は日本が主権を放棄しろ」と朝日新聞に書く華僑出身の福井県立大名誉教授もいる。統計では日本で支那の利権を叫ぶ教授は十年で倍に増えている。
　これってかなりコワい話ではないか。
　　　　　（二〇〇八年二月七日号）

朝日は殺人鬼を野に放った

　新聞は人に情報を売って商売しているという点で競馬の予想屋と似ている。
　しかし朝日新聞みたいに売る情報がみな外れても、ご免でもない。その辺のいい加減さが予想屋とは大違いだと予想屋は言う。
　早い話、インフルエンザの特効薬タミフルだ。この新聞は「飲めば走り出してベランダから飛び降りる」と大騒ぎした。
　高熱にうかされる。いわゆる熱譫妄はそこらの予想屋だって知っている。
　タミフルを飲まない子供も同じような症状を見せると反論されて、後は知らん振り。とぼけ通す。
　茨城・神栖町の井戸水から砒素が検出されると「旧日本軍が遺棄した毒ガス弾が原因」と支那人みたいに騒ぎまくった。
　で、井戸の底を掘ったら平成の御世の缶コーヒーが産廃と一緒に出てきた。
　予想は外れたのに旧日本車に着せた濡れ衣は放ったらかしのままだ。
　首都圏で若い女性が何人も強姦され殺された。
　犯人として小野悦男が捕まると朝日は「代用監獄で取調べられ自白を強いられた。彼は無罪だ」と騒いだ。
　裁判官は司法修習生のとき朝日新聞社で研修する。その当時の刷り込みのせいで竪山真一裁判長は朝日の言うままに小野を無罪にした。
　朝日新聞はこんな冤罪騒ぎを生んだのはマスコミにも責任があると利いた風な記事を載せて小野に謝罪した。
　娑婆に戻った彼は五歳の幼稚園児を強姦して首を絞めた。彼女は仮死状態で見つかった。知り合いの四十一歳の女性を殺して首と陰部を切り取り、証拠隠滅のため死体を焼いた。朝日は見込み違いで殺人鬼を野に放ち、二人の新たな犠牲者を出したが、被害者に謝罪もしなければ責任もとらなかった。
　朝日は原子力というだけで端から着外と決め込む。原発など出走も認めない。
　今は主筆の船橋洋一はプルサーマルをやめちまえと叱った。日本がプルトニウムを持つと支那が嫌がる。だからやめろと。
　昨年の中越沖地震では原発からの漏水で日本海が放射能汚染された、建屋もひびが入って崩壊寸前だと風評を煽り立てた。
　しかしＩＡＥＡが汚染はなかった、建屋は十分安全性が確保されていたと朝日の記事を全否定した。
　そんな嘘まで書き並べて原発を目の敵にしていたくせにガソリンが高騰すると社説で「幸い日本は原子力などエネルギー多様化を進めていたから大丈夫だ」とぬけぬけと書く。
　朝日は「自由」「人権」とつけばどんな駄馬でも二重丸をつけた。住基ネットは犯罪者の人権を損なうと大騒ぎして最高裁から馬鹿も休み休み言えと諭された。
　立ち入り禁止とある自衛隊官舎に嫌がらせのビラをまいた活動家は表現の自由の戦士だとやって、これまた最高裁に再度たしなめられた。
　自分の主張がこう頻繁に最高裁に否定されたら己の不明を普通は考える。
　在日など外国人の指紋押捺を止めさせたのは朝日の執念だった。
　おかげで未検挙犯罪が急増したが、ここにきてテロ対策として入国外国人の顔写真と指紋取りがなんとか復活できた。
　朝日はいきり立って林伯耀なる無名の在日支那人に「日本の役に立ちたいのに裏切られ、傷ついた」と書かせた。
　支那人を親切に留学させてやったのに殺しでお返しされる日本人の方がどんなに裏切られ傷ついているか、こっちこそ知ってほしい。
　ちなみに朝日の反対を押し切って復活した入国者の指紋取りの結果、初日だけで支那人犯罪者など五人を、一か月の累計で九十五人を摘発したと法務省が発表している。
　単純計算で年間千入超の犯罪者が大手を振って日本にきていたわけだ。
　朝日がいかに外国人犯罪者に慕われているか、よく分かる数字だ。
　競馬の予想屋はその馬の強さを占うのに血統を重視する。種牝馬はスピードシンボリだとか。ところが朝日はこの血統を妙に隠したがる。
　いい例がある。野村設券のＭ＆Ａ担当社員が「知り合いの兄弟」と図ってやったインサイダー取引だ。
　朝日は「野村は社員にどんな教育をしていたのか」と社説で怒ってみせるが、日本人社員はそんな悪さはしない。係わったのは主犯も知り合いもみな支那人だ。
　肝心のファクトを教えないのでは新聞はともかく予想屋は務まらない。
　　　　　（二〇〇八年五月十五日号）

