【 十河信二記念館にある「有法子」の額 】

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有法子 十河信二


 愛媛県西条市にある「十河信二記念館」(2012年8月20日に訪問)に展示されている「有法子(ヨウファーズ)」の額です。
他の画像は鉄道歴史パーク in SAIJOでどうぞ。

  私も、国鉄の中央研修所講堂(中央鉄道学園の講堂)にあった額を見上げていた頃は「有法子」の信念を持ったこともあったと思うけれど、下の解説にある「魂に皺のよった老人」になった今は「没法子」のほうがしっくりくる。
 自虐ではなく、素直にそう思う。
 もっとも、そういった感覚が馴染むようになったということであって、全てを断念するということではなく、また自暴自棄になっているわけでもありません。

 NHKアニメ「おじゃる丸」のオープニングソングだった「詠人(うたびと)」の歌詞、「夢を描いて 高い空見れば 届く気がして よけいに悲しくて」も、二十数年前から心に染ていた・・・。



 <記念館にあった十河信二と「有法子」の解説>

 中国語で、“成せば成る”とか“まだ方法はある、もっと努力しよう”というような意味があります。先生の座右の銘といってもいい言葉です。

 国鉄総裁の頃、先生が経験した自叙伝的な「いろいろな昔話」を「交通新聞」に掲載していましたが、そのタイトルも「有法子」です。国鉄の中央研修所講堂にもこの言葉の額を掲げました。近くは氷見公民館の落成を祝ってこの言葉の揮毫をいただいています。

 自叙伝「有法子」の中で、先生は以下のように語ります。
―― 古来中国では、「有法子」と「没法子(メイファーズ・・・もう手段が尽きた、仕方がない)」が並んで使われていたのに、最近は“有法子”が使われなくなり、“没法子”という言葉だけが流行っている。「“没法子”は魂に皺のよった老人の言葉であって、若者の用いるべき日用語ではない・・・」「今日の教育は、学問、知識を断片的に授けてはいますが、人間を作るという総合的な教育という効果は充分に挙がっていない・・・理想を目指して、正道を猪のごとくに突進するという情熱に燃えている若人・・・そういうタイプの人材を沢山送り出してもらいたい」――

 先生の教育観が良く伺われる言葉であり、様々困難を排して「東海道新幹線」を現実のものにした先生のバイタリティの源になる言葉だと思います。



<十河信二と中央鉄道学園・有法子について>

川北晃司さんは「第4代国鉄総裁十河信二における教育理念 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jseeja/2019/0/2019_424/_pdf 」で次のように紹介しています。

 中央鉄道学園
十河総裁は 1957 年に「中央鉄道教習所整備五ヵ年計画」を始動、1961 年には中央線西国分寺駅南口の広大な敷地に「中央鉄道学園」をスタートさせた。これを国鉄大学にして多くの国鉄職員に大卒資格を取らせようと何度も文部省にかけあった。学園の大学認可は下りなかったが、十河総裁時代に国鉄中央鉄道学園は、事実上の大学教育課程に相当する充実ぶりを示した。
 1958 年5月、海外の鉄道首脳を招待しての挨拶の中で十河はこう述べている。「自分は国鉄総裁として、国鉄を世界一の鉄道に育て上げたいと念願し、そのためには、まず人間を作ることが一番基本的の要件であると考え、教育機関に最も力を入れて充実することにした」。
 その教育機関の講堂に「有法子」(ユーファーズ)と書いた額を掲げておいたのもそのためだという。



有法子
 十河によれば,「有法子」という言葉は、古くから「没法子」(メーファーズ)と並んで、中国で盛んに用いられた。それが、まだ方法がある、もっと努力しようという意味の「有法子」という言葉が棄てられて、手段がつきた、仕方がないというアキラメの言葉である「没法子」という言葉だけが残った。「法子」は「方法、手段」という意味である。
 十河は記している.「没法子」は魂に皺のよった老人の言葉であって、若人の用いるべき日用語ではない。今日の教育は、学問、知識を授けているが、人間を作るという総合的な教育という効果は十分に挙っていない。理想を目指して、正道を猪のごとくに突進するという情熱に燃えている若人を作るという点ではどうか。国鉄中央教習所はそういうタイプの人材を沢山送り出してもらいたい、それが「有法子」と書いたゆえんである。国鉄職員たる者は自主的に、正邪の判断を誤ることなく、理想と情熱とを失わぬようにしたい、と。
 のちにJR東海社長になる葛西敬之は、国鉄社員入社式で十河から次のような訓示を受けたという。「ついては、座右の銘を贈りたい。<ユーファーズ>。<有法子>と書く。これを拳々服膺しなさい。どんな困難、いかなる苦境にあっても、あきらめてはいけない。かならず打開策がある。自分は今も毎日ことあるたびに心の中で<有法子>と言い聞かせている」。
(以下省略)

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