私を通りすぎた政治家たち

佐々さんは、政治家をステーツマン(statesman  政治家)とポリティシャン(politician 政治屋)の観点から捉え解説しています。

私を通りすぎた政治家たち

 佐々さんが第六章で「これから期待できる政治家、安倍晋三」と書いた安倍総理が卑劣なテロによって暗殺され、その真相解明がなされようとしないことに怒りを覚えます。

 国のために仕事をしようとしないポリティシャン(politician 政治屋)が日本をダメにしているのだと痛感します。
 そうした場面では、有能な官僚が政治屋を御して真面な国政を維持してくれることに期待をするところですが、失われた30年を見ると、日本にも(財務)官僚を筆頭にしたDSのようなものが存在するように見えます。
 勤勉な国民が居て、有能な官僚と立派なステーツマン(statesman  政治家)が居てこそ、素晴らしい国になるのだと思いますが、日本はそうなっているのでしょうか?
 そうそう、佐々さんは、日本国民が差別主義者であるかのようにして貶めるビデオメッセージ(政府広報オンライン)を公表している岸田文雄をどう評価するんだろう?
 私は岸田文雄は日本国民の敵だと思っていますので、「第二章 国益を損なう政治家たち」の中に入れて欲しい。

 佐々淳行さんの「私を通りすぎた政治家たち」を紹介するために、以下に目次や目を留めた項目をコピペさせていただきます。
 興味が湧いて、他も読んでみたいと思ったら、本書を手にしていただければと思います。

私を通りすぎた政治家たち 佐々淳行

 


目次

 序章 私の政治家観の原点 7
私の政治的DNAを育んだ家庭環境 / 西南戦争に出陣した祖父・友房 / 内戦終結、死刑を免れる / 教育と言論活動に情熱を注ぐ / 熊本国権党の活躍 / 「模範的な清廉の国士」 / “赤化教師”として大学を追われた父・弘雄 / 将来を嘱望される学者から定職のない日々へ / 近衛文麿の有力なブレーンに / 青年将校から左翼まで来る梁山泊 / 和平派の将官たち / 「外側は赤いが切れば中身は白い」 / 夜間大空襲での活躍と言論人として敗戦の責任を / 政治家は国益公益優先でなくてはならない

 第一章 戦後、そして現代を築いた大物政治家たち 43
吉田茂氏との奇縁 / 「土曜会」で吉田氏を問い詰める / 「佐藤栄作のところへ行け」 / 香港領事の私と佐藤総理 / かつては骨太な役人もいた / 岸信介氏はステーツマンの一人 / タカ(中曽根首相)とハト(後藤田正晴)の狭間で四苦八苦? / 大平正芳は意外なタカ派宰相だった? / 当代の大きな政治家・石原慎太郎 / 羽田空港が拡張できた理由 / 首都圏三三〇○万人の安全と生命を守る意志 / オーウェルを愛した文人政治家・小渕恵三の早世は残念 / 「変人」と言われた小泉氏の実力 / 外交や国家危機管理についての見識

 第二章 国益を損なう政治家たち 81
優柔不断で無為無策な政治家たち / 責任の伴う決断ができないトップを戴く不幸 / 田中角栄は尊敬できない / 「きみは政治家を軽蔑しとるか」 / 政治家に判断させてはいけないこともある / 旧制高校生のままの栗原祐幸防衛庁長官は賢明だった / 在任中ろくなことをしてない三木武夫 / 「リクルート国会」は実は「戦時賠償国会」になるはずだった / 似非政治家の代表例、石井一 / 加藤紘一における人間の研究 / 私用を諌めると怒り出した加藤紘一 / 朝日新聞のスクープ / 好き嫌いによる恣意的な人事 / つまるところはポリティシャン / 国益に反する自民党リベラル / 河野洋平氏の認識錯誤が慰安婦問題を招いた / 国際派を自認する小沢一郎の驚くべき非常識 / 内閣五室長の爆発 / 竹下総理の人心収攬術 / 小沢一郎はトラブルメーカー /  短命で良かった宇野宗佑内閣

