言うまでもありませんが、五感(ごかん)とは動物やヒトが外界を感知するための感覚機能のうちの視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚を指します。
脳幹梗塞でいわゆる植物人間状態になり、動くことなく意識なく横たわっている人は、感覚機能自体が無いのか、感覚・認識はあるけれど反応ができないだけなのかは大きな違いだと思います。
母親を見ていてそう考えていましたが、むしろ後者、つまり「感覚・認識はあるけれど反応できないだけなのではないか」と感じていました。「そうであって欲しいと願っていた」というほうがより正確かもしれません。
科学的・医学的にそんなことはあり得ないと言われるかもしれませんが、科学・医学もその段階で分かっている常識でしかなく、ある医師・学者の見解はその時代の科学・医学の常識の中のその医師が知っている常識でしかないとも言えます。
そんなわけで、病室を訪れる時にはいろいろなことを試しました。
視覚は・・・ 目は閉じたままです。瞼を開いて瞳孔に光を当てても反応がありません。
聴覚は・・・ ICレコーダーで、ひ孫の声や飼っていたインコの鳴き声、音楽を聞かせました。そのことはICレコーダーに録音して・・・に書きました。
また手足の運動は声をかけながら行いました。(同室の患者さんもいるので、ヘッドセットマイクとICレコーダーを使って。)
嗅覚は・・・
好きだったグレープフルーツの香りや、ミント・リンゴ・コーヒー・フキノトウなどの匂いをかがせてみました。
味覚は・・・
看護師さん・介護員さんには内緒で、グレープフルーツジュースやレモン果汁や缶コーヒーを数滴、舌の上にのせました。
触覚は・・・
低周波治療器を使ったり、手足を動かしたり、暖かいタオルを顔に乗せたり、目薬をさしたり、腰や背中のマッサージをしました。
腰や背中のマッサージは、心地よさそうな表情になるのが見て取れました。
そのような刺激を受けた時、それは分かっていても反応することができないのだとすれば、何か反応が分かる方法は無いかと考えて、やってみようと思ったのが脳波計でした。
ただ高額なものは買えませんし、それを手にしたとしても素人なので扱うことも難しい・・・。 ネットであれこれ探していたら、脳波を測定するおもちゃのような(このように書くとメーカーに叱られるかな)ものを見つけました。「NeuroSky社製 MindWave Mobile Plus」というもので、14,000円くらいでした。現在はその機種の販売はなく、後継の「MindWave Mobile 2」(18,600円くらい)が販売されているようです。
専用アプリと合わせて使用すると、集中状態と瞑想状態が視覚的に判断できるという商品です。 アプリを入れたスマホと本機をブルートゥースでペアリングさせ、本機を装着すると脳波の状態を表示してくれます。
attentionは集中している程度を、meditationは瞑想・リラックスしている程度を表します。 画像の状態は集中の程度がとても高いことを表しています。
ここで、最初の「感覚機能自体が無いのか、感覚・認識はあるけれど反応ができないのか」に戻ると、もし私が望んだ後者だったら、表面的な反応はないものの、痛みや苦しみも感じていて辛い思いをしながら横たわっていたのかもしれません。
もしかしたら、心地よい時間よりも辛い時間の方が多かったのかも知れません。 つまり、少しでも長く生きていて欲しいと思うこと、延命することが本人にとって良かったのかどうか・・・、今でも分かりません。
ただ、痰が絡んで呼吸が苦しい時などは苦しそうな表情になり、肺炎の時などは呼吸自体が苦しそうでしたし、時々「しかめっ面」をすることもありましたから、そうでないときには苦痛なく過ごしていてくれたのだと思いたいところです。
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