『経済』のギモン、ぶっちゃけてもいいですか?
高橋洋一さんは元財務官僚で、「霞が関を敵に回した男」と呼ばれることもあるのだそうです。
それだけに歯に衣着せぬ解説や主張には爽快感さえ覚えます。
本書にもその語り口は十分に披露されていて読み物としても面白いし、身の回りのことを取り上げながら経済を解説しているので、経済を身近に感じることが出来ると思います。
高橋洋一さんの「『経済』のギモン、ぶっちゃけてもいいですか?」 を紹介するために、以下に目次や目を留めた項目をコピペさせていただきます。
興味が湧いて、他も読んでみたいと思ったら、本書を手にしていただければと思います。
目次
まえがき
第1章 経済の基本についてのギモン
プレミアムフライデーって効果あるの? /
マクロ経済学から何がわかるの? / どうすれば景気がよくなるの? /
経済って、そもそも何なの? / 「三面等価の原則」って、どういうこと? / GDPを知っていたら、トクするの? / 「景気」のよし悪しは何で判断すればいいの? / 失業率と物価はどういう関係なの? / モノの値段は、どうやって決まるの? / 収入はどうすれば上げられるの? / 完全競争市場って何? / 大学入試の倍率はどんなメカニズム? / タワーマンションは何で増えるの?
第2章 金融政策のギモン
「お金」は誰のもの? / 銀行振込は実際に現金をやり取りしているの? / 銀行のお金がお金を生むって、どういうこと? / 金融政策って、よくわからないんですけど・・・? / 金融政策って、“いつ・どこで”行われるの? /
金融政策って、“なぜ・何を・どう”行われるの? / 金利でお金の量を調節ってどういうこと? / 日銀はなぜお札を印刷するの? / 日本はマイナス金利じゃないの?
第3章 財政のギモン
年金って、やっぱり将来的に危ないの? /
国の予算って、どうやって決まるの? / 国の経済活動は何からわかるの? / 政府はなんで経済活動を行うの? / 不況なのに増税しても大丈夫なの? / 将来の増税が決まってるのっておかしくない? / 国債って、なんで発行するの? / 赤字国債って、ホントは違法なの? / プライマリー・バランスの黒字化ってどういうこと? / 日本は借金大国なんでしょ?
第4章 国際経済のギモンンン
リリカードの比較優位って何? / 世界的に分業したほうが全体の生産量は上がるの? / 政府主導で経済は伸びるの? / 貿易収支が赤字だと、国としてマズイの? / 貿易の関税はなんでかけるの? / TPPって結局はアリなの、ナシなの? / 外国からの観光客増加の経済学的な理由とは? / 各国の経済力はビッグマックでわかるの? /
為替レートはどうやって決まるの? / ちょうどいい為替レートは、どのくらいなの?
まえがき
経済学は、社会のしくみを金儲けの観点でかなり説明できる学問である。ほとんど金銭に還元した話ばかりになるので、はっきり言ってえげつないし、イヤらしい。このイヤらしいところがおもしろいとも言える。時にはDismal Science(陰気な学問)と呼ばれることもあり、あまり高尚な考えがなく、つまらないという意味である。
ただ、世の中はそんなものだから仕方ない。褒められることより、お金をもらえることの方を喜ぶ人が多いのが現実だ。「金儲け」と言うと、下品に思われる読者諸氏もいるかもしれないが、これは人のやる気につながるとても重要な要素だ。経済学では「インセンティブ」と言い、人のやる気を刺激したり、行動の要因になったりするものである。お金なり、時間なりのコストをかけるときには、それ以上のリターンがあると思うからこそ行動する。逆になければ行勤しない。自分を省みれば当然のことだとわかるだろう。
では、本書を学ぶリターンは何だろうか?