 第三章 憎めない政治家たち 143
面白かった「国会の暴れん坊」 / 加藤紘一を怒鳴りつけたハマコー / 笑いや救いのある人物 / 半世紀にわたる論敵 / ぶれない上田耕一郎・不破哲三兄弟 / アメリカ大統領の訪日を止めた活動家“安仁” / 「国会の止め男」大出俊議員(元陸軍少尉)を説得

 第四章 海外からの賓客、外国の大物たち 165
初めて担当した国際警備がソ連・ミコヤン副首相 / ガガーリン来日 / 外国賓客の最初の大警備・フォード大統領 / アメリカ式の「目立つ警備」を実践 / エリザペス女王警備でわかった米英の違い / 英国王室との不思議な縁 / 台湾に日本式機動隊を指南 / 中国の駐在武官を怒鳴りつけて訣別 / 公賓待遇で徐信元帥と会談 / 中国に機動隊の創設を指南 / “西ドイツの後藤田官房長官”の来日 / “雇い外国人”の誘いもあった / 長期戦となった在ペルー日本大使公邸占拠事件 / ソウルから来たキッシンジャー元米国務長官 / 戦後の日本政治・外交史に大きく関与した大物駐日大使たち / 血まみれになったライシャワー大使 / 米艦艇の寄港は非核三原則に抵触せず / マンスフィールド大使からの惜別の辞 / 大物なのに少しも威張らない人物 / 後藤田さんはアマコスト大使を毛嫌いしたけど / モンデールは「大物」だけど「大問題大使」だった / 歴史に残る石原・モンデール論争 / 「えひめ丸」事件を解決した親日柔道家のフォーリー大使 / ステーツマンだったベーカー大使 / キャロライン・ケネディ大使は大物になれるか?

 第五章 政治家にならなかった私と、同志たる思いを託した政治家たち 229
なぜ私は政治家にならなかったか? / “殿様”は意志確認をしなかった / 後藤田さんの後押し / 政界から四、五回は誘われたが / 惨めな一年生議員 / 情報を重視した国際派のステーツマン / 尊敬するステーツマン・福田一 / 冬柴鐵三は驚くべき存在 / 工作船への船体射撃を許可した扇千景 / 女性のほうが積極的だったハイジャック対策 / ステーツマンは顕著に減ってしまった

 第六章 将来を期待したい政治家たち 261
これから期待できる政治家、安倍晋三 / 秘密保全のできない日本は信頼されていなかった / まったく情報が入らなかった「アルジェリア人質事件」 / 剣と盾を併せ持つ国家中央情報局を / 安倍総理は危機管理の要諦を知悉していた / 財政改革の実行は命がけ / 「公」への奉仕という価値観をもつ政治家たれ / 着目しているのは小泉進次郎 / 前原誠司ほか松下政経塾人脈はステーツマンになれるか / 有事法制研究の長い道のり / 橋下徹の玉石混淆 / いでよ、権力意志の持ち主たち

