世界史を動かした思想家たちの格闘

世界史と思想をクロスオーバーさせるという観点は興味深いと思いました。

世界史を動かした思想家たちの格闘

 著者は『今回の講座は、「思想や哲学」が世界史のなかでどのように生まれ、どのような役割を果たしてきたのか考えてみよう、というのが趣旨です。』と本書の目的を記しています。
 興味深い視点だと思います。

 茂木誠さんの「世界史を動かした思想家たちの格闘」を紹介するために、以下に目次と「はじめに」をコピペさせていただきます。
 興味が湧いて、他も読んでみたいと思ったら、本書を手にしていただければと思います。

世界史を動かした思想家たちの格闘 茂木誠




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目次

 はじめに

 【第1講】 法と正義 13
 1アイヒマンは有罪か?……………14
法と正義が矛盾した場合、どうすべきか?ナチス戦犯裁判の例から考えます。

 2「人権」の本当の意味…………26
「人権」思想がどこから生まれたのか?自然法思想から説明します。

 3暴走する「世界最初の民主主義」…………32
古代ギリシアの民主主義の実態と、これを批判したプラトンの思想を紹介します。

 4教会と戦う王たち…………56
教会権力と国王権力との闘いから、国家主権の概念が生まれたことを説明します。

 5王権を縛る最強の法コモン・ロー…………62
今日まで続く議会制度が、なぜ中世のイギリスで生まれたのかを考えます。

 6フランス啓蒙思想…………81
フランス革命を準備したヴォルテールやモンテスキューの思想を紹介します。

 7ルソーが生み出したディストピア…………86
フランス革命が、なぜ恐怖政治に転落したのか? ルソーの思想から読み解きます。

[第2講] 戦争と平和 111
 1古代ギリシアーローマの戦争観…………112
「力が正義」「負ければ奴隷」という古代人のドライな戦争観を紹介します。

 2「正戦」思想の時代 ―― 十字軍から大航海時代まで…………122
隣人愛を説くキリスト教が、戦争をどのように変えたのかを考えます。

 3「正戦」論の否定 ―― マキァヴェリとグロティウス…………130
近代初頭の2人の偉大な思想家を紹介し、戦争観の転換を考えます。

 4クラウゼヴィッツの現実とカントの夢…………141
クラウゼヴィッツの戦争論とカントの永久平和論、国際連盟の理想と現実を考えます。

 5アメリカはなぜ「正戦」を続けるのか?……………151
「アメリカの正義」が、世界に何をもたらしたのかを検証します。

【第3講】 理性と感情 173
 1知性と理性…………174
自然科学の基礎となる「理性」とは何か?古代ギリシアの思想を紹介します。

 2デカルトの衝撃…………193
判断基準を「神」から「人間の理性」に置き換えたデカルトの思想を紹介します。

 3道徳はどこからくるか?プラトン哲学…………204
プラトンの道徳論と、その基礎にあるイデア論を解説します。

 4魂の不死 ―― 古代インド哲学…………217
西欧哲学にも大きなインパクトを与えた古代インドのウパニシャッド哲学を紹介します。

【第4講】「わたし」と世界 225
 1「わたし」とはどこまでか?……………226
「わたし」とは何か?「精神」と「肉体」、「意識」と「心」の境界線をさぐっていきます。

 2二元論を超えたカント哲学…………233
「経験論」と「合理論」を乗り越えようとしたカントの思想を紹介します。

 3キルケゴールの「単独者」…………249
形骸化したキリスト教会に絶望し、真の信仰を求めた思想家の苦闘を描きます。

 4ショーペンハウアーの「盲目的意志」…………265
インド哲学に触発され、西洋文明そのものを否定した特異な思想家を紹介します。

 5ニーチェの「永劫回帰」…………270
キリスト教に代わる新たな道徳を求め続けて敗北した悲劇の思想家を描きます。

 おわりに 283

 文庫版へのあとがき 286
  


はじめに

 みなさん、こんにちは。

 4日問の特別講義を受講していただき、ありがとうございます。

 私は、大学受験予備校で「世界史」を教えています。歴史学とは、「いつ、どこで、だれが、何をした」、という事実関係を明確にする学問です。「どうして」という動機の部分については、それほど深く追求しません。

 たとえば「十字軍がイスラム世界に遠征した」のは事実です。しかし、その動機についてはさまざまな説明が可能です。
「ローマ教皇が、ビザンツ皇帝を援助することで、政治的優位を示そうとした」
「キリストによる最後の審判が近い、という終末思想に刺激された武装巡礼である」
「三圃制の普及と大開墾による人口急増を背景に、余剰人口のはけ口となった」
 などなど。おそらく複合的な要因なのでしょう。

 このような歴史的事実の背景まで踏み込んで説明するには、政治学、宗教学、経済学、地理学、あるいは国際政治学の知識が必要になります。しかし膨大な知識を扱わなければならない「世界史」講義では、あまり踏み込んだ説明はできません。高校の科目でいえば「政治経済」「倫理社会」「地理」の分野とクロスオーバーすることになります。

 今回の講座は、「思想や哲学」が世界史のなかでどのように生まれ、どのような役割を果たしてきたのか考えてみよう、というのが趣旨です。哲学の知識、世界史の知識がほとんどゼロの人でもついていけるように、毎回テーマを決めて、それについて思想家たちがどのような議論をしたのかを見ていきます。したがって、同じ思想家が何回も出てくる一方、まったく取り上げない思想家もいます。古代から現代までの哲学史を網羅的に扱うものではありません。

 1日目は「法と正義」です。法とは何か。正義とは何か。法と正義が矛盾した場合、どうしたらいいのか。人間は権力をどのようにコントロールしてきたか。そういうお話です。

 2日目は「戦争と平和」です。戦争の原因をめぐる2つの大きな対立軸を示し、戦争抑止の知恵としての国際法や、集団安全保障体制(国際連合)の成立まで説明します。

 3日目は「理性と感情」です。プラトンとデカルトという西洋哲学のスーパースターが登場します。(興味のある方は、ここから読み始めてもかまいません)

 4日目は「『わたし』と世界」です。そもそも人間の意識とは何か? という究極の問いです。哲学と宗教、心理学の交差領域で、カント、キルケゴール、ニーチェが登場します。

 少人数のゼミ形式ですので、講義中でもどんどん質問、ツッコミを入れてください。みなさんとの対話で、議論が深まることを楽しみにしています。

 それでは、はじめましょう。

 




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