それは、経済リテラシーを高められることだ。
新聞やテレビ、インターネットなどのニュースを見ていると、いい加減な内容がまことしやかに語られていることが実に多い。「経済新聞」という名を冠していながら経済認識が間違っている記事や、印象論で経済を語る自称評論家には怒りを覚える。私はその間違いをネタに記事が書けてしまうからまだいいが、一般の人は歪んだ情報をそのまま信じてしまうことがほとんどだろう。
経子さんをはじめとする本書の登場人物たちは、まさにそういった一般の人たち代表である。彼女たちの素朴なギモンを入口に、経済学の基本から日本経済のホントのところまで、ロジックとエビデンスを基に答えてみた。
本書によって経済リテラシー向上というリターンを得て、ニュートラルな判断をできる方が1人でも増えてもらえれば、著者として無上の喜びである。
2017年6月 高橋洋一
プレミアムフライデーって効果あるの?
高橋:プレミアムフライデーで売上アップや景気回復を期待しているなら、「期待できない」としか言えない。典型的な、失敗に終わる政策だね。
経子:ええ? でも、マスコミでもたくさん報道されてましたよ?
高橋:マスコミは、だいたい間違った報道が多いから(笑)。政策自体も素人が考えたんだろうな。大将、プレミアムフライデーで売上は増えましたか?
大将:一応、3時過ぎに店を開けたんですけどね、さすがに平日の3時に飲み屋に行こうってお客さんはほとんどいないみたいでサッパリでした。いつもと変わらない週末でしたね。次回の開店時間は普段通りの6時にするつもりです。
経子:そりゃ、3時から居酒屋に行く人は少ないかもしれないけど…デパートとか、カフェとかならお客さんが増えるんじゃないですか?
高橋:当日だけ見れば増えるかもしれない、でも、使える金額は限られているんだから、お金を使うタイミングがずれるだけ。収入が増えないと消費も増えようがないでしょ。だから、全体で見ると増えない。僕から見ると、とてもじゃないけど恥ずかしくて言い出せないぐらい、バカげた政策だよ。僕じゃなくても、マクロの学者も、おかしくて仕方ないだろうな。
経子:マグロ?
大将:マグロならカマの煮つけがあるけど、経子ちゃん食べる?
経子:食べる…。
高橋:ははは。マグロじゃなくて、マクロ。マクロ経済学のこと。
経子:マクロ経済学、って何ですか?
高橋:経済学にはミクロ経済学とマクロ経済学の2つがあるんだ。簡単に言うと、個人や1つの商品・会社・業界など、個別の案件の経済について考えるのがミクロ経済学。自分の半径1メートルっていうイメージ。
そして、社会全体の経済活動を考えるのがマクロ経済学。モノの見方というか、立ち位置というか、そういうものが違うんだ。半径1メートルと、全体の違いがイメージできない…。
「努力は報われる」ってよく言うでしょ。ミクロで考えればすごくいい言葉だし、努力しようという気になる。でもマクロで考えると「努力は報われない」と言える。
経子:うーん?
高橋:たとえば大学受験で考えてみようか。
個人は「努力は報われる」と信じて、勉強する。確かに努力しないと受からないんだから、個人ベースで考えると「努力は報われる」は真実。
でも、全員が努力したらどうなると思う? 定員が決まってるんだから、全員が合格することなんてあり得ない。だから、マクロ的に考えると「努力は報われない」となるんだよ。
「一所懸命、勉強すればいい大学に入れる」つていうのは、自分だけが一所懸命で、他の奴は勉強しないっていう前提じゃないと成り立だない。個人の動きと全体の動きは、いつもイコールとは限らない。個人の行動と全体の動きは違うから、経済学では分けているんだ。
経子:それと、プレミアムフライデーが何の関係があるんですか?
高橋:プレミアムフライデーはミクロの発想で作られた政策なんだ。半径1メートルのことしか考えてないから、失敗する。3時に仕事が終わろうが、残業して8時になろうが、遊ぶ人は遊ぶし、そのまま家に帰る人は帰るだろ。「混んでるからイヤだ」とか言い出す奴もいるし。アイデアを出した人が、「3時に帰れれば遊びに行けるのに」ってタイプだったんじゃないの(笑)。経済学の素人だと思うよ。
経子:ええ? じゃあ、なんでテレビでは「景気回復の起爆剤!」とか騒いでたの? うちも「そのわりに売上が伸びない」ってわざわざ会議までやってるのに!
