この地域では毎年8月15日に盆踊り大会が開催される。 子供の頃は盆踊りを含めてお盆は楽しみだった。沢山の親戚が集まり、叔父さんたちにお土産をもらって、都会の匂いがする従姉妹たちと遊んで・・・。その数日間は非日常の時間が流れたのだった。 盆踊りの日は、踊りはしなかったものの会場に行き、ヤグラの周りを走り回っていたような気がする。今思えば、「会場を走り回っているだけで、何が楽しかったんだろう」とも考えてしまうが、当時はそれだけで楽しかったに違いないのである。 そんな盆踊りであったが、最近はその会場に行ったことが無かった。多分15年は行っていないと思う。毎年太鼓の音は聞こえていたのだが・・・・。 しかし今年は役員の一員でもあり、準備の段階から盆踊りに係わることができた。 前の準備として地域に張り出すポスターを作った。思うに、これは私が子供の頃見たものと同じようなデザインである。ずーっと同じようなデザインなのだが、それはそれで盆踊りらしくて良いのである。 それと、様々な色の薄い紙で花を作った。皆さんもお作りになったことがあると思うが、細かく畳んで真中を縛り、1枚ずつ広げて作るやつである。この花と提灯を七夕の飾りのように竹につけて、ヤグラの脇に立てるのである。この竹の飾りは盆踊りには無くてはならない飾り付けなのだ。 12日(日)にはヤグラを建てた。 当日は午後3時からヤグラの飾りつけを行い、7時から盆踊りの開始となった。 一緒に準備をした人に聞くところによると、盆踊りに参加し踊る人は年々少なくなってしまったそうである。踊りの輪にならないこともあるんだとか・・・。それだけに盆踊りを止めてしまおうという主張もあるのだとのこと。一方で、太鼓の音が聞こえないのは寂しいという意見もある・・・。 これって、ローカル線と同じなんだね。「乗ることは無いんだけど廃線になるのは寂しい」っていう気持ち。 その人が言うとおり、7時を過ぎても踊り出す人はいないわけで、当然の事ながら役員が先頭になって踊ることになる。 私も加わったが、踊りかたが解らない。他の人のを見ながら真似るのだが、それぞれの人が自分流にアレンジしてたりでどれが本当の踊りなのかがわからないのだ。あまりこだわらず、それらしく踊っていればそれで良いのかもしれない。 しばらくするうちに一般の参加者も加わり、8時頃には一応小さな輪ができた。 終了予定は9時であった。 前述の話を聞いていた私は少しでもその輪を大きくしたいものだと思い、放送の係りでもないのに踊りの輪への参加を呼びかけ、終了20分前くらいには「あと20分で終わりですよー」という、いわゆるタイムサービスのような呼びかけもした。 その効果があったかどうかは解らないが、9時5分前くらいには輪もそこそこ大きくなっていた。 ホッとしている所に、上役から「昨年以上に盛り上がっているようだから『あと30分延長する』と放送してくれ」という意見が出てきた。9時で終わりですと放送してきた私は「伸ばしてもせいぜい5分か10分でしょう」と申し上げたのだが、太鼓叩きの人の了解も得るからということで、結局「30分延長です」という放送をすることになった。その結果、それと同時に踊りの輪から抜ける人がでてしまったのである。 これに限らず、今まで言って来たことを覆すことの危険性は十分認識していたのだが・・・、改めて反省である。一方で、延長を歓迎して踊りつづけた人も沢山いらっしゃったことも申し添えておく。 こうして様々な経験をさせてもらった盆踊りも終わったわけだが、ヤグラの周りではどこかの子供が走り回っていた。 |