熔ける

別世界のような出来事であり、驚くことも多かった・・・。

熔ける

 井川さんの事件は当時のニュースで知ったのだと思いますが、そんなっことが有ったんだ・・・という程度で、井川さんのお名前も記憶していませんでした。
 最近井川さんのXのポストや動画を目にすることがあり、その中で本書を知り、読んでみることにしました。


 私自分の日常とはかけ離れた井川さんの半生・暮らしぶりに感心させられ、また経験したことのない訊問・服役の様子に興味をひかれながら拝読しました。

 井川意高さんの「熔ける」を紹介するために、以下に目次などをコピペさせていただきます。
 興味が湧いて、他も読んでみたいと思ったら、本書を手にしていただければと思います。

熔ける 井川意高



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目次

 序章 灼熱……………4

 第一章 極限……………13
「マリーナ・ベイ・サンズ」で開いた地獄の釜の蓋 /  マカオからシンガポールヘの魔の転戦 /  「ジャンケット」という便利なシステム /  ロールスロイスの迎車とVIPルームヘの招待 /  書類へのサインだけで得られた利子ゼロの借金1億円 /  地獄と天国を行き来する「マジック・モーメント」 /  神のみぞ知るギャンブルの「揺らぎの法則」

 第二章 追憶……………35
1200坪の屋敷で暮らした少年時代 /  第1次オイルショックという運命のいたずら /  好きになれなかった故郷から東京へ脱出 /  都会っ子と田舎っぺのギャップ /  ゴルフクラブを振り上げる父のスパルタ鬼教育 /  瞬間湯沸かし器の父から喰らった往復ビンタ /  インベーダーゲームと映画研究会 /  筑駒時代に生まれた私のプラグマティズム /  筑波大学附属駒場高校から東京大学へ /  東大・五月祭で出会った元妻との初恋 /  BMW635を乗り回した東大生時代 /  反面教師として突き放していた父親像 /  「井川兄弟はいつも本当に仲がいいね」 /  「創業家の会社は3代目までしかもたない」

 第三章 邁進……………67
50万坪の敷地と1台300億円の巨大設備 /  「1メートルの落下が『一命取る』」 /  世界最大規模の工場でつかんだ現場感覚 /  借金900億円の赤字子会社に放りこまれた27歳 /  「銀行は雨の日になると傘を取りあげてしまう」 /  都市銀行副頭取との丁々発止 /  倒産企業にトラックで乗りこむ /  少子化時代に紙オムツ事業が生き残る道 /  競合他社との戦いに負け続ける敗北主義 /  大正製薬と永谷園のリーダーから学んだ経営哲学 /  夢の中でもユニーチャーム社長と客の奪い合い /  浪花節と言い訳はビジネスマンには必要ない /  サービス残業を「闇残業」とネーミング改革

 第四章 君臨……………99
王子製紙による日本初の敵対的TOB /  ホワイトナイトの登場 /  井川家3代目の社長に任命された42歳の春 /  社長就任およそ1年後に起きたリーマン・ショックの悪夢 /  危機を好機に変えるための構造転換 /  経営者として心がけた「5W1H」ならぬ「5W2H」 /  美辞麗句の会議は百害あって一利なし /  父と一致していた仕事の必要条件と十分条件 / 小隊長1人と隊員5人の小単位ユニット /  概念論と抽象論、根性論と精神論の弊害 / 佐光正義社長による大王製紙の舵取り

 第五章 疼き……………125
大学1年生の新歓コンパで急性アルコール中毒に /  酔いつぶれた息子を背負ってくれた父・高雄 /  名だたる経営者たちとの華麗なる交遊 /  新橋の名店「京味」に小学生のころから通い詰める /  祇園の街で舞妓・芸妓との「箸紙とり」と野球拳 /  10代の宮沢りえさんが発した衝撃の一言 /  東尾修さんと二谷友里恵さんとのテキーラ一気飲み対決 /  噂になった女性有名人との本当の仲 /  ほしのあきさんにどんと贈った高級ティッシュ /  女優の岩佐真悠子さんと元モー娘。の紺野あさ美さん /  国民的女性アイドルグループのメンバー2人に夜の街で遭遇 /  歌舞伎役者・市川海老蔵さんとの出会い /  ジャニーズアイドルたちの意外な素顔 /  寝耳に水の関東連合との「親密交際報道」 /  ホリエモンから東京拘置所に届いた真心の座布団