高橋:騒いでたのは、ミクロの発想で作られた政策だから、わかりやすくてキャッチーだったからじゃない?
経子:キャッチー?
高橋:テレビで解説してる人気の経済学者も、だいたいミクロの話ばっかりしてるよ。ミクロの話のほうがテレビ的におもしろいんだろうね。マクロの話をする学者はほとんどいないしね。
<アンサー>
ミクロ経済学の発想で作られたプレミアムフライデーでは景気回復は期待できない。お金を使うタイミングがずれるだけ。
日本はマイナス金利じゃないの?
大将:先生、最初に「日本はマイナス金利じゃない」っておっしゃいませんでしたか?
高橋:うん・日本はマイナス金利ではない。
経子:ええ? ニュースで「マイナス金利」導入って言ってましたよ。
高橋:言ってるね。僕には不思議で仕方がないけれど。
経子:マスコミの間違いってことですか?
高橋:よくわからずに使っているんじゃないかな。でも、通常はマイナス金利になることはない。
経子:どういうことですか?
高橋:そもそも「マイナス金利」になったのは、銀行と日銀の間の金利なの。経子さんは、銀行に預金しているよね。同じように、銀行は日銀に預金している。で、この預金には経子さんの預金と同じように利息がつく。マイナス金利っていうのは、「預けているとお金を取られる」ってことだよ。利息の代わりに手数料を取られるとも言えるかな。じゃあ、経子さんは銀行にお金を預けて手数料を取られたらどうする?
経子:そんなことになったら、銀行には預けませんよ。タンス預金します。
高橋:そうだよね。預けていたらお金が減っちゃうんだから、金利が低いどころの話じゃなくなる。そんな状況になったら、誰も預金しなくなるだろう。それと同じで、銀行だって日本銀行に預金してお金が減るとなったら、イヤに決まっている。怒っちゃうでしょ。たぶん、マイナス金利になったら銀行はほとんどの預金を引き出すはずだ。規定で100%引き出すことはできないけれど、ある程度は自由だからね。だから、マイナス金利になっちゃマズイわけ。起こり得ない。
金田:でも、マスコミの騒ぎ方は尋常じゃないような…。
高橋:確かに、預金の一部はマイナス金利になっている。銀行が日銀に預けている預金は250兆円くらいかな。そのうち200兆円くらいまでは0.1%の利息がつく。次の30兆円分は金利がつかなくて0%。最後の20兆円分がマイナス0.1%になっているんだ。この20兆円だけ取り出してみれば、確かにマイナス金利。でも、250兆円全体の金利を計算してみると、金利は0.07~0.08%くらいになる。
経子:金利が段階的になっていて、一律になっていないということなんですね。
高橋:マスコミが言う「マイナス金利」の正体は、ちょっと金利
が下がった、ってだけのこと。金融政策としては、金利を「0.1%から0.07%に下げる」でもいいんだけどね。実務上、端数があると面倒だから段階的にしたんだろう。
<アンサー>
銀行が日銀に預けるうちの一部の預金は確かにマイナス金利となる。ただ、預金全体で見れば、金利が少し下がっただけのこと。
年金って、やっぱり将来的に危ないの?
大将:経済評論家の中にも、年金の破綻を訴えている人はいますよね。
高橋:いるね。でも、だいたいは年金のしくみを理解しないで言ってるだけ。もしくは、破綻すると言っておいたほうがトクする人なんでしょ。
経子:そんな人いるんですか?
高橋:いっぱいいるよ。そもそも平均寿命が伸びて、少子高齢化だってみんな知ってるし、なんとなく老後の不安はある。そこに年金破綻と言われると、ますます「老後の生活が成り立たないんじゃ…」と不安が増していく。さて、この状況でトクをするのは誰だと思う?
経子:うーん?
金田:オレ、わかりました。金融機関じゃないスか?