 後書 滅びゆく士族の末裔として未来の政治家に遺す 296
  


これから期待できる政治家、安倍晋三

 今、私が見ていて、ステーツマンであると考えている政治家と言えば、やはり現内閣総理大臣・安倍晋三氏である。彼に“私利私欲”はない。
 安倍氏が、戦後生まれとして初の内閣総理大臣となり、第一次安倍内閣が発足したのは2006年(平成18年)9月のことである。日本国憲法の改正手続に関する法律や海洋基本法の制定、教育基本法の改正、「防衛庁」から「防衛省」への昇格といった大きな仕事を矢継ぎ早に実現したものの、閣僚の不祥事が相次いで、翌年の参議院選挙で自民党は大敗を喫してしまう。本人の体調不良(潰瘍性大腸炎)もあって就任1年を目前に辞任したことは、多くの方の記憶にあることだろう。安倍氏にとって、とても苦い体験だったことは想像に難くない。
 だが、2012年9月の自民党総裁選挙で勝利し、引き続き行われた12月の総選挙で自民党が大勝し政権を取り戻すと、再び内閣総理大臣に就任した。辞任した総理の再就任は、戦後では吉田茂氏以来二人目のことだった。
 それゆえ現在の第二次安倍政権を「奇跡の復活」ととらえて、彼自身がとても大事に思っているのがよくわかる。
 ここまで位人臣を極めると“私利私欲”はなくなるものだ。“私利私欲”などよりも、「この国の舵を取るには、何をするのが最善か」というステーツマンとしての意識や義務感が高まるのだ。もちろんすべての総理大臣が立派なステーツマンだったとは言わない。
 自らの権力を拡大することに躍起になったり、あるいは守ることに汲々としたり、“私利私欲”で権力に付随する利益を追い求めた総理大臣もたしかにいた。だが、安倍総理に関してはそうではない。明らかに違うと私は見ている。
 第二次安倍内閣がスタートするや、「アベノミクス」と呼ばれる経済政策を実行し、円高に歯止めをかけて景気回復に力を注いだことは記憶に新しい。実際、円は下がって株価は上昇した。デフレと低成長からの脱出戦略を、国民は評価している。実際に、今回の安倍内閣の支持率は高く、政権の発足以来60%前後という高い水準を各テレビ局、新聞社いずれの調査でも、長く保ち続けた。
 そんな高い支持率を背景に、安倍総理は外交・安全保障の司令塔となる国家安全保障会議(日本版NSC)設置法と、国家安全保障会議に必須の特定秘密保護法を相次いで成立させている。
 安倍政権は、日本の政治家が半世紀以上も「先送り」してきた国家安全保障の仕組みを、急いで整えているのである。

 しかし、2014年4月より消費税率を5%から8%へ上げることを決断し、日本版NSC設置法や特定秘密保護法を成立させたことで、高水準を維持してきた支持率が若干下がったことも事実だ。
 先に吉田茂氏の「経済力がつくまでは日米安保条約でアメリカに守ってもらうのだ」という言葉を紹介した。あれから日本は高度経済成長を経て世界有数の経済大国になった。ここしばらくは停滞しているとはいえ、依然として世界経済の一極となっていることは間違いない。陸・海・空の自衛隊の装備はかなり充実(ただし、弾薬などがたちまち底をついてしまう問題がある)してきたし、練度も一級だ。米軍との合同演習では「エクセレント」「スーパーヴ」などと舌を巻かせることもたびたびである。
 だがその一方で、安全保障を具体的に担保する枠組みの整備はまったく進んでいなかったのである。
 国家安全保障システムは、国家危機管理上の最重要政策としての国家防衛にかかわる制度である。民主主義国家では、国家意思の決定は「多数決」である。そして、先進国のほとんどすべてでは民主主義の一般原則とは別に、国家安全保障会議メンバーを限定した国家機関を設定し、「多数決制度」の上に「少数決」を加えて拙速(ラフ&レディ・ROUGH&READY)、決断が手遅れにならないような制度を設けている。さらにそれに加えて、「今そこにある危機」(プレゼント&クリアーデンジャー)に対しては、大統領や首相に「非常大権」、すなわち項目を限定し期間を定め「独断専行」を認めるシステムを設けている。
 翻って戦後の日本の国家危機管理制度は、内閣法、国防会議設置法いずれも「満場一致」という民主主義の多数決原則に反するルールを採用し、戦後七十年近く「戦争はない」という大原則の国家意思決定機関で事態対処を続けてきた。
 自民党の派閥政治、または連立内閣で「満場一致」は殆どありえない。
 今回の安倍内閣の国家安全保障会議は、この「不決断の国家意思決定機構」に総理大臣以下、官房長官・外務大臣・防衛大臣の四人の「少数決断」を持ち込んだ決定的な改革を実現した。
 さらに六年前の第一次安倍内閣は、総理に外国なみの「非常大権」を与える「緊急事態対処法」という自公民三党幹事長合意を達成し法律化目前の状況であったのである(安倍・自民、冬柴鐵三・公明、藤井裕久・民主の三幹事長合意)。
 歴史上、重大な政治決断は、独断専行か、それに近い「少数決」で決められてきた。ルビコン川越えを決断したシーザー、桶狭間決戦を決断した織田信長、昭和二十年八月十五日、終戦の聖断を下した昭和天皇は、「満場一致」はおろか少数決ですらない「独断専行」だった。
 同じく、安倍総理の「国家安全保障会議」の設置は、まさに「満場一致」国家に「少数決」を導入した勇気ある決断だったのである。 安全保障というと、尖閣諸島をめぐる中国との“有事”など、戦闘状態に入ったときの米軍との関係をイメージする人が多いと思う。しかしそれは、重要だけれども一部にすぎない。平時における外交や、安全保障に関わる情報収集や整理、課題についての議論などしておかなくては、迅速な判断もできない。
 安全保障の前提となる「情報」すら入ってこないのである。