アフガニスタンが陥ちない理由

　ジャララバードの名を世界が知ったのは「バラヒサールの悲劇」の終着点として、だった。
　この悲劇は十九世紀半ばに起きた。当時、英国が南から、ロシアが北からアフガンに侵攻していた。目的はアフガン領有だった。
　なぜならここはアジアの要だからだ。ロシア、イラン、インド、支那のすべてと国境を接し、ここを取ったものがこれらの国の死活を握ることになるからだ。
　英露の争いは速度に優った英国が勝ちを制し、カブール郊外のバラヒサール宮殿に入城した。
　英国は新しい領土を入手するといつもそうしたように軍人は家族を呼び寄せ、商人や投機家がそれを追いかけた。カブールも同じで一年後にはその数が一万六千人にも達した。
　しかしアフガンの民はそれを許さなかった。
　彼らの特性はその残忍さだとジヤック・ヒギンズが「高い空」だったかに書いていたが、それは小説以上の真実だった。
　実際、英軍がここに入るほんの百年前、彼らはその残忍さでイランのサファビ朝を滅ぼしている。
　とくに南部の城塞都市バムでは赤ん坊から老人まで生き残ったすべての住民の目玉を抉って「盲目の街」にした史実はよく知られる。
　彼らはまた超のつく排他性をもち、異民族の立ち入りを許さなかった。アフガンの脊梁山脈ヒンヅークシュ（インド人殺し）の名は伊達ではなかった。
　かくていま風に言えばバラヒサールヘのテロが間断なく展開された。
　英側は折れ、アフガン族長のアクバルに撤退を申し出た。アクバルは金貨と兵器の引き渡しを条件に、ハイバル峠まで安全に護送すると約束した。
　旅立ちは一八四二年一月六日だった。英軍は騎兵連隊を先頭に軍人の妻子や一般人を載せた馬車を連ねて要塞を出た。殿をインド兵が固めた。
　しかし約束の護衛は姿を見せず、代りに狙撃兵の銃弾が彼らを見舞った。
　雪中の荒野で二日目の朝を迎えたときインド兵の多くは凍死し、生き残った者も凍傷で銃の引き金を引ける指を失っていた。
　三日目の朝、アクバルが現れ、手違いを詫び、改めて護衛を手配するからと暫しの平穏を与えた。
　しかしそれは行く手の渓谷で待ち伏せするための時間稼ぎで、英軍部隊の大方はその罠に嵌って殺された。
　一週間の後ジャララバードの英駐屯地に瀕死の白人がたどりついた。たった一人の生存者、医師ウィリアム・ブライドンで前述の悲惨な旅路の詳細はすべて彼の証言と日記による。「ワトソン君」のモデルになった人だ。
　英国は報復を図る。寒さに弱いインド兵に代わってネパールからグルカを探し出し養成し、実に半世紀後に報復戦を実施した。
　しかし占領後の状況は同じ。結局、英国はアフガンを放棄した。
　英国のあとソ連が乗り出したが、結果はソ連崩壊まで傷口を広げた。
　今は米国が制圧を試みているが、見込みはない。
　よそ者が追われたあとジャララバードからハイバル峠にかけて高い塀の家が建ち並び始めた。阿片からヘロインを精製していることは塀を越えて漂ってくる悪臭で察知できる。
　国連スタッフが阿片から別の農作物への転換を促しにきたが、間もなく死体で発見された。
　国境なき医師団も用がすめば誘拐して身代金を取る材料にした。カンダハルにほど近いチャマン峠で実際にあった話だ。
　各国のＮＧＯも必要なかぎりは大事にされた。ただで水利や濯漑をやってくれるのだから。
　しかしそれが終わればアフガンにとって目障りなよそ者にすぎない。強い排他性が作用し始める。
　ゲリラ仲間で、かつては共闘したハザラ族でさえ異質のモンゴロイドでシーア派という理由で捕まえれば生皮を剥いで殺している。
　善意に満ちた中村医師の率いるグループが医療と井戸掘りに力を貸してくれた。
　ただ、善意がアフガン人を救うみたいな言い方が彼らには不愉快で、おまけに日本人はハザラに似ている。
　それでも彼らはすぐに手を出さず、事前に数回の警告を出した。大使館筋によれば少なくとも二度は銃撃を伴う威嚇もあった。
　中村医師がそれも無視したので彼らは青年を血祭りに上げた。現場が彼らの排他性を象徴するジャララバードだったことは偶然ではない。
　善意は万能とは朝日新聞が勝手に作った伝説だ。
　　　　　（二〇〇八年九月十一日号）

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