高橋:そう。金融機関もその一つで、自分のところの金融商品を売りやすくなるからね。「老後にいくら受け取れます」なんてセールストークで迫りやすい。
経子:マスコミがあおっているということは、マスコミもトクするんですか?
高橋:そうだね。年金問題は国民の関心が高いから、新聞や雑誌が売れたり、テレビの視聴率が上がったりする。それから、政治家だね。特に野党は、与党の攻撃材料に年金問題を持ち出すと、国民の評価が高まりやすい。
金田:なるほどなあ。年金不安が高まると、けっこうトクする人が多いんスね。
高橋:あとね、経済に大きな影響を与える人たちもトクをする。わかる?
経子:経済に大きな影響を与える人…、誰だろう…?
高橋:答えは、財務省と厚労省。
経子:え? なんで財務省と厚労省がトクするんですか?
高橋:まず、財務省は基本的に常に「増税したい」と思っている。特に消費税を増税したいんだよね。で、その理由として挙げられているのが…。
大将:あぁ、社会保障か!
高橋:そう。日本の年金が崩壊すると危機感をあおって、国民に「年金制度を守るために消費税の増税はいたしかたない」と思わせたいんだよ。
経子:じゃあ、厚労省は? 年金制度って、厚労省がやってるんですよね。自分たちのやってることが危ないって言われたら、メンツに関わりませんか?
高橋:まあ、そうなんだけど、財務省に同調しないといけないので、ちょっと板挟みで苦しい立ち位置なんだよ(笑)。とにかく、年金破綻は、破綻すると不安をあおったほうがメリットがあるから言われていること。騙されないほうがいい。きちんと制度を運用していけば、年金が破綻することはないから。
経子:本当に?
高橋:信用しなさい(笑)。私が大蔵省にいた頃には「年金数理の専門家」なんて言われた時代もあったんだからな。そもそも年金は保険なんだから、保険料と給付額が決められるし、社会の環境によってその都度調整も行っている。計算して設計するんだから、破綻するような設計をしなきゃいいだけでしょ。そりゃ、どこかでむちゃくちゃなことをすれば問題が出てくるかもしれないけど、普通に運用していれば大丈夫。破綻はしない。
<アンサー>
年金は適切に運用すれば破綻しないように設計されている。金融商品を売りたい金融機関や増税したい財務省などが不安を煽っているだけ。
日本は借金大国なんでしょ?
高橋:まあ国債は借金は借金だけど、次世代へのってのは違う。よくさ、「国の借金は国民1人当たりいくら」なんて言うでしょ。
経子:それ! 私か言いたかったのはそれです。
高橋:でもさ、その借金は政府の借金であって、国民の借金じゃないよね。それを個人が負っている負債みたいに思わせて、これ以上借金してはダメだ、返していかなきゃってムードを作って、まさに増税したい財務省の筋書き通りだよね。
経子:国の借金を国民が背負う必要はないってこと?
高橋:そう。逆にね、政府の借金=国民の資産というとらえ方をする人もいる。国債は資産だからさ。でも、これも財務省の想定内で、「増税しないと政府が破綻して、国民の資産も全部パーになる」というロジックが用意されている。どのみち国には借金があることをことさらにあおったほうが、増税できるってわけよ。
経子:じゃあ、次世代への借金は気にしなくていい?
高橋:マスコミは、なるべく視聴者や読者に突き刺さる表現を使いたい。そのほうが視聴率も上がるし、購読者も増える。だから、安易に個人にたとえちゃうのよ。でもさ、そもそも国のことを個人でたとえること自体がおかしいんだよ。それにね、借金額だけを取り出しても全体像は見えない。
経子:どういうことですか?
高橋:大将は、借金ありますか?
大将:店の改装したときの借り入れは残ってますよ。あとは、マンションを買ったときの住宅ローンですね。
高橋:その借金は、収入の範囲の中で返せる額でしょ?
