町中町内にも、地域のあちこちに防犯灯がある。このランプが切れたり故障すると修理をしてもらうのだが、それをしてくださるのは隣町内の方でSさんという方である。・・・といっても、その方の家がどこなのか、どの人なのかわからなかったのだが・・・。 今年は、会計担当なので、料金の支払いに伺うことになるわけで、「Sさんのご自宅の場所を確認しておかねば・・・」と思いつつ日が過ぎていた。5月になって、ランプの交換をしてもらい支払いをする時が来たので住宅地図で場所をおさえておじゃました。Sさん宅はウチの田圃がある近くだった。 チャイムを押すと家の中から返事があったので「町中の会計ですがお支払いに来ました。」と声をかけて待っていると奥さんが出ていらっしゃった。狭い地域のことであり、話をした事はなかったがどこかでお見かけしたことがあった。 私の顔を見るなり「おまえさんは・・・」とおっしゃるので、「はい、町中の会計です。オクデです」と応えた。「オクデ」とはウチの屋号である。 ご案内の方もいらっしゃると思うが、屋号とは家につけられた名前である。人の出入りの少ない地域では近くに同じ苗字の家が沢山あったりする。ちなみに64戸の町中では阿部さんは6件、関口さんは12件、藤田さんは9件、佐藤さんは10件という状況である。 こうした状況では、例えば「阿部さんちにお使いに行って来て」といわれても「どの阿部さんちに行くの?」と確認しなければならない。一方「オクデに行って来て」と言われれば迷うことはない。「屋号」はちょっと田舎臭い感じがするが結構実用的だったりするのだ。 さて、奥さんの次の言葉は「やはりそうか・・・、似てきたね」という主旨だっが、それは私が親父に似てきたという感想を述べたものだった。当然の事ながら、父はこの方の家の近くの田圃でも農作業をしていたし、私も子供の頃はその手伝いをしたこともあった。その奥さんは当時のことをご存知なのだろう。 こんなふうに、(失礼ながら)私が詳しく存じていない方が私のことを知っていたりする。ありがたいことである。 父に似てきた・・・・、実は私自身もそう感じている。だから、ウチの田圃の近くのお見受けしたことがある方が「おまえさんは・・・」とおっしゃった時、次の言葉を想像しながら「オクデです」と申し上げたのである。 今日6月8日は父の命日である。 |