秘密保全のできない日本は信頼されていなかった

  一時は70%近くまで上昇した安倍政権の支持率は、特定秘密保護法案を国会で強行通過させたあたりで、50%近くに落ち込んでしまった。
 安倍政権の支持率を落とすことになったこの特定秘密保護法だが、私は以前から必要欠くべからざる法律として、成立を働きかけてきた。今まで日本には秘密保全のためのまともな法律がなかったため、外国から信頼されていなかったからである。
 実際アメリカは、日本の役人や政治家たちが、秘密情報を漏らしてしまうことにたびたび不満を示してきた。かつて私か警察庁や防衛庁に勤めていた時代、外国の情報機関から満足な情報が入ってこないことがよくあった。
 彼らに「なぜ情報をくれないんだ?」と尋ねると、「日本に教えたら2~3日すると新聞に出てしまうではないか」と言われたことは二度や三度ではない。
 役人や政治家がマスコミにしゃべってしまうのだ。各省の政務官や国会の委員会に出た政治家、さまざまな審議会に参加している学識経験者には、これまで守秘義務はなかった。国家公務員法第百条の「守秘義務」の宣誓をしていないから、守秘義務はなかったのだ。マスコミは彼らを狙って接触していたのである。
 国家としては、世界に例のない考えられないような欠陥国家だったのである。特定秘密保護法では、治安、外交、防衛、危機管理に関与する委員会や審議会の出席者は、役人、政治家、学識経験者など、すべての人に守秘義務が課され、違反者は5年以下の懲役になる。
 厚生労働だとか教育、あるいは交通、経済などの情報は、役所が秘密を抱え込んだりしないで自由に報道されるほうが、風通しがよくて望ましい。
 それに、立法の目的が①軍事②外交③テロ④スパイと四項目を明確に「限定列挙」しているから、それ以外の省庁がスキャンダルなど隠蔽のために秘密区分指定をすることはできない。「その他」とするなどの列挙は法律上「例示列挙」と呼ばれ、国民の権利を制限するなどの法律では使えないから、今回の秘密保護法に立法者の未熟さからか、原子力事故などを想定したのか「その他」が入ったことが、国会の無用の混乱を招いた。原子力事故も「限定列挙」しておくべきだったと私は考えている。
 しかし外交や防衛、治安警備に関する情報はそうはいかない。利益が相反する国やテロ組織などに漏れると、危険な事態を招くのだ。それゆえに各国は、情報漏洩のある国との情報交換にはきわめて慎重になるのである。
 たしかに日本の役所は、自分たちに都合の悪い情報を隠すきらいがあるから、何でも重要秘密情報に指定してしまうのではないか、という懸念も指摘されていた。だから秘密の指定期間を原則30年、内閣の承認を得た場合のみ最長60年で公開することを義務付け、歯止めをかけているのだ。要は運用の仕方にある。
 すなわち、秘密保護法は「副作用もある特効薬」と言ってもいい。
 病気予防のため、あるいは治療のために薬を飲むように、日本の国益、国民の安全という大局的な観点からすると、望まれる作用を発揮させつつ、「副作用」の部分が減るように最善の努力をしながら運用するのである。

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