大将:そりゃ、そうですよ。
高橋:ほらね。企業は普通、借金して経営をしている。でも、それは売上の中から返せる範囲内の借金だよね。個人もそう。不動産を買うときは、ローンを返せなくなったときのためにちゃんと担保にとられている。それは、不動産が資産だからでしょ。資産を持っているから、お金を借りられると言える。
だから、借金は資産とのバランスをちゃんと見ないと、適切な借金かどうかなんてわからない。トヨタだって、赤字額だけ見れば借金企業だよ。でも、ちゃんと利益を出してる。国の貸借対照表を見れば、借金と資産のバランスがわかるんだし。
大将:ああ、そうか。貸借対照表には資産が書かれてますよね。予算がグラフになってるのを新聞か何かで見たことがありますが、国の貸借対照表って見た記憶がないような…さっきも話にあがりましたけど、そんなのあるんですか?
高橋:あるよ。だって私が作ったんだもん。
大将:え? 先生が作ったんですか?
高橋:私が大蔵省にいた頃に最初に作ったんだよ。もう20年以上前だな。当時からもちろん損益計算書、つまり予算はあったわけ。企業の財務諸表って損益計算書と貸借対照表の両方を見ないと、全体のことはわからないでしょ。経済活動という意味では企業も国も同じなのに、なんで貸借対照表がないんだろうなあと思ったよ。これじゃあ、国の経済活動がわからないじゃないかって。で、ないなら作らなきゃしょうがないから、私が作ったんだよ。
経子:そんなに簡単に作れるものなんですか?
高橋:最初は手間がかかるよね。あっちこっちに分かれている情報を集めるんだからさ。大変だから、それまで誰も作らなかったのかもしれないけど、私は一番にやるのが好きなんだよ。でも、作ってから10年以上も公表されなかったんだよな。今は、ホームページにちゃんと掲載されてるよ。わかりづらいところにあるけどね。
経子:なんで急に公表されたんですか?
高橋:小泉政権のときに、私が公表しようと言ったの。そのときはもう財務省にサヨナラしていたけど。
大将:え? 公表のきっかけも先生なんですか?
高橋:そうだよ。「私が作った貸借対照表があるはずだ」つて言ったの。
経子:先生が作られてから、ずっと放置されてたんですか?
高橋:役所とか政府って不思議なものでさ、―回作ると、毎年ちゃんと作るものなの。1回公表すると、その後も公表し続ける。前例主義っていうかね。だから、最初に作ったり、公表したりすることが大事なんだ。私が最初に貸借対照法を作ったときは、衝撃的な結果だったんだよ。だから公開されなかったってのもあるんだろう。
経子:衝撃的って、何がですか?
高橋:思った以上に国には資産がたくさんあった。有価証券をたくさん持ってるし、貸付金もある。貸付金は子会社に対する資金供与だね。その貸付金を全部返済してもらったり、売却したりして借金に充てる方法はある。一般企業でも、本社の経営危機には関係子会社を売却するでしょ。でも、国はやらないと思うけど。
経子:どうして? それで借金がなくなるなら、いいと思うけどなあ。
高橋:国の関係子会社って、つまりは天下り先なのよ。特殊法人とかさ。実は、政府の子会社は100社以上あるの。でも、天下り先がなくなったら自分たちが困るから、売却せずに増税で財源を得ようとする。そんなに不安なら、見てみればいいじゃない。えーっと、ほら、これ。
大将:あ、本当だ。有価証券とか貸付金が多い。出資金もある。
高橋:出資金も売らないだろうね。株式だからさ。
大将:しかし、本当にわかりづらいところにあるんですね。
高橋:そうなんだよ(笑)。探すのも結構大変かもしれない。見っかると困るんだろうね。そのわりに、財務諸表の借金の説明は財務省が3ヶ月に1回、丁寧にやるんだよ(笑)。でも、資産については説明しない。天下り先がバレると困るからさ。他の国は、こんなに関係子会社がない。だから資産もないんだ。こんなに資産がある日本の懐は世界一だね。
経子:資産になるなら、日本にとって天下りがあるのもそんなに悪いことでもないんじゃ…?