 第六章 放熱……………161
小学4年生から始めた1000点100円の家族麻雀 /  昼休みにクラスメイトと雀卓を囲んだ筑駒中学時代 /  オーストラリア・ゴールドコーストのカジノでデビュー /  定石と流れのブラックジャック、偶然性のバカラ /  100万円が2000万円に化けた瞬間 /  ラスベガスで失ったアブク銭のような4000万円 /  「ウィン・マカオ」に足を踏み入れた日 /  ジャンケットが誘うVIPルームの罠 /  コンシェルジュとカネ貸しを兼ねるジャンケット /  大勝負の前に習慣づけていた斎戒沐浴 /  アメックスのブラックカードがもつ威力 /  ギャンブラーの魔窟=質屋 /  ロレックス10個でつくった軍資金1350万円 /  3000万円超の大勝ちで質屋のロレックスを回収 /  無用の長物となったアメックスのチタンカード

 第七章 熔解……………191
子会社7社からの資金調達が始まる /  総額106億8000万円の借り入れ金 /  「運転資金」と「余裕資金」の分水嶺 /  電話一本で振り込まれ続けた無担保の借金群 /  経営者としての本分を忘れてしまっていた私 /  父・高雄が事前に察知していた巨額借り入れ事件 /  カネの貸し借りは人間関係を破綻させる /  全日空ホテルと帝国ホテルを行き来した検察の取り調べ /  「エリエール レディスオープン」の直後に執行された逮捕状 /  「井川さん、あなたはホモには興味がありますか」 /  林間学校のごとく穏やかな拘置所生活 /  敢えて拒否した「取り調べの可視化」 /  「大物政治家への裏献金疑惑」に答える /  トイプードルの値段にまでこだわる検察の執念 /  106億8000万円の借り入れ金と保釈金3億円

 第八章 灰燼……………227
懲役4年の実刑判決 / ポーカーフェイスと直立不動の東京地裁 /  大物政治家からかかってきた一本の電話 /  ノンフィクション作家・佐野眞一氏によるデタラメな報道 /  「井川家のコンプレックス」なる妄想 /  『週刊現代』の張りこみ記者を一喝した深夜3時 /  ギャンブルに向いている人、向いていない入 /  アルコール依存症とギャンブル依存症 /  ギャンブルが好きでたまらなかった /  創業者・井川家から独立した大王製紙 /  「10人の味方をつくるよりも1人の敵をつくるな」

 終章 下獄……………262

 文庫特別書き下ろし 出所……………265
刑務所でいきなり喰らった「懲罰」という洗礼 /  「図書工場」で朝から晩まで本や雑誌に触れていた日々 /  緑色のレバーを食べさせられる地獄の食生活 /  喜連川刑務所で出会った経済犯と知能犯 /  「仮釈放式」のリハーサルに臨んだ出所カウントダウンの日 /  喜連川刑務所で最後に書いた感想文 /  シャバで初めて口にした焼き肉とシャンパン「クリスタル」 /  私か生まれた年に作られた至高のワイン DRC「グラン・エシェゾー」 /  「坊主麻雀」でホリエモン&サイバーエージェント藤田晋と対戦しよう /  朝日新聞「天声人語」によるカジノ法案反対論 /  カジノよりはるかに悪どいパチンコと競馬と宝くじ /  「ザラ場」とVIPルーム /  億単位の負けを外国人観光客から確実に取り立てるノウハウ /  「石橋を叩いて渡らない」人生

 解説 佐藤尊徳……………297  


序章 灼熱

 丁か半か。
 吉か凶か。

 そのとき私の目の前には、サラリーマンの平均生涯賃金のおよそ10人分にあたるチップが山積みされていた。総額20億円。
 10万シンガポールドル(日本円にして約780万円。2013年10月現在。以下同)と1万シンガポールドル(約78万円)のチップが何百枚と積まれる中、私はただひたすら飽き足りず、目の前のチップをどこまでも増やそうと目論んでいた。
 「まだまだ。もっとだ。もっと勝てるに決まっている」
 総額20億円はただの通過点であって、目標地点であろうはずがない。20億円を基点とし、私はさらなる頂の高みを見据えていた。
 「いったい今日は何月何日なのだろう。いつ食事を取ったのだろうか。酒は一滴も飲んでいないし、ミネラルウォーターすらいつ口にしたのか記憶がないな……」

 私がシンガポールにやってきてから、すでに2晩が経過していた。カジノのVIPルームで勝負を始めてから、あっという間に48時間が経とうとしていたのだ。時間の感覚などとっくに消失し、眠気も食欲もまったく感じられない。目の前に配られたカードをめくることだけに、全神経を研ぎ澄ませ、集中していた。
 いつ終わるとも知れぬバカラの攻防戦に没入する私は、現世にポッカリロを開けた無間地獄への入り口に、我が半身を突っこみかけていたのかもしれない。

 2011年5月、私はシンガポールの海辺に建つリソートホテル「マリーナ・ベイ・サンズ」のカジノで、ジリジリと焼け焦げるような濃密な時間を送っていた。限られた者だけが入ることを許されるVIPルームの入り口は、ギャンブラーにとっては地獄の釜の蓋にほかならなかったのだ。
 まもなく、その激しく燃え盛る炎の中に自らが堕ちていくとも知らずに ―― 。




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