ここでもまた断っておくけど、私はいかなる宗教も信仰していませんよ。

　次の文章は、ある人へ「思索すること」を解説しようとした私の文章（「ｋａｏｒｉｎ」）の一部です。
　そうは言っても、私にとって哲学への入口は井上教授の授業なんですが、だから「私の文章」といって も教授の受け売りになってしまいます。
　ところで、その授業の試験の設問は「あなたにとって哲学とは何であったか」というものでしたが、 その設問自体が「哲学とは・・・」を表していると思いませんか？。

　カオリンは夢を見た。３人の人が話しをしている・・・。神様がいるのかどうかという話題らしい。
ゴータ君「神様なんていないよ。」
キリ君「何言っているんだいゴータ君、神様はいるよ！。」
マホ君「そうだよゴータ君、キリ君が言うように、神様はいるよ！。」
ゴータ君「そうかなあ、それじゃあ君たちが言っている神様って、どういうの？。」
キリ君「決まってんじゃん。ゼウスだよ。」
マホ君「キリ君それは違うよ。アラーだよ。アラーは唯一の絶対神なんだ。」
キリ君「そんなこと聞いたことがないね。僕は神の子だから良く知っているんだ。神様は唯一ゼウスだよ。」
マホ君「僕だってアラーの神の予言者なんだからね！。」
　カオリンは思った、「あれ、これって『あたしゃこう思う論』じゃない！。
　３人のうち２人が『神様がいる』と言っているから、私もそうかなぁと思いはじめていたけど、 その２人の主張を聞いてみると＜神様＞といいながら別々の＜神様＞のことを言っている。 　神様って沢山いるのかしら？。それにしては２人とも自分が知っている神様が唯一だと言っているし・・・・。
　何より、自分は知っているんだと言っているだけで、その根拠がないわ。」

　レストランで聞こえてきた声が夢の中にも出てきた。
　「カオリン、良い所に気が付いたね。彼らの名前から想像が付くと思うけど、それぞれ仏教、キリスト教、イスラム教の関係者だよ。
　宗教って一部の人が思っているほど万能ではないし、信者以外にとっては真理でもなんでもない。つまり、突き詰めれば、思い込みなんだよ。
　ここにあげた３つは、いずれも『教』がついているけど、ゴータ君の意見はちょっと違っていると思わないかい。ゴータ君は『神様はい ない』と言っている。
　今の仏教はゴータ君を神格化してしまって、宗教の仲間入りをしてしまったけど、ゴータ君が思索の結果たどり着いたのは『因果縁起』と 『四苦八苦』ということだったんだってさ。
　もう少しゴータ君の意見を聞いてみよう。」

　「僕は、君たちの言うような神様はいないと思うけど、この世で起こっているすべてのことについては法則があると思っている。
　それは、結果には原因があるってことなんだ。僕はそのことを因果縁起って呼んでいる。でもそれは運命論じゃないんだよ。 自分で原因に働きかけることができるし、そのことが新たな原因になるんだ。
　例えば交通事故のケースでシミュレーションしてみよう。
　僕が交通事故を起こして歩行者に怪我を負わせたとする。事故という結果にはそれを引き起こした原因があって、その原因の中に は私の選択によっているものがある。スピードの出しすぎ、わき見、考え事・・・・。ところがそういった私の過ちがあっても歩 行者がいなかったら怪我をさせることはなかった。
　なんであの時あそこに歩行者がいたんだろうという疑問はいつまでものこる。これは私が働きかけれれる原因ではない。
　こんな風に、僕は自分で働きかけられない原因を『因』と呼び、働きかけられる原因を『縁』と呼んでいる。
　人の願いをかなえてくれるような神様はいないと思うけど、 僕の言っている因は突き詰めれば『神としか呼べない』ようなものなのかもしれない。」

　カオリンは思った、「ゴータ君、キリ君、マホ君の話を聞いていると、『神様がいるかどうか』というよりも『神とは何か』 ということが問題みたいね。しかも、神とは何かってことが３人の間で了解されていないと議論自体が成り立たないのよ。」

　　 　 井上先生、今回の答案の採点結果はいかがでしょうか？。