高橋:それは違うんじゃない? 本当に負債を減らしたいなら、資産を売却すればいいんだ。でも、売却しないで「負債が大きい」とアピールしてるんだから。天下り先があることが害なんだよ(笑)。売ることで借金を減らす、というまともな議論ができないんだから。
大将:増税より、そっちが先だろっていう話なんですね。
高橋:一般の企業だと、本社の経営が傾くと関係会社を処分するでしょ。でも、日本はそれをしない。でもさ、これ、世界から見るとどう映ると思う?「関係会社を処分するまでに至っていない。日本は安全な国だ」と見える。だから、結論として、「日本は借金大国ではない」って言えるんだよ。
<アンサー>
日本は借金大国ではない。個人の借金にたとえること自体おかしい。財務省は負債の大きさばかりアピールするが、膨大な資産もアピールすべき。
各国の経済力はビッグマックでわかるの?
金田:そっかー。オレも円高のときに海外旅行に行っておけばよかったッス。
高橋:行ったことないの?
金田:ないんスよ。実際、海外に行ったら、先生みたいに物価がどうとか実感できるんでしょうねえ。
高橋:どこに行きたいの?
金田:アメリカよりはヨーロッパっスね。フランスとかイタリアとか、その国の料理を食べられたら勉強になるだろうし。アメリカの料理はやっぱりホットドッグとかマクドナルドのイメージで、それなら日本でも食べられるし、海外の食べ物を食べた気がしないと思うんで。
高橋:マクドナルドでも勉強になることはあるよ。ビッグマック指数って知ってる?
経子:ビッグマックって、マクドナルドの?
金田:オレ、好きっス。
高橋:そう。マクドナルドは地域ごとに商品が多少違っていたりするけれど、ビッグマックはほとんどの国で売ってる。中身も似たようなもの。同じ商品を、その国それぞれの通貨で売っているわけ。同じ商品だから、国が違っても同じ価値で売らないとおかしいでしょ? 実際、日本では400円くらい、アメリカは4~5ドルくらい。1ドルあたり110円とすると、だいたい同じ価値だとわかる。つまり、ビッグマックの価格で為替レートが読めるん
だよね。アメリカに限らず、どの国も同じだよ。
金田:ホエ~。
高橋:実際には国によってさまざまな事情があるから、ピッタリ為替レートと同じにはならないけれど、ビッグマック指数はその国の購買力とか経済力を測る目安にもな
るってわけ。ビッグマックに限らず、アップルのiPhoneでもそう。同じ商品は同じ価格で売られるという前提に立てば、商品の販売価格で為替レートがだいたいわかるんだ。
大将:為替レートで購買力がわかるということですか?
高橋:為替レートはお金の量の比だけれど、実は物価の水準にもけっこう比例してくる。これも経済学の理論で、ビッグマック指数と同じような考え方だけどね。ビッグマック指数は、同じ商品は同じ価格で売られているから、その価格差で為替レートがわかるというものでしょ。この裏側に何があるかというと、やはり通貨量の比になる。
経済学の理論に貨幣数量理論っていうのがあって、通貨量はほぼ物価に比例するというもの。通貨量が増えるとインフレ率が上がるってことなんだけど。通貨量の比が為替レートでしょ。で、通貨量はほぼ物価に比例するんだから、価格比でも為替がわかる。もちろん短期的にはいろんな事情でずれることはあるけれど、長期的に見るとだいたい当たるんだ。これがビッグマック指数に表れてるわけ。
金田:ホエ~。じゃあ、海外でビッグマックを買って「安いな」「高いな」って思うのが、為替レートの実感ってことなんスね。
高橋:そうだよ。海外、楽しいし、勉強にもなるからどこでも行ってみるといいよ。
<アンサー>
同じ商品は国が違っても同じ価値で売られるものだから、ビッグマックやiPhoneの価格でその国の為替レートがわかる。つまり経済力を測る目安になる。
高橋洋一さんは「貨幣数量説」に立っているようですが、青木泰樹さんの「経済学とは何だろうか」を読むと青木さんは貨幣数量説は正しくないという考えのようです。
この点は、私は青木さんの方が腑に落ちるな・・・。